カテゴリー別アーカイブ: 行政機構

行政-行政機構

政府の民間委員

13日の朝日新聞「政治不全、経済界からの直言」、葛西敬之JR東海会長の発言から。
・・企業の経営者を政府の委員会や懇談会のメンバーに入れて政策立案する手法が増えている。しかし、民間人の力を借りればいい知恵が出るなどということは、実際にはあり得ない。
・・民間人は政策の起承転結のすべてを自分でやる力はない。また、そうすべきでもない。
政府の側から「どうしたらいいでしょうか」と聞かれることもあったが、それではダメだ。責任をとるのは政府であり、与党であるという覚悟がいる。それがないから、私が関係した社会保障や教育、安全保障政策でも、同じような組織が立ち上がったは消えることを繰り返している。
民間人が入った有識者会議のようなものは、世の中のコンセンサスを得るためのツールと割り切るべきだろう・・

プロセス管理からパフォーマンス管理へ

9月1日の日経新聞「領空侵犯」は、市川真一さんの「指導要領、根本から見直せ」でした。
・・今の制度の問題は、プロセス管理中心で、パフォーマンス管理ができていないことです。学習指導要領は学年ごとの年間総授業時間数や各教科で何を何時間教えるかなどを、細かく定めています。これがプロセス管理ですが、それで、どんな成果が得られたかを検証するパフォーマンス管理がほとんどない。これでは公教育の問題点や改善策が見えません。
・・最も重要なのは、中教審ではなく文科省が責任を持って、明確な教育目標を設定することです。確かに今も目標らしきことは書いてありますが不十分です。例えば英語教育は外国人とコミュニケーションを取れることが大切なのに、大半の大学生は英会話ができない。英語教育の目標設定や教え方、カリキュラム自体が間違っているのです。
・・総授業時間数や教科の時間配分などのプロセス管理は、地方の裁量に委ねます・・

博物館・奇妙な法律

30日の朝日新聞が「博物館法改正、期待外れ」を書いています。詳細は記事を読んでいただくとして、奇妙と思うのは、次の点です。
東京国立博物館、国立西洋美術館、国立科学博物館が、博物館法に基づく正規の博物館でないこと。法律ができて以来、半世紀の間、そのままだそうです。日本には5,600もの博物館があり、そのうち約8割が博物館法の枠外にある(文科省調べ)のだそうです。
また、法には「公立施設の入館料は原則無料」とあり、独立行政法人である博物館は、これに反するのです。
現実が法律と離れた場合、どうするのか。考えさせられる事例です。

問題の事後分析

22日の日経新聞経済教室は、植村信保さんの「生保経営、統治向上急げ」でした。1990年代の生命保険会社の破綻を調査し、その原因を分析したものです。97年から2001年までの間に、7社が破綻し、総資産では10%以上になるのだそうです。
・・平成の生保破綻は、バブル崩壊後の厳しい経済環境の中で発生した。このため、バブル崩壊による株価下落、80年代の高予定利率の貯蓄性商品の集めすぎ、不十分な行政当局の監督など、破綻は構造的な問題で、個社の経営努力ではどうしようもなかったという見方が根強いようだ。
だが、今回の分析で浮き彫りになったのは、バブル崩壊などの外的要因が生保経営に与えた影響も決して小さくはないが、会社が破綻に至るにはビジネスモデルや経営者、経営組織といった、その会社固有の内的要因が重要な意味をもっていたということだ・・
として、経営者の問題、経営陣の問題、リスク管理体制の問題などを指摘しています。
・・なお、経営チェック機能として当時の大蔵省の力は非常に大きく、各社の経営陣に「最後は大蔵省が何とかしてくれる」という幻想を抱かせた。実際は経営内容の悪化した生保に介入した例は少なく、結果的に破綻を回避させるほどの指導力を持たなかった・・
イギリスでは、2000年に世界最古の生保会社が実質破綻したことを受け、2004年に独立調査委員会が、同社の経営責任を追及する報告書を発表し、破綻要因を詳細に分析したそうです。日本ではなされていないので、植村さんが取り組まれたとのことです。
問題が生じた時に、それに対処することも重要ですが、後でそれを分析し、将来の教訓にすることも、行政の重要な任務だと思います。

需要予測の検証

8月8日に、総務省行政評価局が「公共事業の需要予測等に関する調査に基づく勧告」を出しました。公共事業を実施する際に、どの程度の需要があるか予測をして、実施するか、実施するとしてどの程度の規模のものをつくるかを決めます。需要予測が間違っていると、無駄な施設を作ることになってしまいます。この勧告では、甘い企業立地予測に基づき工業用水を作って売れなかった例、将来の人口予測を使わず過大な廃棄物処理場を作った例などが指摘されています。