カテゴリー別アーカイブ: 社会

社会

平成は明るいけれど、不安な時代

7月23日の朝日新聞が、世論調査結果から、平成という時代にどのような思いを抱いているのかを分析しています。
・・・平成を「全体として、どんな時代」だと思うかと尋ねたところ、「明るい」が12%、「どちらかといえば明るい」が54%だった。「暗い」は5%、「どちらかといえば暗い」は26%で、平成を肯定的にとらえる人が3分の2を占めた。
一方で、今の日本社会の課題について個別に問うと、決して楽観的とは言えない意識が浮かび上がる。例えば、「経済的な格差が広がってきている」と思う人は78%に上る。また、非正規雇用が増えることが「不安」「どちらかといえば不安」は合わせて74%に。少子高齢化が進むことについても、同様の回答が89%と大半を占めた・・・
・・・同時に、平成の時代を最も象徴している出来事を問うと、「地震などの大災害」が42%と最も多く、「インターネットの普及」が29%、「非正規社員の増加など雇用の流動化」が13%、「バブル崩壊などの不況」が12%と続いた。
過半の人が、平成の時代は全体として暗くはないと思っている半面、社会の変化には多くの人が不安を感じている。そんな「明るい不安社会」とでも言える空気が広がっている・・・

長寿化によるリスクの変化

7月10日の日経新聞に「長寿化 変わる保険」という記事が載っていました。
・・・今や人生80年とも90年ともいわれる長寿社会となった。それを受け、生命保険各社は来春にも保険料を改める。一定期間内に死亡した際に保険金を支払う定期型の保険料は下がる半面、病気にかかるリスクの高まりを反映して医療保障など生きるための保険料には上昇圧力がかかる。一方、契約者側も生存中のリスクに備える商品に軸足を移し始めている。生保も契約者も保険の損得勘定が問われる・・・
・・・「保険=死亡への備え」とは限らない。長寿化に伴い、契約者側の意識や需要も変化してきている。
生命保険文化センターが男性が加入している死亡保障の平均額を調べたところ、16年は1793万円だった。2382万円だった07年から25%減り、1996年に比べると33%も減った。共働き世帯が増え、少子化もあり、自らの死後に家族に残す保険の必要額は減ってきている。
代わって需要が高まってきているのは、自らの病気やケガへの対処や、それで働けなくなった場合といった「生きている間の備え」だ。

副題には、「死亡リスクより「生きるリスク」」とあります。長寿化は、こんなところにも影響を及ぼすのですね。

忖度、ドイツにもあった文化

7月7日朝日新聞オピニオン欄、「暴走する忖度」。政治学者のヴィルヘルム・フォッセさんの発言から。
・・・ドイツには「フォラウスアイレンダー・ゲホルザム」という言葉があります。忖度と同じように、訳すのは難しいですが、直訳すれば先回りした服従という意味です。なぜ、ホロコーストのような大量虐殺が起きたのかを説明する際によく使われます。
法律や社会のルールを守り、税金を納める。家庭では、よい息子、よい娘で、ほめられたい。周囲に波風を立てないよい隣人で、異議を唱えようとしない態度が、結果として非人道的な悲劇を生む土壌になったのです。
日本の政治と社会の研究を30年以上してきました。日本とドイツは似ています。まじめで時間を守り、先回りして自主的に服従します。ドイツの戦後と日本の戦後もある時期までは非常に似た道をたどったと思います・・・

・・・自信を取り戻しつつあったドイツ人に大きく影響したのが、68年から世界を覆った若者の反乱でした。きっかけは米国でのベトナム反戦運動です。日本でも、日米安保体制に対する反対や大学制度を見直す運動があり、環境運動などその後の市民運動にも様々な影響を与えました。ドイツでは若者たちが、教授や親の世代が戦争中に何をしていたのかを問いただす運動に発展したのが大きな特徴でした・・・
・・・民主的だったワイマール体制がヒトラーの台頭を許してしまったのは、制度の欠陥ではなく、民主的な思考と行動をする市民が足りなかったとの理解が広まったのです。それまで、先回りして服従するのがよい市民だとされてきた考えから、疑問を公的に発する成熟した市民になることが重要だという考えが共有され、意識が変わったのです・・・

原文をお読みください。

復興と企業CSR

今日は、仙台へ行って、フォーラム「トモノミクスが拓くあした 被災地と歩む企業」で基調講演をしてきました。河北新報本社には、100人もの聴衆が集まってくださいました。
この大震災では、企業とNPOの貢献が目立ちました。企業にとっては「社会的責任」(CSR)の発揮の場でした。この言葉は、阪神淡路大震災の当時は、まだ人口に膾炙していませんでした。NPOについては、ボランティア元年と言われましたが、今回は組織ボランティアであるNPOの活躍が理解されました。拙著『東日本大震災 復興が日本を変える』では、それを正面から取り上げました。

河北新報は、「トモノミクス」という表題で、この半年間にわたり、企業の社会的貢献を連載してくださいました。その切り口は、これまでにない斬新なものです。しかも、多角的だけでなく、その負の面や限界も取り上げています。これからの、企業の社会的責任を考える際の、一つの道標になるでしょう。

復興に協力いただいた企業へのお礼、この連載をしてくださった河北新報へのお礼を込めて、地域の暮らしとにぎわいのためには、企業が重要な主役であることをお話ししました。
今後、企業の社会責任が国民に広く認識され、企業も積極的に取り組んでくれることを期待しています。行政もまた、企業との協働を工夫しなければなりません。

社会起業家、RCFの活動

RCFメールマガジン2017年6月号を紹介します。地域おこしをはじめとする、地方が求めている人材の求人特集です。どのような地域が、どのような人材を求めているか。このメールマガジンをご覧ください。

RCFは、このページでも時々取り上げているように、藤沢烈さんが立ち上げた一般社団法人です。社会の課題を解決することを使命としています。
ホームページには、次のように書かれています。
・・・私たちRCFは「社会事業コーディネーター」という新しい職業集団です。
社会事業コーディネーターとは「社会の課題から、未来の価値をつくる」仕事。
地域の主体となる住民、県/市役所等の自治体、そして企業、NPOといったセクターを超えた多種多様なステークホルダーと協業することで、黒子として社会をリードしています・・・

簡単に言えば「地方での求人」です。しかし、これが難しいのです。どこにどのような仕事があって人を求めているのか。他方で、地域の役に立ちたいという人もいますが、それをつなぐ機能がなかったのです。東日本大震災を機に、被災地支援に向かう人を、被災地と結びつける事業ができました。このような役割に、期待しています。
佐藤淳さんのインタビューも、お読みください。