カテゴリーアーカイブ:経済

子が親を超えられない世界

2025年6月3日   岡本全勝

5月8日の日経新聞オピニオン欄に、小竹洋之・コメンテーターの「子が親を超えられない世界」が載っていました。

・・・米国では富裕層と貧困層の格差が広がっているだけでなく、親から子にも継承されやすくなっているのだ。
その窮状を映すグラフがある。「グレート・ギャツビー・カーブ」。所得格差の大きさ(ジニ係数)を横軸、親の所得が子の所得に与える影響の大きさ(世代間所得弾性値)を縦軸にとり、主要国の位置を定めると、右肩上がりの傾向を示す分布図ができる。
右上に行くほど不平等が大きく、それが次世代にも連鎖しがちなことを示す。米ニューヨーク市立大学のマイルズ・コラック教授の研究を踏まえ、アラン・クルーガー元米大統領経済諮問委員長が命名した。格差の足かせをギャツビーの物語に重ねた格好だ・・・

・・・米国だけの悩みではない。英キングス・カレッジ・ロンドンのヨナタン・バーマン助教授が2022年の論文で、子が親の所得を超える確率を推計したところ、主要10カ国全てで低下していた。米国やオーストラリアは所得格差の拡大、その他の国々の多くは経済成長の鈍化が主因だとみる。
とりわけ低下幅が大きいのは日本、米国、フランスである。3カ国の1940年代生まれの世代は最高で9割を超えていたのに、80年代生まれの世代は6割を切る。もはや子の2人に1人しか、親の所得を超えられない計算だ。
格差の拡大や固定化は、容易に止まらない。国際非政府組織(NGO)のオックスファムによると、10億ドル(約1450億円)以上の資産を保有する世界のビリオネアは、24年時点で2800人弱。資産総額は15兆ドルにのぼる。
そんな富豪たちの資産も、いまや6割が相続、コネ、独占、汚職から生まれる時代だという。スイスの金融大手UBSグループは、70歳以上のビリオネアが家族などに譲渡する資産を、今後15年間で6兆3千億ドルと見積もる・・・

人口は減っているが就業者は増えている2

2025年6月1日   岡本全勝

人口は減っているが就業者は増えている」の続きです。記事では、労働者不足も取り上げられています。そのような報道もたくさんあります。自治体でも、職員不足に悩んでいます。
機械化やITの活用で労働者は減ると思うのですが、なぜ、労働者不足になるのでしょうか。この点についても、識者に聞いてみました。原因は、「職種のミスマッチ」のようです。

人手不足は、典型的には「介護や看護や保育」「建設や運輸や警備」など、「エッセンシャルワーカー」と言われる方々が圧倒的に足りていません。他にも、IT人材など求められる「人財」が足りていないということもあるのですが。
建設「就業」者は、令和4年平均479万人ですが、ピーク時の平成9年から30%減少しています。高齢化にもかかわらず、介護職員は、令和5年度に、調査開始以来初めて減少に転じました。
建設業も無人化施工を進めたり、介護分野も効率化に努めたりしているのですが、この分野は、労働集約型の産業であり、人手不足の解消にはなっていないのです。

製造や建設などの現場が人手不足に苦しむ一方で、事務職は求職者が求人を大きく上回っています。
ここ30年で高卒就職者は7割減ったのに対し、大卒就職者が4割近く増えたことも原因のようです。大卒は先輩たちのように事務職を目指し、高卒が就いたような作業現場を選ばないのです。しかし、求人側はそんなに事務職場が増えるわけではありません。

人口は減っているが就業者は増えている

2025年5月31日   岡本全勝

3月31日の朝日新聞に「働き手、増える高齢者・女性」が載っていました。
・・・15歳以上の働く意思のある人の数を示す「労働力人口」が増え続けています。2024年の平均は6957万人で、7千万人に迫る勢いです。その内容を分析すると、高齢者と女性の働き手が増えていることが浮かび上がってきます・・・

4月14日の日経新聞夕刊に、「人材危機、なぜ起きた」という記事が載っていました。労働者不足についての解説です。
そこには、生産年齢人口は減っているが、就業者数は増えている(労働力調査)とあります。へえ。他方で、働き方改革が進んだとあります(古くてすみません。途中まで調べて放置してあったのです)。

日本の生産年齢人口は減っているのに、就業者数は増えている。これは、高齢者と女性の労働参加によります。ところが、労働力は不足している。なぜか。識者に聞いてみました。
就業者数が増えているのに、労働者の総労働時間数は減っているのです。「就業者数×1人当たり労働時間」という概念は「労働投入量」です。
内閣府の「日本経済レポート(2023年度)」第1節 コロナ禍を経た労働供給の動向2-1-1図(2)によると、1990年を頂点に労働投入量は減ってきています。長時間労働が減った、非正規労働者(短時間労働)が増えたということでしょう。

NTT、世界一の時価総額が6割に

2025年5月31日   岡本全勝

5月9日の日経新聞に「NTT「失われた30年」、元世界一の時価総額4割減」が載っていました。
・・・NTTは、NTTデータグループ(データG)を完全子会社化して海外市場を開拓する。背景にあるのは米IT(情報技術)大手や中国企業にイノベーションで大幅に出遅れた危機感だ。かつて世界トップだった時価総額は4割減り、30年で輝きを失った日本の歩みと重なる。再編で競争力を上げ、挽回を目指す・・・

電電公社が民営化されNTTになったのは1985年です。1989年5月末時点で時価総額は22.4兆円と世界第一位でした。1999年にNTTドコモが始めた携帯電話のインターネット接続サービス「iモード」は革新的でした。しかし海外展開には失敗。通信規格が日本独自だったのでいわゆる「ガラパゴス化」し、アップル社がiPoneを出し、スマートフォンの世界になりました。過去10年でアメリカのテック大手が台頭し、韓国、中国も技術力を高めました。

・・・この間、ドコモを含めたNTTグループは革新技術やサービスを打ち出せなかった。日本市場が一定の規模を持っていたほか、年功序列が根付く日本企業の仕組みがイノベーションを妨げたとの見方がある。時価総額は2025年4月末時点で13兆円と、199位にまで沈んだ・・・

日本を待つ「転落の50年」2

2025年5月10日   岡本全勝

日本を待つ「転落の50年」の続きです。このままでは日本の経済力はさらに低下する予測のあとに、小竹洋之コメンテーターは次のように主張します。

・・・不確実性の高い長期予測に固執するつもりはない。そこに映る課題を直視し、早く手を打てと言いたいだけである。思い知らされるのは、GDP関連の順位の低下が50年以降に加速する姿だ。世界有数の経済大国からの転落が鮮明になり、日本全体に敗北感や諦めムードが広がれば、抜本的な改革への意欲はうせてしまう。

トランプ関税への対応も、転落の50年を回避する成長戦略に沿うものであってほしい。環太平洋経済連携協定(TPP)を含む自由貿易圏の拡大・深化、グローバルサウス(南半球を中心とする新興・途上国)の発展を見据えた供給網の再編や販路の開拓、AIや脱炭素などへの投資を通じた既存産業の強化と新規産業の育成……。官民がともに知恵を絞り、これらの具体化を急ぐべきだ。

「経済の再建にさほど大きな変化を必要としていないにもかかわらず、指導者らがそれすら起こせないところに悲劇がある」。日本経済の専門家で、近著の邦訳「『失われた30年』に誰がした」を3月に出版した米ジャーナリストのリチャード・カッツ氏は、何よりも政治の不作為を嘆いていた。
その汚名を返上する覚悟はあるのか。トランプ関税を口実に、与野党で人気取りの現金給付や減税を求める声ばかりが先走るのは、無責任のそしりを免れない。
欧州などでは超大国・米国の変質を前提に、経済や安全保障の国家戦略を練り直す動きも見られる。日本の最大の国難は、かくも貧しき政治ではないのか・・・