カテゴリー別アーカイブ: 社会

社会

各国の国民性、問題が起きたら

孫引きで申し訳ありません。笹川陽平・日本財団会長のブログ(1月16日)に、石弘之さんの年賀状が紹介されていました。石先生は、先日紹介した『感染症の世界史』の著者です。実はこの本も、このブログで知ったのです。
・・昨年も世界ではさまざまな問題がありました。問題が発生したら、各国はどんな対処をしたでしょうか?
アメリカ コンサルタントと弁護士を雇う
フランス 大議論のあげく問題がさらに深刻化する
ドイツ  すべてオッシー(旧東ドイツ人)のせいにする
ロシア  関係者全員を逮捕する
スイス  国民投票にかける
スウェーデン  イケアのサポートデスクに電話する
ギリシャ  政府も企業も商店も全部閉鎖する
中国  わが国にはそのような問題は存在しないと声明を発表する
韓国  日本に抗議する
日本  第三者委員会を組織する
さて、ことしはどんな「第三者委員会」ができるのでしょうか・・

これには、笑いました。この手の笑い話は、いくつかあります。有名なのは、あることを調べる場合とか、船が遭難した際に救命ボートが不足した時の対処の仕方とか。各国の国民性を端的にとらえて、クスッとさせます。前者の場合、日本人は「他国の研究を調べる」であり、後者は「皆さん飛び込んでいますと呼びかけると、日本人は海に飛び込む」というのがオチです。
ところで、今回の問題発生時の対処についてですが、なかなか的を射ていますね。このホームページでも、先日、朝日新聞の第三者委員会を批判しました。すると、あまり笑えない小話です。

サッカークラブは、観客の行為にどこまで責任を持つのか

NHKが、「Jリーグ サポーターの応援規制に苦慮」を紹介しています(12月13日)。
・・サッカーJリーグで今シーズン、サポーターの応援を巡る問題が相次いだなか、NHKが各クラブを対象に行ったアンケートで、クラブ側はサポーターを統制する難しさや応援の規制に悩んでいる実態が分かりました・・
この記事に書かれているように、特に今年問題になったのは、サポーターが差別的な横断幕を掲げたり、外国人選手にバナナを振りかざすなどの、「差別的行為」をしたことです。これまでも応援団の問題はありましたが、それは熱くなった応援団が、他の観客や相手方の応援団ともめ事を起こしたり、物を投げたりといった、「暴行的逸脱」でした。その点で、少し違った行為が問題になっています。人権意識の高まりでしょう。
サポーターや観客は、サッカークラブにとって重要なお客であり支援者です。その人たちを、どこまで規制するのか。さらには、クラブにはどこまで規制する義務があるのか。難しい問題です。試行錯誤を重ねて、解決していくしかありません。「スタジアムで考える正義とは」(マイケル・サンデル教授のもじりです)ですね。

カラオケの隆盛

11月24日の日経新聞経済欄に、林三郎・第一興商社長のインタビュー「カラオケから見る消費」が載っていました。カラオケボックスを運営している会社です。記事の主たる内容からは、ずれますが、興味深かった点を紹介します。
「少子高齢化でアルコール離れも進んでいます。カラオケ市場への影響はどうですか」という問いに。
・・夜の生活を楽しむナイトマーケットは年々着実に縮小している。全体的に酒を飲まなくなっているほか、当社がカラオケ機器を提供しているスナックやバーなどの経営者の高齢化が進み、廃業も増えている。このためカラオケ参加人口は2013年が4710万人で、直近のピークである1995年に比べると2割減少している・・人は酒を飲まなくなったとはいえ、どこかで発散する場所が必要なわけで、手軽なレジャーの場として安定需要が見込める・・確かに若者人口は減っているが、最近はシニアや家族連れの利用が増えている。ファミリーが利用したり、高齢者が歌の練習をしたり、昼間の需要が盛り上がっている・・

家風や社風の再生産

先日の「日本人の自己認識」(11月2日)の補足です。私は、『新地方自治入門』p198で、地域の財産として次の5つを挙げ、特に見えない資本の重要性を述べました。社会的共通資本、ソーシャル・キャピタルです。
1 自然資本=自然環境
2 社会資本(施設資本)=公共施設、公共的施設
ここまでは、目に見えます。
3 制度資本=教育、医療、保険、警察、司法、保育、介護
4 関係資本=信頼などの人間関係
5 文化資本=社会としてのものの考え方、治安、風紀、助け合い、勤労を尊ぶ気風、お国柄
世間ではまたこれまでは、社会資本と言えば公共施設を指しました。しかし、ここに挙げた目に見えない人間関係は、社会で暮らしていく上で、重要な基盤です。
この記事を読んだ人の反応です。
「このような日本人の自己認識が好循環を呼ぶのは、家庭や職場、学校などでも同じなのでしょうね。朝の挨拶や、勤勉な家風が、自然と子どもや職員、生徒に伝わって、家風や校風、社風ができるのでしょう。そしてそれが、再生産されるのだと思います。教訓をいくら紙に書いても、それだけでは良い校風は育たないでしょう」。
おっしゃるとおりです。

日本人の自己認識。親切、他人の役に立とうとする。生まれ変わっても日本に

統計数理研究所が発表した、「日本人の国民性調査」結果が、各紙で取り上げられています。
日本人の長所として「親切」「礼儀正しい」が5年前の調査と比べて約20ポイントも増えて、70%を超えています。また、「勤勉」も77%です。さらに、たいていの人は「他人の役に立とうとしているか」あるいは「自分のことだけに気をくばっているか」については、「他人の役に」という人は1978年は19%に過ぎなかったのが、毎回少しずつ増加し、前回の36%から今回は45%となって、「自分のことだけ」の割合 (42%) を上回りました。
その原因として、大震災後の日本人の姿に影響を受けたのではないか、と分析しています。すなわち、助け合う被災者や支援するボランティアの活動を見て、親切や他人の役に立つことを日本人の長所ととらえる人が増えたということです。
自分たち日本人が「親切である、他人の役に立つ人たちである」という認識は、大きな社会的共通資本です。大災害時に、発展途上国だけでなく先進国でも、暴動や略奪が起きます。それに比べ、日本人の冷静さや助け合いは、すごい財産です。各個人にとっても、安心して暮らすことができます。経済活動や行政活動にとっても、「無駄なコスト」が減ります。これは、社会を安定させます。
そして、このような認識は、好循環を招くと思います。「私もそう行動しよう」と思うことで、次に良い行動が生まれます。東日本大震災は、日本人に助け合いの気持ちと行動を、さらに大きくさせたといえるでしょう。その萌芽は、阪神・淡路大震災でのボランティア元年です。
このほか、「もう一度生まれかわるとしたら日本に生まれてくる」が、前回の77%から83%へと上昇しています。日本を良い国だと思っているのです。日本人は、謙遜を良しとします。さらに、一部の知識人には、欧米と比べて自国を悪く言う人がいます。それを思うと、意外なほどに高い数値です。
国民は、生活の分野で、日本社会に誇りを持っています。海外旅行での体験やニュース報道で、諸外国の欠点も見聞きするからでしょう。もちろん、この日本社会への信頼は、日々行動することによって維持されるものです。努力なくしては、維持できません。そして、日本社会にも、他にさまざまな問題があり、他方で日本だけが「一国繁栄」「一国安心」で満足していてはいけません。