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政府は投資ファンドを作るより、税制や規制緩和を通じ起業しやすい環境作りに徹するべき

3月28日の日経新聞オピニオン欄、梶原誠・コメンテーターの「株高に潜む「父権主義」の罠」が載っていました。

・・・日経平均株価が1989年末の高値を超え、日本経済を苦しめた「34年の呪縛」は解けた。だが100年前からの呪縛はまだ続く。「父権主義」の罠だ。
父権主義は「パターナリズム」ともいい、権力者が保護を目的に弱者に干渉する。市場目線で言い換えると、政や官が企業の活動に介入する。企業の関心は顧客より「お上頼み」になり、独自の思考もなくなる。イノベーションを追う株式市場はこの風潮を嫌う・・・
・・・34年間を振り返ろう。まず比較対象として伸びた銘柄を見る。時価総額を飛躍的に増やしたのは独創性を発揮した企業だ・・・沈んだ銘柄はどうか。目立つのは、父権主義が色濃く残る規制業種だ。東証業種別株価指数の下落率を見ると、電気・ガスと証券・商品先物がそれぞれ70%前後、銀行は80%に及ぶ。横並び経営が目立つこれらの業種が株式市場で幅を利かせると、投資家の目利き力は生かしがいがなく衰える。
残念ながら「下落組」の存在感は大きい。34年前と時価総額を比較できる1189社中、増やした会社は3分の1の397社に過ぎず、減らした会社は2倍の792社だ。両銘柄群を株価指数化してみよう。父権主義に染まる多くの会社の株安を、独創的な一握りの企業が株価を4倍近くに高めて埋め合わせた実態がちらつく・・・

・・・日本も父権主義を葬るチャンスを迎えた。日銀は今月、人為的に金利を抑え、株価を底上げしてきた異次元緩和を終えた。
一方で、逆行する動きも静かに進む。レコフデータによると、コロナ禍が始まった20年から23年までの官製ファンドの投資額は2兆円弱と、19年までの4年間の3倍を超えた。既得権を守るためだろう。いったん始まった「大きな政府化」に歯止めが利きにくいことは、世界の歴史が示している。

参考になる会話がある。昨年死去したドイツの大物政治家、ウォルフガング・ショイブレ氏は2009年からの財務相時代、米投資会社KKRの共同創設者、ヘンリー・クラビス氏に意見を聞いた。「政府がベンチャー企業に投資するファンドを作りたい」
クラビス氏は反対した。「政府は税制や規制緩和を通じ、起業しやすい環境作りに徹するべきだ。良い会社があれば民間マネーが見つける。約束してもいい」
日本への問いが浮き上がる。政府は縁の下の力持ちに徹するか。成長する企業は生まれるか。投資家はそんな企業を探し出す目利き力を持つか――。世界は今後、これらの視点で日本経済を見つめるだろう。急ピッチで進んだ株高を維持する条件でもある・・・

人的投資抑制がデフレを助長

2月29日の日経新聞「物価を考える、好循環の胎動」は、柳良平・元エーザイCFO「人的投資抑制、デフレを助長」でした。

――日本企業は人件費をどう捉えてきたか。
「これまで企業価値の物差しは有形資産で、道具として財務会計を使ってきた。人件費は費用で利益にマイナスに働くものという考え方が当たり前だった」
「かつて企業価値の大半を占めていた有形資産なら財務会計で説明できたが、近年は人材価値や知的財産など無形資産が過半以上を占めるようになった。従来の方法では企業価値の半分も測定できなくなった」

――人的資本の効果を測る「柳モデル」を作った。
「製薬会社エーザイの最高財務責任者(CFO)時代に『人件費を使いすぎ』と投資家から批判があった。人件費は企業の将来価値を高めるものだと、証明したかった。人件費を投資した5年後に企業価値を計る指標のPBR(株価純資産倍率)が約13%増える正の相関があった」
「人件費は費用ではなく将来の企業価値を生む投資であると、ESG(環境・社会・企業統治)を重視する長期投資家を中心に考え方が変わってきた」

――人的投資の認識の高まりはどう影響するか。
「企業はバブル崩壊後に賃金を費用とみて抑制することでしのいできた。その結果として、デフレや企業価値の長期低迷につながった。企業経営者は今後は確信をもって人材投資を積極的にできるようになる」

――今後の課題は何か。
「人的資本の開示が前期の有価証券報告書から義務付けられた。他社と同じ『横並び主義』、当局の要求に最低限応える『形式主義』に陥るリスクはある。なぜ企業価値に資するのか、説明責任が今まで以上に問われていく」

1991年から30年間の経済成長外国比較

経済成長外国比較2024」の続きです。1991年のバブル経済崩壊後、日本の「失われた30年」を表す図です。今回新しく作ってもらいました。

1991年を100として、アメリカ、ドイツ、日本の一人あたり名目GDPの伸びを示したものです。30年間でアメリカは3倍に、ドイツは2倍になりました。日本は、横ばいです。イギリス、フランス、イタリアなどもアメリカやドイツと同じような成長をしています。日本だけが、停滞したのです。これは自国通貨表示なので、円安は関係ありません。
5年や10年ではありません。30年間の間、経済界や政治家、官僚たちは何をしていたのですかね。反省。政府はこの間に、何度も景気対策を打ちました。しかし必要だったのは景気刺激ではなく、産業構造転換と賃上げだったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年の記事では日米の経済発展、日本がアメリカに追いつき、その後引き離された数字を「経済力の日米比推移」で示しました。今回はこの表に置き換えました。
今回の3つの図表とも、小黒桂君の助けを借りました。いつもありがとうございます。

経済成長外国比較2024

経済成長の軌跡2024」から続く。「経済成長外国比較2」(2021年)を更新しました。

(一人当たりGDPの軌跡と諸外国比較)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本、アメリカ、韓国、中国の3か国の一人当たりGDPの軌跡です。1955年にアメリカの10分の1だったのが、1980年代後半に追いつき、そして追い抜きました。アメリカもその間に10倍になったのですが、日本は100倍になりました。
しかしバブル崩壊(1991年)後、日本の経済成長は止まり、横ばいです。先進各国は成長を続け、日本と大きな差が開きました。この図は、縦軸が対数目盛になっているので、アメリカとの差がわかりにくいのですが、右につけてある数字を見てください。また韓国はほぼ日本と並び、中国が追いかけてきています。「経済成長外国比較2」(2021年)と比べてください。

この表は、かつて経済企画庁が作っていたもので、私流に改変して使っています。当初は、日本の経済成長がいかに驚異的であったかを説明するために使っていたのですが、最近はその後日本は停滞している、アジアから追いかけられているという説明になりました。急速な経済成長は日本独特のものではなく、他国に先駆けて日本が取り組んだ、他国はそれに遅れたということがわかります。「1991年から30年間の経済成長外国比較」に続く。
参考「日本のGDPが世界4位に

経済成長の軌跡2024

経済成長の軌跡2」(2021年)を更新しました。

 

 

 

 

(日本の経済成長と税収)
戦後日本の社会・政治・行政を規定した要素の一つが、経済成長であり、その上がりである税収です。
次の4期に分けてあります。「高度経済成長期」「安定成長期」「バブル崩壊後(失われた20年)」、そして「復活を遂げつつある現在」です。
1955(昭和30)年は、戦後復興が終わり、高度経済成長が始まった年。1973(昭和48)年は、第1次石油危機がおき、高度成長が終わった年。1991(平成3)年は、バブルがはじけた年です。第2期は「安定成長期」と名付けましたが、この間には石油危機による成長低下とバブル期が含まれています。第1期は18年、第2期も18年、第3期は21年です。
第4期の始点を2012(平成24)年にしたのは、アベノミクスを復活の起点と考えたからです。しかし、その後の経済成長ははかばかしくなく、第3期が続いている(失われた30年)とも見ることができます。すると、4期ではなく、成長の前期(1955~1991年、36年間)と、停滞の後期(1991~現在、ひとまず33年)と見ることもできます。

第4期に税収が伸びているのは、消費税増税と思われます。その他の解説は、「経済成長の軌跡2」(2021年)をお読みください。「経済成長外国比較2024」へ続く。