カテゴリーアーカイブ:経済

坂根社長。日本企業、ボトムアップと現場の強さ

2014年11月23日   岡本全勝

日経新聞「私の履歴書」11月は、坂根正弘・元コマツ社長です。11月21日の「現地化の限界」から。
・・2度目の米国駐在は、日本企業と米国企業の強みと弱みを見極める貴重な機会だった。日本企業には米国流の経営を見習って改めるべき点も多いが、逆に「日本のほうが文句なく優れている」と感じた部分もある。それは生産現場の能力の高さだ。
当時交流のあった社外の米国人の一人に、デトロイト・ディーゼル社のペンスケ会長がいた。弁舌さわやかで指導力に富んだ米国産業界で著名な人物だったが、その彼が「どんな優れた経営者もQCDの問題は解決できない」と漏らしたことがある。
QCDとは、クオリティー(品質)、コスト(費用)、デリバリー(納期)の頭文字で、製造現場の実力を測る最も重要な指標だ。ところがペンスケ会長によると、経営トップがいくら旗を振っても、それだけではQCDは改善しない。現場がやる気を出して、地道な努力を日々重ねることが絶対条件。その意味で「ボトムアップの弱い米国企業には限界がある」というのが、彼の嘆きだった・・
アメリカの会社で、坂根社長は、日本人をできる限り減らして、米国人に置き換える方針をとります。しかし、ただ一つ「これだけは現地化が難しい」と感じた職種があります。生産技術者です。アメリカでは、新機種の設計を手がける開発技術者と、工場の設備企画や改善を進める生産技術者の間にステータスの違いがあって、前者が後者より上なのです。だから優れた技術者が、工場に行きたがらないのだそうです。それに対して、日本の多くの大手メーカーでは、開発と生産が対等の立場で協力します。坂根社長の自信は、コマツを回復に導きます。詳しくは原文をお読みください。

被災地町長の増税への考え方

2014年11月8日   岡本全勝

須田善明・宮城県女川町長のブログから。女川町は津波によって、町の中心部が壊滅しました。現在、土地のかさ上げや山を切り取って、まちづくりをしています。まさに、町全体の作り替えです。11月4日、総理官邸で開かれた消費税増税のための意見聴取に出席された際の発言です。
・・今回私が呼ばれたのは被災地の視点から、ということだと思うが、まず断っておくのは、当然ながら、私の意見は被災地の民意や被災自治体の首長の考えを代弁するものではなく、あくまで故郷復興に行政トップとして携わる一政治家としてのものである。
また、国家的な視点で行われるべきであり、その際に「被災地がこうだから」というようなことが議論の中核に挟まれることは望ましいとは考えない。ご配慮いただくのはありがたいが、誤解を恐れずに言えば、大震災での被災者は全国民の1%くらいの割合である。
但し、福島の方々については最後までしっかりしたケアが当然。こうしたことを除いての残りの99%、つまり国家全体というマクロな視点で行われるべきものであると考える。「被災者がこうだから」というようなことは別の場での議論であろう・・
・・関係して被災地の復興や経済状況等に若干触れる。
「税が上がれば被災者は大変ではないか?」と言えば大変なのは日本全国どこでも一緒で同じ。増税して喜ぶ方がいたら会ってみたいものである。
そういう中で、本町では震災から二年が経った時に介護保険料の基準額を2割以上引き上げた。町の介護保険会計が破たんしないよう、そうせざるを得なかった。町議会でも相当な議論をいただいたが、最終的に日本共産党所属以外の議員の方には賛成をいただいた。同様に、東松島市では、南三陸町もそうだったと思うが、国保の保険料を15%程度引き上げた。
被災後の状況ではあっても、パブリック(サービス)の母体となる制度をきちっと維持していかなくては、その提供すらできなくなる、という判断だった。被災地ですら、そのような判断を今の状況の中でやっている、ということを申し上げておきたい・・

もはや高負担でないスウェーデン

2014年11月4日   岡本全勝

先日、スウェーデンが移民の受け入れ国となっていることを紹介した際に、もはや高福祉・高負担の国でないことも紹介しました(EU、難民の受け入れ。10月14日)。11月3日の日経新聞オピニオン欄に、大林尚・編集委員が「今は昔、高負担スウェーデン。「成長あっての財政」根づく」で、詳しく解説しておられました。
スウェーデンの国民負担率(税負担+保険料)は58.2%、フランスの61.9%より低いのです。ドイツが51.2%、日本は41.6%です。日本が低いのにはからくりがあって、このほかに財政赤字=子や孫への負担の先送りが10.3%分あります。それをたすと潜在的国民負担率は51.9%になり、ドイツの52.2%と並びます。フランスは同様に計算すると、68.9%にもなります。ところがスウェーデンは、国民負担率も潜在的国民負担率も同じ58.2%です。これは将来世代に赤字を残していない、現世代の医療や教育サービスは今の世代が負担しているのです。まあ、これが当たり前の姿であって、子や孫にツケを回している日本が異常なのです。
スウェーデンは、付加価値税(消費税)が25%、所得税+住民税の最高税率は56.6%、国民の96%が税負担をしています。日本では、所得税を払うのは国民の半分以下です。税は政府に取られるものではなく、投資のようなものとの考えなのだそうです。世論調査によると、信頼されている役所の順位が、消費者庁、地理院に次いで、国税庁が3番目です。税と行政サービスのあり方について議論を重ね、そして国税庁も納税者へのサービスを向上させて、このような結果になったのでしょうね。さらに、国税庁のシンボルマークが載っていますが、扇風機のような図柄です。吸引機だそうです。すごく直接的な絵ですね(苦笑)。
日本ではかつて、「税金は少ない方が良い」とか「大企業が負担すれば良い」といった、素朴な議論がまかり通っていました。前者に対しては「じゃあ、年金は誰が負担するの?」、後者には「大企業が税金の低い国に逃げていきますよ」と聞きたいです。今回、税と社会保障が一体的に議論され、行政サービスを続けるためには、税負担を上げるしかないことがようやく理解されてきました。

資本主義は不平等をもたらすか、2

2014年9月20日   岡本全勝

原著を読んでいないので、的が外れているかもしれませんが。
資本主義や市場経済は、競争の世界ですから、強い者・目先の利く者・才能のある者が勝ちます。そして、強い者はさらに豊かに、貧しい者はさらに貧しくなります。しかし、社会が豊かに便利になるためには、適した経済システムですから、やめるわけには生きません。
すると、負けた人、あるいはそもそも競争に参加できない人を支え・支援することが、社会や政治の役割になります。子どもや高齢者、障害者、何らかのハンディを負った人です。
また、競争といっても、対等の条件で競争しないと、スタート時点から差が付いていては、恵まれた者はさらに勝ちます。ところで、「大貧民ゲーム」あるいは「大富豪ゲーム」というトランプ遊びがあります。言い得て妙な、命名です。ゲーム開始早々に、貧乏人は自分の持っている良い札を、富豪に進上するのです。若いときに、よく遊びました。自分が貧民になったときは不条理だと思いつつ、時に革命が起きることもあり、それなりに納得できるルールでした。
そもそも、一定の秩序ある社会や権力が支配する社会でないと、資本主義や市場経済は成り立ちません。私有財産が保護されること、契約は守られること、守られない場合は権力が実行してくれること。人の命までは取られないことなどなど。競争には限界があり、競争を成り立たせるには、政治権力が必要なのです。議論は、その市場経済に、どこまで政治が介入するかです。

資本主義は不平等をもたらすか

2014年9月18日   岡本全勝

朝日新聞9月12日オピニオン欄は、「ピケティ論争、格差は宿命か」でした。フランスの経済学者トマ・ピケティ教授の著書『21世紀の資本論』が、世界中で議論を呼んでいるとのことです。資本主義の下で経済的不平等が進む、という主張です。
稲葉振一郎・明治学院大学教授
・・そもそも、なぜ不平等がいけないのかを考える必要もある。格差と成長の関係を考える場合、「レベリングダウン問題」というものがあります。全体の賃金水準を下げながら格差を縮めるという考え方は採用に値するか、ということです。みんなが平等に貧乏になるという政策は本当に正当化できるのでしょうか。
平等主義の本来の目的は、不平等な社会で困っている人や弱者を助けることです。でも、手段はいろいろある。平等主義はそのひとつにすぎず、困っている人を助けることと同じではない。重要なのは平等ではなく、全員がある最低水準をクリアしていることだという考え方もある。むしろこちらの発想のほうが現実の制度づくりには直結してくるかもしれません・・
大竹文雄・大阪大学教授
・・私たちはできることから始めるべきです。まず、リーマン・ショック時に発覚したような、常識外に高い報酬を経営者たちに取らせないよう、株主や市場が経営監視を強めることです。格差拡大を一定程度和らげることができます。
加えて、日本で喫緊の課題は教育支援です。大学など高等教育機関へ進む道は、資産のない家庭の子どもたちにも同等に開かれなくてはなりません。子どもたちは将来のイノベーションを担う成長の糧です。高等教育を受ける機会を一定の所得層に限定してしまう状況になれば、日本そのものの成長余力が損なわれてしまいます。
競争の機会を等しくするような教育支援は、福祉的な観点から必要なだけではありません。技術革新を促して生産性を高め、社会の持続可能性を維持するためにも欠かせない投資なのです・・