古くなりましたが、12月24日の朝日新聞オピニオン欄で、入交昭一郎さんが、次のようなことを発言しておられました。
・・「日本の製造業」「日本のものづくり」と言っていますが、その定義を考える必要があると思うのです・・生産している場所が重要なのか、それをコントロールしている場所が重要なのか・・(ドイツの自動車メーカーが国内ではなく海外工場で伸びていること、それでもドイツの製造業であることを指摘して)
・・地域の経済と企業の発展は、別のものになっている。海外で車を作るホンダやトヨタも「日本の製造業」ですよ。私は、21世紀の日本人は工場も働き手も海外に出て出稼ぎすべきだと言っているんです。海外で生産した製品を海外の市場で売って、その利益を日本に持ってくる。国内の生産が難しくなっても、日本の製造業が世界各地に根を下ろして頑張れば、世界中から日本におカネが集まってくる。企業はその装置になればよい・・・この項、続く。
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日本、貿易赤字に転落
1月9日の日経新聞が、「貿易赤字転落、日本岐路に。31年ぶり、円高・燃料費増加で」を伝えていました。2011年に、日本が貿易赤字国になったという予想です。歴史的な円高で、輸出が伸びなかった一方、原発の停止で火力発電に使うLNGの輸入が膨らんだためと、解説しています。
問題は、この貿易赤字が、構造的に定着するとの見方があることです。これが一時的なら、そんなに問題ではありません。また、貿易赤字になっても、所得収支(海外からの配当や利子)などが黒字で、合計の経常収支が黒字なら、問題は少ないです。
「日本は資源が少ないので、石油や原材料を輸入してそれを加工し、工業製品を輸出して、栄えている」というのが、かつて教えられたことです。もっとも、経済に占める輸出入の割合は、諸外国に比べて日本はそれほど大きくないのですが。それでも、貿易で稼ぐというのが、一つの日本モデルであり、私たちが信じた神話でした。それが崩れるのは、いささかショックです。
成熟国になると、貿易ではなく、海外投資による所得収支で黒字になるのが、先進国の道筋です。しかし日本の場合は、この「成熟」が早くやってきているので、海外投資の蓄積が大きくありません。
安価で良質な工業製品では、後発国に追いつかれました。今後、何を「売って」日本は稼ぐのか。何で世界に貢献し、諸外国から尊敬されるのか。その岐路に立っています。
経済の金融化
ロナルド・ドーア著『金融が乗っ取る世界経済―21世紀の憂鬱』(2011年、中公新書)がわかりやすかったです。金融業が実体経済を上回って拡大し、経済活動の中で大きな比重を占めるようになったこと、金融が実体経済と遊離して動き、時には金融市場と世界経済を危機に陥らせることを、分析しています。
この20年間の世界経済の変化を大まかに言えば、国際化と金融化と言えるでしょう。この本は、後者の金融化について書いたものです。
そして経済と政治との関係は、その変化に対応するための自由主義的改革と、金融・経済危機対策であったと言えるでしょう。しかし、日本はまだ十分な経済産業構造の改革を見いだせず、世界各国政府は十分な金融危機対策を打てていません。
何度もこのホームページで書いているように、国際化によるアジア各国の追い上げで、日本のひとり勝ちは許されなくなりました。加工組立型工場とコメの保護によって成り立っていた地方経済は、成り立たなくなりました。これが、失われた20年の原因の一つです。
金融危機に対しては、2008年のリーマン・ショックには、世界各国が協調してひとまずの対応ができましたが、今年のユーロ危機は、まだ続いています。そして、制度的押さえ込みは、まだできていないでしょう。
ところで、ドーア先生には、かつてコラムで私のホームページの記事を引用してもらったことがあります(2007年10月22日の記事)。お礼のメールを打ったら、イタリアから返事を頂きました(10月23日の記事)。
アジアの社員が日本人従業員を指導する
少し古くなりますが。タイの洪水で工業団地が浸水し、日系企業も操業停止に追い込まれました。企業が生産を続けるために、タイ人従業員を日本に呼び寄せて、部品の生産を始めました。
例えば12月4日の日経新聞は、電子部品会社の例を取り上げています。そこでは、タイから来た熟練工が、日本人従業員を指導していることを書いています。1989年にタイに進出して以来、技術を蓄積していて、「日本人では量産ラインを管理できない」と、日本人社長が述べています。
労働力不足を補うために、外国人労働者の入国を増やすべきか否かの議論がありました。その議論より、現実はもっと先を行っているようです。アジア各国が、経済や技術の面で日本に追いつくことは、「日本は優秀だ」と思っていた人にとっては、少々残念なことでしょう。しかし、日本が世界と共に繁栄するためには、アジア各国と日本の経済格差が縮まることが必要です。
日本企業はアジアで稼ぐ
12月8日の日本経済新聞に、興味深いデータが載っていました。主要128企業が、どの地域で収益を上げているかのグラフです。2011年上期(4~9月)では、アジア・オセアニアで48%です。半分をアジアで稼いでいます。欧州が19%、アメリカが18%。日本(国内)は、4%でしかありません。国内が4%というのは、驚きです。もちろんこの数値は主要128社ですから、企業全体では国内比率は大きくなるでしょう。