カテゴリーアーカイブ:行政機構

失敗学

2009年11月29日   岡本全勝

知人に教えてもらって、森谷正規著「戦略の失敗学― 経営判断に潜む「落とし穴」をどう避けるか」(2009年、東洋経済新報社)を読みました。「組織の失敗」は、私のライフワーク?の一つです。経営学の教科書や成功した人の伝記も参考になるのですが、失敗事例も勉強になります。先輩の成功談や武勇伝とともに、失敗談は、後輩には役に立ちます。
有名なものでは、戸部 良一ほか著「失敗の本質―日本軍の組織論的研究」(1984年、ダイヤモンド社。中公文庫に再録) があり、日本軍の失敗についてはいくつもの本が出ています。しかし、これは軍隊での話であり、また半世紀以上も前のことです。最近では、畑村洋太郎先生が、「失敗学のすすめ」(2000年、講談社。講談社文庫に再録)などで、失敗学を唱ておられます。ただし、主に工学の分野です。
「戦略の失敗学」は、戦略の失敗という観点から、いくつもの具体事例を取り上げています。良い製品なのに売れなかった、成功していた分野で負けてしまった、というような例です。薄型テレビ、半導体、携帯電話など。そして、企業の失敗や、政治での失敗も取り上げています。
かつて、NHKに「プロジェクトX(エックス)」という、好評番組がありました。困難な課題に打ち勝って、成功した物語を取り上げた番組です。本にもなっています。当時、成功だけでなく、失敗した事例を取り上げる「プロジェクト×(ペケ)」があればと、思ったものです。しかし、失敗事例は、関係者もしゃべりたくないでしょうから、番組や本にするのは難しいでしょうね。成功談は読んでいても楽しく、失敗談は元気が出ません。しかし、リーダーにとっては、失敗事例こそ勉強しておかなければならないことです。行政の世界でも、事故の原因調査報告書は出されますが、自らの組織がやった施策の失敗は、調査報告書が出されることは希です。
具体事例が、わかりやすいです。しかし、そこから教訓を引き出す必要があります。ところが、あまりに一般化すると抽象的で、これまた役に立たなくなります。

行政訴訟を使いやすく

2008年9月15日   岡本全勝
9月10日に最高裁判所が、土地区画整理事業の計画取り消しを求める訴訟を、認める判決を出しました。これまでは、計画段階では実際の権利侵害が生じていないという理由で、訴えが認められなかったのです。判例が変更されました。
その背景には、司法制度改革で、公権力の行使をチェックする行政訴訟を使いやすくしようとする流れがあります。これまでは、「行政のすることはひとまず間違いない」という前提だったのです。しかし、土地区画整理事業などは、実行されてからでは元に戻せない、戻そうとすると膨大な費用と期間がかかるので、事実上戻せなかったのです。

政府の民間委員

2008年9月13日   岡本全勝
13日の朝日新聞「政治不全、経済界からの直言」、葛西敬之JR東海会長の発言から。
・・企業の経営者を政府の委員会や懇談会のメンバーに入れて政策立案する手法が増えている。しかし、民間人の力を借りればいい知恵が出るなどということは、実際にはあり得ない。
・・民間人は政策の起承転結のすべてを自分でやる力はない。また、そうすべきでもない。
政府の側から「どうしたらいいでしょうか」と聞かれることもあったが、それではダメだ。責任をとるのは政府であり、与党であるという覚悟がいる。それがないから、私が関係した社会保障や教育、安全保障政策でも、同じような組織が立ち上がったは消えることを繰り返している。
民間人が入った有識者会議のようなものは、世の中のコンセンサスを得るためのツールと割り切るべきだろう・・

プロセス管理からパフォーマンス管理へ

2008年9月4日   岡本全勝
9月1日の日経新聞「領空侵犯」は、市川真一さんの「指導要領、根本から見直せ」でした。
・・今の制度の問題は、プロセス管理中心で、パフォーマンス管理ができていないことです。学習指導要領は学年ごとの年間総授業時間数や各教科で何を何時間教えるかなどを、細かく定めています。これがプロセス管理ですが、それで、どんな成果が得られたかを検証するパフォーマンス管理がほとんどない。これでは公教育の問題点や改善策が見えません。
・・最も重要なのは、中教審ではなく文科省が責任を持って、明確な教育目標を設定することです。確かに今も目標らしきことは書いてありますが不十分です。例えば英語教育は外国人とコミュニケーションを取れることが大切なのに、大半の大学生は英会話ができない。英語教育の目標設定や教え方、カリキュラム自体が間違っているのです。
・・総授業時間数や教科の時間配分などのプロセス管理は、地方の裁量に委ねます・・

博物館・奇妙な法律

2008年8月30日   岡本全勝
30日の朝日新聞が「博物館法改正、期待外れ」を書いています。詳細は記事を読んでいただくとして、奇妙と思うのは、次の点です。
東京国立博物館、国立西洋美術館、国立科学博物館が、博物館法に基づく正規の博物館でないこと。法律ができて以来、半世紀の間、そのままだそうです。日本には5,600もの博物館があり、そのうち約8割が博物館法の枠外にある(文科省調べ)のだそうです。
また、法には「公立施設の入館料は原則無料」とあり、独立行政法人である博物館は、これに反するのです。
現実が法律と離れた場合、どうするのか。考えさせられる事例です。