「行政機構」カテゴリーアーカイブ

行政-行政機構

政府の組織設計

職場の管理職として、どうしたら楽しく仕事ができて良い成果を出すことができるか、長年考えてきました。『明るい係長講座』を書いたりもしました。自治大学校長として、あるいは講演に呼んでいただいて、しゃべったりもしました。早く、一冊の本にまとめなければと、思っているのですが。
職場管理や職員養成とともに、職場の組織をどう設計するかも、私の関心の一つです。霞ヶ関では、各省の内部組織をどう設計するか、各省をどう編成するか、そして内閣官房や内閣府をどう設計するか。これは大きな課題です。2001年に省庁改革を行い、現在の形になっています。その時もいろいろ勉強しました(『省庁改革の現場から』)。
今回の被災者生活支援本部事務局を立ち上げ、運用する際にも、考えることが多かったです。
民間企業と比べて、あるいは地方自治体と比べても、国家行政機構の組織設計、特に内閣の周りは、改善の余地があると考えています。まず、経営企画室(部)に当たる組織がありません。民間企業では、考えられないでしょう。次に何を売るかを考えることが、最も重要なのですから。地方自治体なら、企画部か首長直轄の政策立案機関があります。
また、人事と組織の戦略を考える人事部や組織設計部がありません。各省にはあるのですが。そしてそのような組織設計を考えている人や組織がいないのです。これらについては、別途、書きましょう。

本屋には経営学や、組織論の本がたくさん並んでいます。それらは民間企業向けで、行政機構の設計について書いた本は、見あたりません。それは仕方ないとしても、なかなか参考になる本が見つかりませんね。

(職位から見た組織論・出世とともに何が必要となるか)
その論点とは外れますが、稲葉祐之ほか『キャリアで語る経営組織―個人の論理と組織の論理』(2010年、有斐閣)は、管理職論としてわかりやすく、有用でした。目次を見てもらうとわかるように、職員が入社して、異動し出世し、社長になる過程ごとに、組織論のテーマを解説してあります。中堅の公務員が読んでも、役に立つと思います。平職員と管理職、さらにはトップでは、見方が変わり、必要な知識も違うのです。平職員の時には上司を批判していたのに、いざ自分が課長になったら、「そうだったのか」と納得することがあります。
ある程度の歳になり、ポストに就くと、リーダーシップ論や管理者論を、本を読んだり経験で知っておられるでしょう。この本を読むと、それらが体系的に整理できます。

司法制度改革10年

7日の朝日新聞が、司法制度改革10年を特集していました。司法制度改革審議会が意見書を出して、10年になります。実際の改革は、その後、25本もの法律改正によって実施されました。
裁判員制度、法テラス、ADR、知財高裁、法科大学院、司法試験改革などです。司法を身近にすること、法曹の量を増やすこと、国民の司法参加が、目的でした。司法制度改革は戦後改革以来初のことで、これらは日本社会の大きな改革でした。
私は、行政改革の分類の中で、これらを、「事前調整から事後監視へ」や「公開と参加」などに位置づけました。このような改革は、ある日突然変わる、あるいは写真になるような改革ではないので、なかなか国民の実感には現れません。裁判員に選ばれると、実感するのでしょうが。

ところで先日、北村亘大阪大学教授から、この表について、地方分権改革は、「官の役割変更・経済活性化」に位置づけるより、「ガバナンス改革」に位置づける方がよいのではないか、との指摘を頂きました。
確かにそうですね。実はこの大分類は、後から考えたものです。何度も試行錯誤しました。その際に、国から地方への地方分権改革は、中央政府のスリム化であるとの位置づけからスタートしたので、それに引きずられた結果になっています。北村先生、御指摘ありがとうございました。

強い現場と弱い本部

5月16日の朝日新聞「大震災と経済」に、藤本隆宏東大教授のインタビューが載っていました。藤本先生は、日本のモノづくり現場の研究で有名です。先生は、日本の特徴を「強い現場、弱い本部(本社)」と表現しておられます。すなわち、品質が良いものを安く効率よく作るというように、目標がはっきりしている場合は、本社が目標を定め現場は目標に向かって頑張ります。しかし、目標が不明確になると、目標を定められず、弱い本部になってしまいました。
これは、行政機構にも当てはまります。欧米に追いつくという目標がはっきりしていた時は、官僚機構は効率的でした。その目標を達成し、次の目標がはっきりしなくなった時に、官僚制が効率的でなくなりました。決められたことをする職員と、次に何をするのかを考える立場の人との役割分担です。後者が、本部機能です。

記事では、「復興対策をどう評価しますか」との問いに、次のように答えておられます。
・・出張で海外に行ったが、識者の間でも、被災現場、原発事故現場に踏みとどまる人々の粘りと沈着さは高く評価される一方、官民とも対策本部の判断や発表の混乱は低い評価だった。日本の現場の強さと本部の弱さを、全世界が認識してしまったようだ・・
「復旧、復興に向けてどう改善すべきですか」という問いには、
・・高い組織力を維持している日本中の現場の力を一層活用することと、心もとなかった本部の失地回復が必要だ・・
「本部はどうすれば」という問いには、
・・本部は部門の壁の撤去が急務だ。具体的には、重要な復興テーマごとに、関連省庁・自治体から実務担当者を集めたプロジェクトチームを編成し、政府中枢に省庁横断のマトリックス組織を早急に作るべきだ。トヨタ自動車の製品開発組織、日産が復興期に使った部門横断チーム、英国内閣府のプロジェクト制など、成功例は多い・・省庁幹部間の連絡会だけではだめ・・
詳しくは、原文をお読みください。

内閣官房に置かれた組織

昨日、内閣官房に置かれた各種会議を紹介しました。今日は、内閣官房に置かれている組織(事務局)の数々を紹介しましょう。これだけの組織を知っている人は、国家公務員でも少ないでしょう。各種会議は主に合議制ですが、ここにある組織は、それら会議の事務局が多いです。
また、内閣府に置かれる組織もたくさんあります。こちらもいろんなものがあります。私たちの被災者生活支援チームも、内閣府に置かれた組織なのでこの図に出てくるべきものですが、臨時なのでか、載っていませんね。

終わった政府組織の記録

政府では、新しい課題について、いろいろな検討組織が作られます。これらは、任務を終えると廃止されます。
現在は、それらを調べることが、容易になっています。内閣官房のホームページに「各種本部・会議等の活動情報」のページがあり、そこに「現在活動中の会議」と「活動を停止・終了した会議」の一覧が載っています。そこをクリックすると、それぞれの会議の資料を見ることができるのです。便利なものですね。私の関係した組織でも、「再チャレンジ推進会議」と「安心社会実現会議」は載っています。「省庁改革本部」は載っていないようです。これは、内閣官房でなく、内閣に直属したからでしょうか。若い人は、これらの組織を知らないでしょうね。
私の記憶では、安倍晋三内閣の時に、このページ(終了した会議)が作られたと思います。当時、内閣府に出向していて、内閣官房の職員に「こんなページを作って欲しい」とお願いしていたのです。私以外にも、問題意識を持った幹部がいたのかもしれません。

各省に置かれた暫定的組織なら、どこかの部局に引き継がれるのでしょう。しかし、内閣や内閣官房につくられる組織は、そもそもが各省に属さない、あるいは各省にまたがる課題を扱います。どこにも引き継がれない可能性が、大きいのです。さらに、ファイルに綴じられた文書も重要ですが、一般の国民や若い公務員には、インターネットの方が便利でしょう。理想的には、各組織ごとにきちんとした文書が記録され、インターネットで公表資料が残り、できれば1冊解説書があれば、便利ですね。