「行政機構」カテゴリーアーカイブ

行政-行政機構

新型コロナ、8か月間で通知1500件

新型コロナウイルス感染症が拡大した当初に、各府省から自治体あてに膨大な数の通知や連絡が出されました。私も2020年の春に、ある市長から、両手を30センチくらい広げて「こんなにたくさん来ても、読まないわ」と苦情を言われたことがありました。

専門誌『地方行政』の1月23日号に、高坂晶子・日本総合研究所主任研究員が、神戸市が8か月間に受け取った国からのコロナ関連の通知が、約1500件だったと書いています。

政府統計の問題と対応策

1月13日の日経新聞オピニオン欄に、森川正之・一橋大学教授の「政府統計にも不可欠な「人への投資」」が載っていました。詳しくは原文を読んでいただくとして、次のような文章があります。

・・・近年、政府統計を巡る不適切な事案が相次いだ。この結果、一部の省庁ではリスク回避のため統計調査自体をやめる動きもあるようだ。間違いが起きると困るからやめるというのは本末転倒だが、その背後には政府部内における統計人員の削減がある・・・

国家公務員総数の増加

年末の12月23日に内閣人事局から「令和5年度機構・定員等審査結果」が、公表されました。それによると、組織の新設とともに、新たな業務に対応するため、8,155人が増員されています。他方で業務改革により7,104人が削減され、合計で1,051人の増加です。
過去を遡ると、
令和4年度は1,084人(当初の査定では401人)の増加
令和3年度は399人の増加
令和2年度は287人の削減でした。

地方公務員も増えています。各年4月1日で比較すると、令和4年では前年に比べ3,003人の増加、令和3年では38,641人の増、令和2年では21,367人の増、平成30年では3,793人の増です

行政改革の旗印の下、職員数の削減が続いてきました。しかし、それにも限度があり、他方で新しい業務が増えています。必要なところに必要な人員を配置する。当然のことです。

『行政改革の国際比較』

C・ポリット、G・ブカールト著『行政改革の国際比較 NPMを超えて』(2022年、ミネルヴァ書房)を紹介します。監訳者である縣公一郎、稲継裕昭先生からいただきました。

先進12か国の、1980年代以降の公共マネジメント改革を比較分析したものです。定評ある教科書になっているようです。残念ながら、12か国に、日本は入っていません。
民間企業の経営手法を公共部門に導入し、効率化や国民住民への応答性を高める改革です。ニュー・パブリック・マネジメントと呼ばれました。政治経済において、先進諸国の多くが停滞に見舞われ、サッチャー首相、レーガン大統領、中曽根首相による新自由主義的改革に取り組みました。行政改革は、その一環でした。

日本でも、中曽根行革に続き、1990年代と2000年代にさまざまな行政改革に取り組みました。ちょうど、連載「公共を創る」で書いているところです。連載執筆で行政改革を振り返ろうとしているときに合わせて、このような本が出版されます。ありがたいことです。ふだんは出てきていても、見過ごしているとも言えます。

日本もこのような観点からの行政改革はかなり実行され、成功したと思います。問題は、日本社会の変化はもっと進んでいて、行政改革では対応できない課題となっているのです。

公文書の管理、諸外国との違い

11月26日の日経新聞に「公文書軽視 浮き彫りに 米は職員のメールも管理」が載っていました。森友学園に関する財務省の決裁文書改ざんを巡り、大阪地裁が25日、元国税庁長官への賠償請求を退ける判決を下したことの解説記事です(ネット記事は紙面とは少し異なっているようです)。

・・・改ざん問題を受けて国は2018年、各府省庁に専門部署を設置するといった公文書の監視強化を柱とする再発防止策を取りまとめた。同時に公務員の意識改革を進めようと、新規採用職員に文書管理の方法に関する研修も始めた。
しかし、京都大学の奈良岡聰智教授(日本政治外交史)は「公的な責任を負う組織が文書を保存・公開し、後世に検証できるようにするという意識が日本の社会に根付いていない」と指摘。その証左として欧米との所蔵量の違いや管理を担当する職員数の格差を挙げる。

公文書の所蔵量は書架の長さで比較する。国立公文書館の22年3月時点のまとめでは、日本は69キロメートル。米国の約1500キロ、ドイツやフランスの400キロ台より圧倒的に少なく「所蔵量の多寡は保存対象とする文書の範囲の違いにも起因している」(奈良岡氏)。
日本では公務員個人が職務上発信したメールに重要な内容が書かれていても「私的メモ」と解釈して公文書に含まれていないケースがある。これに対し、米国の連邦記録法は政府職員に原則、職務に関して公用のメールアドレスの利用を義務付け、全ての記録を国が管理すると規定する。

大統領の場合は退任時、在任中の職務に関する記録はメモやメールを含めた全てを国立公文書記録管理局に提出するよう大統領記録法で定められている。英国に目を向ければ、二大政党(保守党、労働党)の党運営に関わる文書についても行政文書に準じる形で自主的に保存・公開している。

公文書を管理する機関の職員数も、米国が約2750人、欧州諸国は500~600人台だが、日本は約200人にとどまる・・・