カテゴリーアーカイブ:行政機構

行政の記録

2012年5月7日   岡本全勝

4月30日の読売新聞「地球を読む」は、御厨貴先生が「公文書管理。記録残さぬ風土、戦後から」を書いておられました。日本の公文書管理について、近代日本では後世にきちんと伝える仕組みがなかったというのは間違いで、戦前はきちんと残していたことを指摘しておられます。
・・議事録や記録を公文書として残す伝統は、いつからなくなったのか。どうやら戦後と占領がその契機らしい。近代日本のつまずきの石となったあの戦争における未曾有の敗戦。米軍占領までの2週間の間、霞ヶ関官庁街からはおびただしい黒煙が吹き上げたという。いや空襲の再来ではない。軍部も大蔵・内務各官庁も、米軍占領に備えて、大量の公文書を焼却したのだ。ここで敗戦国日本はためらうことなく、戦争へ突き進んだ歴史を焼き捨てた。何らの反省もなすことはなく・・
また「内閣官房における臨時組織の記録は、絶対に消えてなくなるという共通了解が、私たちの間にはあった・・」とも書いておられます。詳しくは、原文をお読みください。

被災者生活支援本部の際に、関係者やマスコミ、さらには国民の皆さんに、政府が何をしているかわかっていただくために、ホームページを立ち上げ、情報を載せました。また、それらを消去することなく、残してあります。後世の人には、このホームページが利用しやすいと思います。どこからでも、いつでも、誰でも見ることができるのですから。また、組織の名前や資料の表題を忘れても、検索機能を利用すれば、すぐにたどり着けます。便利なものです。紙で残すと、こうはいきません。そして、被災者支援本部は臨時組織なので、資料の保管と伝承が難しいのです。御厨先生の御指摘の通りです。
どのようなことをしたか(例えば、物資の調達と支援課題と取り組み)だけでなく、どのような状態で働いていたかも。忙しい中で、きちんとホームページに、しかも整理して載せてくれた担当職員に感謝します。
別に、毎日開いた「運営会合」の資料なども、紙で保存してあります(内閣府防災統括官に引き継いであります)。

少数精鋭・やりがいのある仕事

2012年3月13日   岡本全勝

発災以来1年の節目なので、連日、新聞やテレビが、特集を組んでいます。また、それにあわせて、復興・復旧事業が取り上げられています。ありがたいことです。いろいろご批判も頂いてはいますが。以下、記者さんとの会話です。

記者:霞ヶ関には、どれくらいの組織があるのですか。
全勝:大臣を戴いているのは、1府12省。それに加えて、私たち復興庁がある。霞ヶ関にいる国家公務員は、約4万人だと聞いたことがある。これが、いわゆる本省だね。
記者:復興庁には、何人いるのですか。
全勝:本省に160人、現在は民間から派遣してもらった人たちを入れて、約180人かな。出先に90人いる。
記者:え~。それだけで、毎日、あれだけ新聞に出ているのですか。
全:そうなんだよね。ありがたいことです。また、毎日がんばってくれている職員に、感謝しなければ。できれば、復旧が進んでいることも、伝えてほしいね。記事は、「進んでいない」ということばかりだから。
記:たしかに。それは、反省します。「進んでいる」では、記事にならないのですよ。でも、復興以外にも、大事な国政がありますよね。あとの3万9千人がやっている仕事が。
全:そのとおり。それを伝えることが、あなたたちの仕事ですよ。

自己改革できない組織は続かない

2012年2月25日   岡本全勝

先日(2月5日)紹介した、カー著『危機の二十年』(岩波文庫)に、次のような文章があります。
・・政治的変革の必要性を認めることは、どの時代のどんな考えをもつ思想家たちにとって、別に珍しいことではない。バークの有名な言葉に、次のようなものがある。「何らかの変更の手段を欠く国家は、自己の保存のための手段を持たない」・・(p393)
確認したら、確かに。エドマンド・バーク著『フランス革命についての省察(上)』(邦訳2000年、岩波文庫)に、書かれています。その記述の後には、次のような文章が続きます(p45)。
・・かかる手段がなければ、それは自分が最も入念に保存を念願する、憲法の肝心要の部分を喪失する危険をさえ引き起こすだろう・・
そして、バークは、イギリスの王政復古と名誉革命について言及し、イギリス国民は、国王をなくしても王政と議会を解体せず、イギリス国家(政治)を再生させたことを述べます。もちろん、王政を廃止し混乱に陥ったフランス革命との対比です。

保守主義の父と言われる、バークの発言だから、重みが違いますね。
大きくは政治の要諦、身近なところでは組織の維持に必要なことは、既存秩序の維持と変革の組み合わせです。変化は、既存社会・組織の秩序や構造から逸脱する行為です。目に余る逸脱は排除しなければ、既存秩序は揺らぎます。組織は維持できず、政治は信頼を失います。しかし、環境の変化や構成員の考えの変化を取り込まなければ、組織は維持できず、構成員の支持を失います。新しい変化のうち、何を排除し何を取り込むか。そして、それをどのような過程で処理するか。処理の仕組み(プロセス)を組み込まない組織は、弱いです。

ず~と、こんなことを考えているのですが。その気になって読まないと、何が書いてあっても、頭に残らないということですね。反省。馬の耳に念仏。

内閣官房の年始の挨拶

2012年1月5日   岡本全勝

今日、官邸大会議室で、内閣官房職員に対して、官房長官から年始の挨拶(訓示)がありました。このホームページで何度か紹介しているように、内閣官房には、たくさんの組織があります。この図のうち、3人の副長官補の下にある各種の事務局や室を数えると、今日現在では25あります。これらをご存じの方は、そう多くないでしょう。
内閣官房は独立して職員を採用していないので、各省からの出向者からなっています。何人いるのかは、私は知りません。今日集まった職員だけでも、大変な人数でした。
また、内閣に直接属する組織は、このよう(行政機構図、内閣の機関)になっています。内閣法制局、人事院、各種本部です。復興対策本部は内閣直属の組織であり、事務局はこの表に出てくるとともに、事務局職員は官房副長官補の下にある「東日本大震災復興対策室」に属しています。
官房長官は、別に内閣府を統括しておられるので、例年、内閣府職員へも年始のご挨拶があります。さらに内閣府には担当大臣がおられるので、その方々も挨拶されます。なお、行政機構図は、こちら

審議会の責任

2011年12月15日   岡本全勝

14日の読売新聞1面から2面にかけて「検証9か月原発危機」で、放射線審議会が取り上げられています。
・・だが、同審議会の法的権限は、省庁からの諮問に対し意見を述べることに限られている。2001年の省庁再編に伴い「審議会が省庁の隠れみのになっている」として、各審議会について必要最小限の機能のみを残すことになり、放射線審議会もそれまで持っていた提言機能を失った・・
省庁改革の際に、審議会の見直しを担当しました。この記事に書かれているとおりです。審議会を、審査決定を行う審議会と、提言を行う審議会に分けました。そして、後者については省庁の隠れ蓑にならないよう、大臣からの諮問に答える以外は、提言する権限を絞り込みました。拙稿「中央省庁改革における審議会の整理」月刊『自治研究』(良書普及会)2001年2月号、7月号

行政権の責任を明確化するという観点からは、この記事の論理は、少し変ではないでしょうか。行政の責任を明確にしたので、この場合は、省庁の不作為について、「放射線審議会が提言しないからだ」と言えないようにしたのです。審議会は、あくまでも省庁の一機関です。提言が必要なら、大臣が審議会に諮問するのが筋でしょう。またメンバーが専門的知見から提言をしたいのなら、審議会という場でなく別の方法で意見を発表することも可能です。
さらに、行政が、民間人の知見を集めることは、悪いことではなく、奨励されるべきことです。それを、メンバーが固定した審議会という形をとるのか、テーマごとに大臣が意見を聞く場を設けるかは、別の話です。