カテゴリー別アーカイブ: 経済

経済

北欧の従業員の学び直し

日経新聞が12月5日から「成長の未来図・第3部 北欧の現場から」を連載していました。第1回は「北欧起業圏「自らを再生する街」 救うのは企業でなく人」、第2回は「「古いままが最も怖い」 デンマークの元祖リスキリング」でした。

北欧諸国は、規模も大きくなく、自然環境にも恵まれた方ではありません。しかし、だからこそ、さまざまな挑戦を行ってきました。福祉は有名ですが、経済においてもです。
この二つの記事にあるように、会社が倒産する危機になっても、政府は救いません。生き残ることができない企業に見切りをつけ、新しい企業や事業に従業員が移ることを支援します。そして、国民もそれを受け入れています。
第2回目の記事には、失業対策として、また失業してなくても、学び直しに取り組む姿が描かれています。
4時に仕事を終わらせて、勉強会に参加している人への質問です。・・・ポールセンさんに職歴を聞くと「47歳だけどまだ2社目」という。少し恥ずかしげに答えたのは「よい仕事を得るためなら何度でも転職するのがごく自然」だからだ・・・

そして、国民の幸福度も高いのです。

宇宙への挑戦を支える民間の保険

12月1日の朝日新聞に「民間初の挑戦、支える宇宙保険 三井住友海上、オーダーメイドで設計」が載っていました。

・・・日本の宇宙ベンチャー「ispace(アイスペース)」(東京)が、無人の月着陸船を打ち上げる。無事に月までたどり着けば、民間初の偉業となる可能性がある。その歴史的な挑戦を陰で支えているのは、日本の損害保険会社による宇宙保険だ。
民間初となる月探査計画「HAKUTO―R」で保険を引き受けるのは三井住友海上火災保険。アイスペースと共同で「月保険」を開発した。打ち上げから月面着陸までに起こりうる損害を切れ目なく補償する。月着陸船から発信されるデータによって異常を検知して、保険金を支払う仕組みだという。
三井住友海上は宇宙保険との関わりが古い。宇宙開発事業団(NASDA、現宇宙航空研究開発機構〈JAXA〉)初の人工衛星「きく1号」が打ち上げられた1975年、打ち上げ場所の周辺家屋などへの損害リスクを補償する「宇宙賠償責任保険」を国内で先駆けて開発した。以来、50年近く手がけてきた・・・

保険の起源の一つは、中世欧州での船舶保険です。航海は儲かる代わりに危険も大きく、その危険を分散したのが保険です。現在においても、これまでにない新しい事業に乗り出す場合には同じ問題があります。それを支えるのが、損害保険です。経済発展を支える大きな公共的役割があります。

小宮隆太郎先生

11月24日の日経新聞経済教室は、八代尚宏・昭和女子大学特命教授の「小宮隆太郎氏の思想の原点 経済学に基づく政策目指す」でした。

・・・小宮隆太郎先生が逝去された。その経済思想の原点は「経済学の論理を現実の政策に生かすこと」にある。
東大助教授となった1955年当時の日本の経済学界は、観念的なマルクス理論が中心で、現実の経済政策は官僚の試行錯誤で進められていた。こうした中で、経済学の理論に反した様々な政策に対し、少数意見としての「小宮理論」を一貫して唱えてきた。
その対象は専門の国際貿易論を超えて、税制、企業金融、土地問題から経済計画まで幅広い分野に及ぶ、それは、経済学の理論はあらゆる社会問題の解決に貢献できるという信念に基づくものだ・・・

今の学生たちはには理解できないでしょうが、私が大学に入る前までは、日本の経済学、特に東大経済学部はマルクス経済学(マル経)が主流だったそうです。当時は「マルクス主義を理解しないと知識人ではない」くらいの位置づけで、ソ連や中共への(現実を知らない)憧れもあり、力を持っていました。で、私も少しかじりましたが、すぐにやめてしまいました。
八代先生がおっしゃる「観念論」が先にあり、それに歴史を当てはめます。現実経済の分析には、ほぼ役に立たない議論でした。

「マル経」に対し現在の経済学は、「近代経済学」「近経」と呼ばれていました。こちらは、はじめは難解でしたが、思考方法が理解できると、頭に入りました。マル経と近経の対立構図を知ったのは、もう少し後のことです。当時のマル経の先生方は、現在の経済学の状況をどのように見ておられるのでしょうね。

タクシー運転手不足

11月18日の日経新聞が「タクシー運転手、都内は32年ぶり最少 収入低迷響く」を伝えていました。
・・・新型コロナウイルスの影響でタクシードライバーの減少が深刻化している。全国では2021年度末にコロナ禍前の19年度に比べて2割近く減り、減少が続いている。東京都内では32年ぶりに過去最少を更新した。政府が水際対策を緩和し、インバウンド(訪日外国人)の旅行需要の回復が期待される。ドライバー不足が続けばこうした旅行需要などの回復に影を落としかねない・・・

11月20日の朝日新聞は「タクシー運転手、ソウル哀歌」を伝えていました。
・・・空車のタクシーがなかなか来ない。最近、韓国のソウルでよく聞く嘆き節だ。新型コロナ禍の規制がなくなり、街に出る人が増えたが、「市民の足」の担い手は苦境にあるようだ・・・
・・・「タクシー大乱」 韓国メディアには、こんな言葉がおどるようになった。
韓国のタクシーは運賃が割安だ。今のソウルでの初乗り2キロは3800ウォン(約380円)。これでもずいぶん上がったが、韓国国土交通省によると、20分ほど乗った時の料金は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均の「38%程度」の水準だという。
そんな中をコロナ禍が襲った。その後は、世界的な原材料価格の高騰などで物価高も加速している。「今は、なんとか夫婦で食べていけるぐらいの稼ぎがやっとだよ」。この道で40年のソウル近郊に住むタクシー運転手の男性(73)は言う。現在の月収は、150万〜200万ウォン(約15万〜20万円)程度。息子2人は独立し、教育費などがかからなくなったため生活はできているが、「重労働だし、若い世代はやりたがらないだろうね。昔は基本料金でジャージャー麺を食べ、コーヒーも1杯飲めた。物価が上がった今じゃ、そうもいかない」
ソウル市などによると、タクシー運転手の平均月収は220万〜250万ウォン(約22万〜25万円)程度。ソウル首都圏で家族の暮らしを支えるには十分とは言いがたい。そして、男性が「自分はもう年だから考えなかったけどよく聞くね」と言うのが、運転手たちの「離脱」だ・・・

かつて北欧に行ったときに、タクシー運転手がアジア系の人が多いことに驚きました。移民が就きやすい職業だと言うことでした。低賃金なので、移民の職業になるのでしょう。

手形交換所終了

11月3日の朝日新聞が「消えゆく、紙の手形 交換所、143年の歴史に幕 取引電子化進み、利用減少」を伝えていました。

・・・企業が代金の後払いに使う「約束手形」などを取り扱う全国179カ所の交換所が2日、業務を終了した。金融機関が受け取った手形を持ち寄り、交換する場を担ってきた。古くは明治時代に設立され、日本の近代から現在までの経済成長を「裏方」として支えてきた。金融取引の電子化が進んだことで、その役目を終えた。
日本最古となる1879(明治12)年に開所した大阪の交換所では2日、最後の交換が行われた・・・

私は2011年の東日本大震災発災直後、政府がつくった被災者支援本部の事務方責任者に任命された際に、「何をするのか」「何ができるのか」を考えました。被害が大きく現地の情報も把握できていません。そこで幹部と議論して、「暗闇の灯台」「手形交換所」になることを目指しました。
「暗闇の灯台」は、どこにどのような情報があるのか、誰が何を求めているのかという情報を集めることです。「まずは、ここに持ってきてください」と明かりをともすのです。
「手形交換所」は、その寄せられた要望と支援できる人や組織をつなぎ合わせることです。この表現はわかりやすく、好評だったのですが。