カテゴリーアーカイブ:社会

地方から東京へ女性の転出

2025年7月24日   岡本全勝

7月8日の読売新聞「参院選2025 地方と女性」「進学・就職で東京へ転出」から。

・・・「地元で夢は実現できなそう」 男女数不均衡 地域経済存立の危機
地方から都市へと、女性の転出が続いている。地方にはやりたい仕事が少ない、賃金に男女格差がある、女性だからと昔ながらの役割を求められるなど、様々な理由が指摘されている。20日に投開票が行われる参院選では、地方の課題や女性活躍も論戦のテーマになる。男女とも希望通りの生き方ができ、活力のある地方を作るにはどうすればいいのか、ふるさとを後にした女性の声などから考える・・・

・・・総務省の人口移動報告によると、2024年に東京に転入した女性は約21万6800人で、転出者より約4万2200人多い転入超過状態だ。男性の転入超過の約3万7100人よりも多くなっている。
内閣府の報告書「地域の経済2023」によると、15年以降、15~29歳を見ると、東京圏への女性の転入超過数は男性を上回り続けている。特に東北や北関東、甲信越からの女性の転入が多い。
その結果、男女数が不均衡の県が目立つように。20~34歳の未婚者の男女の人口比(女性1に対する男性の数)が全国最大なのは福島県の1・35。2位が茨城県で1・33、3位が富山県と栃木県で各1・32という結果になった。

報告書は「性別による人口の不均衡は、中長期的に地域の少子化・人口減少につながり、地域経済の存立を危ぶませる」と警鐘を鳴らしている。
なぜ女性は地方から東京に流出するのだろうか。公益財団法人「東北活性化研究センター」(仙台市)は20年、18~29歳の女性にアンケートを行った。東北6県と新潟出身で、進学を機に東京圏に移り住み、現在も東京圏に居住している760人のうち、「進学の際に地元に戻る気はなかった」と答えた女性は55%にのぼる。

一方で、「特に考えていなかった」(27%)、「地元に戻るつもりだった」(18%)という女性も少なくない。同センターの橋本有子さんは、「地方に多様な業種や職種がなく、『自分の夢ややりたいことが実現できなそう』と考えている女性は多い。DX(デジタルトランスフォーメーション)やリモートワークなどを推進することで、地元の企業に就職しようという気持ちがある女性に戻ってきてもらうことが大切だ」と話している・・・
参考「読売新聞「あすへの考」に載りました

甘口化する日本酒

2025年7月22日   岡本全勝

7月7日の朝日新聞に「甘口化する日本酒、味や香りの秘密は」が載っていました。

・・・かつては「淡麗辛口」のイメージが強かった日本酒も今は一転。フルーティーで甘口なものが増え、海外への輸出も伸びているそうです。どうやってそんな日本酒がつくられているのでしょうか・・・

・・・「それが近年は、甘口化が徐々に進んでいます」
酒類総合研究所の阿久津武広・業務統括部門副部門長は話す。
鑑評会出品酒の成分調査も担う研究所の調べでは、日本酒の甘さ辛さの指標となる「日本酒度」は、1998酒造年度の出品酒は平均4.6だったが、2008年に3.5、18年には0.9、最新データとなる22年は-0.2まで下がった。
日本酒度は、お酒の比重の逆数から水の比重の1を引いた数値で、糖分などが多ければマイナスになって甘口に、少なければ辛口になる。出品酒の平均は、四半世紀で辛口から甘口になった形だ。
阿久津さんによると、甘口化が進んだ要因は、06年に日本醸造協会が開発したある酵母がきっかけだった。
「きょうかい酵母1801号」
その酵母は、アルコール発酵の過程で、リンゴのようなフルーティーな香りを放つという。デビューするや、瞬く間に全国の酒蔵や日本酒好きから人気を博した・・・

・・・酒類総合研究所によると、近年は、発酵を途中で止める手法が主流。発酵させすぎると、酵母が自らつくったアルコールでダメージを受けて味が落ちることが分かってきたためだ。この結果、グルコース(糖)が残りがちになり、これも甘口化の一因になっている。
阿久津さんは「酵母1801をはじめとするフルーティーな香りを生み出す酵母は、少し苦みをつくることもあって、あえてグルコースを多めに残している場合もある」と話す。
日本酒製造大手「大関」の広報担当者は「市場のニーズが多様化するなかで、香りが華やかな吟醸酒が好まれるようになった。かつて一般的だった淡麗辛口よりも、香りと味わいのバランスがいい、やや甘口で濃醇な吟醸酒が増えている」とする・・・

・・・日本酒造組合中央会によると、2024年の輸出総額は434億円で、14年の115億円から10年で4倍になった。主な輸出先は中国や米国、韓国で、80の国と地域にのぼる。
にもかかわらず、国内での製造量は減少の一途だ。
国税庁によると、日本酒を含めた清酒の製造量は1973年度の142万キロリットルをピークに、00年度には72万キロリットル、23年度には32万キロリットルになった・・・

多い日本の使い捨てプラスチック

2025年7月8日   岡本全勝

6月26日の朝日新聞夕刊、アレックス・ゴドイ、チリ・デサロージョ大学サステイナビリティー研究センター所長の「お弁当にもトレカにも、日本の使い捨てプラ」から。

・・・南米チリの環境専門家で、プラスチック汚染や気候変動などの会議に出席してきたアレックス・ゴドイさんが今年2月、家族で日本を初めて訪れ、休暇を満喫しました。ただ、驚いたのは、日常生活であまりにも多くの使い捨てプラスチックが使われていること・・・

・・・チリや欧米と比べて、日々の生活の至る所で使い捨てプラスチックが使われていることに大きなショックを受けました。
旅行中、電車内で食べるためにマグロ丼のお弁当を駅のそばで買いました。本物の木箱のように見えるすばらしい容器に入っていましたが、幾層にもわたる使い捨てプラスチックを組み合わせた容器でした。保冷剤に、おしぼり、割り箸の袋、小分けのしょうゆなど、他にも使い捨てプラスチックが多く使われていました。

それだけではありません。
スーパーマーケットでは、バナナやリンゴなどの果物が、個別にプラスチックトレーに載せられた上でさらにラップでくるんで包装され、コンビニではクッキー1枚、おにぎり1個の単位で個別にプラスチック包装されて販売されています。特に、しょうゆやマヨネーズ、サラダドレッシングなどがとっても小さなプラスチックの袋に入れられていて、毎食ごとに多用されています。
アニメグッズのお店に行くと、キーホルダーやトレカのような小さなモノまでプラスチックで幾重にも包装され、それらは、小袋にいれられ、店名やブランドが書いてあるショッピングバッグに入れられて手渡されます。
見せ方と衛生管理という意味でとても感心しつつも、使い捨てプラスチックの使用量があまりにも多すぎると思いました。日本のすばらしい企画力を、よりサステイナブルな代替策に振り向けてはどうでしょうか・・・

・・・日本は特異な立場にあります。
1人あたり年間30キロ以上を使い、国内で年間900万トン以上を生産する、世界有数のプラスチック消費国です。
この数値は、単に工業力を反映した結果ではありません。すでに述べたように、日本の「包装文化」に深く根付いた消費行動を反映しています。日本において、包装は単なる付属物ではなく、製品体験の不可欠な一部であり、洗練された美的感覚から厳格な衛生基準に至るまで、効率・尊重・視覚的調和という文化的価値を体現しています。この文化は、コンビニエンスストアの普及、丁寧に包まれた贈答品、個包装製品の構造的な好みによってさらに強化されている。私はそう、滞在中に確信しました・・・

早川書房社長の「私の履歴書」

2025年6月30日   岡本全勝

日経新聞私の履歴書、6月は、早川浩・早川書房社長でした。早川書房は、推理小説や空想科学小説(SF)、外国書籍の翻訳で有名です。
早川書房は、意外な分野の翻訳も手がけています。私は推理小説などは読まないのですが、カズオ・イシグロやマイケル・サンデルを読みました。ほかに、スティーヴン・ホーキングなども、早川書房です。

本屋で多くの出版社の翻訳本を見る度に、どのようにして著者や出版社と接点を持ち、翻訳するのか。その方法を知りたいと、思っていました。評価の定まった本なら売れ行きも読めるでしょうが、新人を発掘するのは難しいし、売れるかどうかわかりませんよね。
早川浩社長の履歴書を読むと、良い本を探すこと、そしてその翻訳を交渉し、翻訳権を手に入れることの難しさが書かれています。ご本人の「目利き能力」のほかに、広い交友がものを言うのですね。
社長も、サンデルの「これからの正義の話をしよう」は3000部だろうと見積もったら、百万部を超えるベストセラーになったと、白状しておられます。

「私の履歴書」。これまでにないことに手を出す、リスクを承知で挑戦した方の履歴は、興味深いです。

ネクタイはなくなるか

2025年6月27日   岡本全勝

6月15日の読売新聞に、松原知基・経済部次長の「受難のネクタイ 外す夏に思う事」が載っていました。私にとってネクタイは、気合いを入れる「小道具」です。

・・・91年には国内生産・輸入量の合計が約5645万本と過去最高を記録した。
変調を来したのはその後だ。IT企業を中心に軽装の会社員が増える。痛撃となったのがちょうど20年前、小泉純一郎内閣の旗振りで始まった「クールビズ」である。夏に社会を挙げてネクタイを外すようになった。
2024年の1世帯あたりの購入額は20年前の3割弱にまで急減した。東京ネクタイ協同組合によると、22年の国内生産・輸入量の合計も約1107万本と4分の1になった。05年に45社程度だった組合加盟社は半減したという。
この間、各社はそれまでにないカジュアルなデザインを施したり、ワンタッチの着脱式ネクタイを開発したりと工夫を凝らした。だが、冷房の温度を下げすぎないことによって電力消費を抑え、温室効果ガスの排出量を減らすという環境保護キャンペーンにあらがうことは難しかった。

きょう15日は6月第3日曜、すなわち「父の日」。かつてお父さんに贈るプレゼントの定番の一つがネクタイだった。総務省の家計調査によると、20年以上前、1年のうち1世帯あたりの購入本数が最も多いのは6月だった。
だがクールビズが始まると、新年度を控えた3月の方が多くなった。6月にネクタイを締めるお父さんが減った影響だろう。もとは妻や恋人が無事を祈る気持ちを込めた布が、父の日に贈られることが少なくなったとは、ちょっと寂しい。
和田さんはネクタイの意義をこう語る。「ネクタイは『着ける』ではなく、『締める』と言いますよね。ハチマキを締める、ふんどしを締めると言うのと同じ。気持ちを引き締めたり、気合を入れたりするものなんです」・・・