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民主主義と資本主義の関係

9月25日の日経新聞オピニオン欄、マーティン・ウルフ(ファイナンシャルタイムズ、チーフ・エコノミクス・コメンテーター)の「民主主義 立て直すには」、電子版では「民主主義 危うい資本主義との“婚姻関係” 」から。
・・・民主主義が後退している。自由なグローバル経済への信認も低下している。民主主義と資本主義は本来、“婚姻関係”にあるが、何度も危険な状態に陥った。今も厳しい局面に見舞われている・・・
・・・民主国家の割合を国内総生産(GDP)に占める貿易額の比率と並べて比較することもできる(貿易額のGDP比は、人や資本の移動といった他のグローバル化指標とも強い相関性がある)。
歴史を見ると、民主化とグローバル化はほぼ相関関係にあることがわかる。要は19世紀の産業革命が政治革命をもたらし、独裁主義から民主主義への移行を促した。逆に、反グローバル化は反民主化と連動している。
これは当然だろう。米ハーバード大学のベンジャミン・フリードマン教授が主張するように、民主主義は豊かな時代に進展するが、貧困下では後退する。実際、1820年以降、世界の1人当たりの平均実収入は13倍に増え、高所得国ではそれを上回った。経済発展に伴い国民の教育が必要になり、国民を戦争に動員しようとすれば、政治的に多様な考え方を包摂することが求められた。
逆に金融危機は貧困や不安、そして怒りを引き起こした。民主主義には、勝者は敗者を破滅に追い込むために権力を行使することはないという勝者への信頼が欠かせない。しかし、負の感情はそうした信頼を消し去ってしまう。

民主主義と資本主義は関連が実証されているだけではない。民主国家では全ての人が政治の意思決定に加わり、資本主義の下では誰もが自由に市場を利用できることが前提になるという意味で、ともに平等の理念に基づいている。
だが大きな違いもある。民主政治には国民の連帯が必要だが、資本家たちは愛国主義には関心がない。民主主義では全ての市民に発言権があるはずだが、資本主義では富める者が最も大きな発言力を持つ。有権者はある程度の経済的安定を求めるが、資本主義には好不況の循環が付きものだ・・・
原文をお読みください。

長期の景気拡大期、その実相

日本の景気は2012年12月以降、拡大局面が続いています。もう4年半を超えています。しかし、今ひとつ景気が良くなっている実感がわかないようです。
日経新聞経済教室9月19日は、小峰隆夫・大正大学教授が「堅調景気の実相 アベノミクス効果限定的」で、わかりやすい解説をしておられます。これまでの3回の景気拡大期を比較したグラフも、わかりやすいです。詳しくは、原文をお読みいただくとして。

・・・日本の景気は2012年12月以降、拡大局面が続いている。期間は既にバブル期(1986年12月~91年2月までの51カ月)を上回る。今年9月時点でも景気の基調は変わっていないので、景気拡大期間はいざなぎ景気(65年11月~70年7月までの57カ月)を上回り、戦後2番目に長くなっている(最長は02年2月~08年2月までの73カ月)。
政府はアベノミクスの成果として強調したいようだが、話はそれほど簡単ではない。本稿では、今回の長期景気拡大を巡り多くの人が抱く疑問について考える。すなわち(1)長期景気拡大にアベノミクスはどの程度寄与しているのか(2)景気拡大が長い割には実感が得られないのはなぜか(3)この長期拡大はいつまで続くのか――という3つの疑問だ・・・
・・・まず現在進行中の長期景気拡大を一本調子の景気拡大としてとらえるのではなく、3つの期間に分けて考えたほうがいい。12年12月から14年3月までの順調な拡大期(第1期)、14年4月から16年夏ごろまでの足踏みの時期(第2期)、16年夏以降現在に至る景気の再浮揚期(第3期)だ・・・
・・・ 第1に政策との関係では、第1期についてはアベノミクスによる異次元金融緩和、財政出動が景気を好転させた。だが第2期にはその効果は次第に薄れていった。そして第3期の景気拡大は輸出主導型であり、海外経済の安定化に助けられたものだったから、これをアベノミクスの成果と言うのには無理がある。
第2に景気拡大期間が長い割にはその実感が得られない一つの有力な背景は、第2期の準景気後退局面を含んでいるため、経済活動のレベルがそれほど高まっていないことにある。今回のCI上昇幅はバブル期や02年からの景気拡大期の半分から3分の1にすぎない・・・

NHKでは、「回復を実感できない」という声に対して、中間層の年収から分析しています。「いざなぎ超え データで探る中間層の実像」。

官民ファンドの成果と評価

8月6日の日経新聞が、「国のリスクマネー試練」という表題で、官民ファンドを取り上げていました。
官民ファンドは、国と民間が特定の目的のために資金を出し合って、融資を行う仕組みです。地域産業振興や、苦境の産業へのてこ入れ、ベンチャー企業育成などがあるようです。
この記事では、産業革新機構によるベンチャー投資が、扱った案件のうち8割で損失を出しているとのことです。もっとも、確実にもうけが出るなら、銀行などが融資するでしょうから、官民ファンドの出番はないでしょう。何をもって、成功・失敗と見るのか。難しいところです。
とはいえ、国の予算(税金でなく投融資)ですから、国民への説明責任はあります。設立時に、一定の指標を設定しておくのが、よいのでしょうか。

また、関連記事「官民14ファンド乱立 予算消化優先、収益二の次」で、官民ファンドが14あることが紹介されています。これだけも設立されているのですね。
政府にも、「官民ファンドの活用推進に関する関係閣僚会議」があります。

政治と行政では、「何をする」と表明することも重要ですが、「その結果どれだけの成果が出た」ということも重要です。そしてそれを検証することも。「爬虫類行政」と「ほ乳類行政」の違いです。

アジア通貨危機から20年

1997年にアジア通貨危機が発生してから、20年になります。7月3日の日経新聞が、特集を組んでいました。発端、連鎖と、危機が発生し広がった経緯を紹介するとともに、その際に関係者はどのように対応したか、何が失敗で何を学んだかを、証言の形で紹介しています。

もう20年にもなるのですね。しかし、専門家でないと、これらの全体像や概要を知っている人は少ないでしょう。近過去のことを、このように解説してくれる新聞記事は、ありがたいです。

日米経済摩擦の歴史

4月14日の日経新聞の経済教室に、細川昌彦・中部大学特任教授が「日米経済対話の焦点 WTOの補強主眼に」を書いておられます。内容は、記事を読んでいただくとして。「世界の通商システムの変遷」という、日米間協議と多国間協議の年表がついています。
1981年からの日米間の経済摩擦、自動車などの自主規制、半導体協定、構造協議など、若い人は知らないであろう衝突と克服の歴史が載っています。
もっとも、この年表だけでは、経緯や内容、その影響はわからないので、別途その解説が欲しいですね。

この歴史を見ると、製造業の競争力を失うアメリカに対し、日本が安くて優秀な労働力と優れた技術で攻め込む構図でした。しかし今や、日本を追いかけてきたアジア各国がかつての日本の立場にあり、日本は当時のアメリカのように守勢に立っています。
さて、このあと日本の産業は、どのような道を歩むのか。今までの路線は続かないこと、アメリカのまねは難しいことは明白です。第三の道を探さなければなりません。