カテゴリーアーカイブ:社会

世界で戦う選手を育てる

2021年11月24日   岡本全勝

11月14日の日経新聞、ザ・スタイルに、松岡修造さんの「テニス選手育成 挑戦の旅」が載っていました。
松岡さん(1967年生まれ)が選手だった頃、日本男子は世界の100位に入るのが夢でした。彼がその壁を破り、1996年にウィンブルドンセンターコートで戦い、「こんなすばらしい場所で戦える日本男子を作り上げたい」と叫びます。
しかし、世界で戦うということは、テニスがうまくなればいいだけではありません。日本人が苦手な表現力、自立心、決断力を養わなければなりません。年間10か月を毎週違う国で過ごすために必要な心技体を養う必要があります。その方法を低年齢から教えることができれば、世界の舞台に導けると考え、10歳から18歳までの選手の強化プログラムを実施します。メンタル、技術、フィットネス、医療ケアの専門スタッフがつきます。

平成の30年が、日本にとって失われた30年と評価されています。産業経済面では、そうでしょう。しかし、テニスに限らず、サッカーや野球など、世界で活躍する日本選手が増えました。そこには、プロリーグにして鍛えること、世界に挑戦することなど、挑戦する人を育てる仕組みと支援する仕組みを作ったからです。一人の天才が出てくるだけでは、後が続きません。
他方で、産業や学問などでの停滞は、日本の中で満足し、世界で戦わなかったことによると、私は考えています。

異分野の合作で新しい知見が生まれる

2021年11月22日   岡本全勝

11月2日の日経新聞「変わる地方国立大学」、斎藤滋・富山大学長の「革新創出へ文理融合」に次のような指摘があります。

・・・今日、トップ論文が載る研究雑誌では単一大学の単一講座(教室)からの報告は皆無となっている。複数の大学、講座、専門分野の異なる研究者の合作で新しい知見が生まれてきているのだ。
日本の大学では単一講座(教員)の指導で研究が行われてきたが、学問の進歩は複合的な解析を不可欠とし、異分野の学問領域の融合が世界的に行われている。日本の国際的な遅れは、この融合するという意識の低さが原因の一つである・・・

脳が作る第3の痛み

2021年11月19日   岡本全勝

11月8日の朝日新聞に「体・神経に傷ない「第3の痛み」、解明進む」が載っていました。
・・・体の損傷などの明らかな原因がなくても痛みが長引く場合があり、脳の神経回路の変化が影響していることが最近の研究でわかってきた。国際疼痛(とうつう)学会が「第3の痛みのしくみ」として提唱。日本疼痛学会など国内8学会の連合が今秋、「痛覚変調性疼痛」と呼ぶことを決めた。名称の決定で、従来の痛みのタイプとの区別が明確になり、治療法の開発の後押しになると期待される。

痛みの発生は従来二つのタイプで説明されてきた。一つは、けがや炎症で組織が傷つき、痛みの信号が出て起きる「侵害受容性疼痛」。もう一つは手術や事故、脳卒中などで神経が損傷して起きる「神経障害性疼痛」だ。だが、どちらにも当てはまらない痛みに苦しむ人は多く、痛む部位を調べても原因は見つからず、医療の中であいまいな位置づけになってきた。
国際疼痛学会は2017年、様々な要因で脊髄から脳にかけた痛みを生み出す神経回路が変化し、痛みが生じたり、痛みに過敏になったりするというしくみを提唱した。国内でも昨秋に発足した日本痛み関連学会連合が用語委員会を立ち上げ、今秋、「痛覚変調性」と呼ぶことを決めた。
この痛みは、痛みへの恐怖、不安、怒りやストレスといった社会心理的な要因が大きく関係する。それらの影響で、神経回路が変化し、痛みを長引かせ、悪化させるとみられている・・・
・・・用語委員会委員長を務める東京慈恵会医大痛み脳科学センターの加藤総夫センター長は「ストレスや心理的影響など様々なきっかけで脳の働きが変わり、脳が痛みをつくることがある。こうした理解が広がれば、痛みに立ち向かいやすくなる」と話す・・・

心の痛みは、これらとは別なのでしょうね。

猫の寿命を延ばす

2021年11月18日   岡本全勝

宮崎徹著『猫が30歳まで生きる日 治せなかった病気に打ち克つタンパク質「AIM」の発見』(2021年、時事通信社)を紹介します。

猫の平均寿命は15歳で、多くが腎臓病で死ぬのだそうです。その原因は、血液中のタンパク質「AIM(apoptosis inhibitor of macrophage)」が正常に機能しないために腎臓病になります。それは、家猫に限らず、ネコ科(ライオン、虎、チーター)の動物すべてにある遺伝だそうです。
AIMを投与すると腎臓病が良くなり、ネコの寿命が延びるのです。宮崎先生は、ほかの研究をしていて、このAIMを見つけます。ひょんなことから、ネコの腎臓病に効くことがわかり、ネコ愛好家や動物病院の方から、薬としてほしいとの要望を受けて、現在商品化の途中です。時事通信ニュース、その後。

AIMの働きは、本書を読んでいただくとして。素人の私が解説すると、次の通り。
マクロファージという細胞を聞いたことがあるでしょう。体の中の異物を食べて排出してくれる細胞です。AIMは老廃物にくっついて、マクロファージに食べられる働きを持っています。体の中の老廃物を排出しないと、「ゴミ」がたまります。ネコは、この働きがうまく行かず、老廃物が腎臓にたまって腎臓病になるのです。
老化は、体に老廃物がたまることによって進む面もあります。すると、この働きを人間に応用すると、老化が抑えられることになります。人間だけでなく動物一般にです。
これがうまく行くと、ノーベル賞もの、いえ、それ以上の発明になるでしょう。

わくわくする話です。しかも、門外漢が読んでもわかる本です。説明が上手なのと、仕組みが意外と簡単なのです。お勧めです。

学校での同調圧力

2021年11月18日   岡本全勝

11月10日の日経新聞「教育岩盤」は、太田肇・同志社大教授の「学校の同調圧力、創造性を阻害」でした。

・・・日本の学校には、子どもを枠にはめ、はみ出しを許さない風潮が根強く残る。同調圧力の研究で知られる同志社大の太田肇教授は「厳しいルールの下では子どもが自由なアイデアを考える余地がなくなる」と危ぶむ。

――子どもに同じ服装や行動を求める学校が多いのはなぜでしょう。
「服装や持ち物などを画一化した方が子どもを管理しやすい。授業も1クラス数十人の児童生徒に手際よく教えるには例外を認めずに同じ解法を教えた方が効率的と考えているのではないか」
「『他の子と一緒でなければいけない』という同調圧力は理不尽な指導につながる。日本の学校は親の転勤以外で子どもの転校は珍しく、教師も学校関係者以外との交流が少ない。人の流動性が低いため多様な意見に触れる機会が乏しく、理不尽さに気づきにくいのも特徴だ」

――規則重視の指導の弊害は何でしょう。
「厳しいルールの下では子どもが自由なアイデアを考える余地がない。技術革新で世界が急速に変化する中で、日本の教育を受けた人材が世界の潮流についていけなくなると懸念している」
「高度経済成長期のように大量生産型の産業が中心だった時は、規則を守り正確な手順で作業できる人材が必要だった。現代はコンピューターや機械がその役割を担う。いま求められているのは高度な思考や自由な発想ができる人だ。厳しい規則で子どもを管理しても、創造性は生まれない」・・・