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社会

ジャパンタクシー

東京の町中を走るタクシーが、新しい形に変わりつつあります。
ジャパンタクシー」と呼ぶのだそうです。形は、写真を見てください。これまでの多くのセダン型ではなく、ワゴン型です。背が高く、ロンドンタクシーに似ています。

私は、タクシーを余り利用しないのですが。セダン型より背の高いロンドンタクシー型がよいと思っていました。低い天井と低い座席は、乗り込みにくいですよね。
先日、乗る機会がありました。天井が高いので室内が広く、椅子に座っている感じが良かったです。
難点を言えば、東京のこの形のタクシーは、黒が多いのです。もう少し明るい色になりませんかね。
また、天井についている「提灯」を、車体と似合う形に作れないのでしょうか。トヨタによる基本形は、天井の前方に横四角についていて、似合っているのですが。実際に走っているタクシーは、どの会社の提灯も、天井真ん中に目立つような色と形(提灯と呼ばれるように)で乗っていて、この車体の形と色に不釣り合いなのですよね。

車いすも、乗ったままで乗ることができます。映像(ページ上大きな写真の右下の「車いすの乗降方法」)をご覧ください。
少し注文があります。このビデオ、「チャプターいち」「ロッド」「タンブル」「ストライカー」「スカッフプレート」といったカタカナが出てきます。わかりましたか。「ピンが干渉する」といったことばも。
さらに、全部を見るには30分ほどかかるようです。安全のためには、必要なのですが。

結社が支える市民社会

シュテファン=ルートヴィヒ・ ホフマン著『市民結社と民主主義 1750‐1914』( 2009年、岩波書店)。放ってあったのですが、大学の授業で非営利活動を話している際に、思い出し、山の中から探し出しました。

市民結社(アソシエーション、社交団体)が、19世紀欧米の市民社会そして民主主義を支えた点を分析しています。有名なところでは、トクヴィルの「アメリカの民主主義」です。アメリカやイギリスに限らず、驚くほどの社交団体が作られ、市民(といっても男性ですが)が参加したのです。
個人・家族と国家との間にある「中間集団」の役割は、もっと評価されるべきです。その反対が、孤独な群衆であり、アトム化です。コミュニティであれ、同好会であれ、宗教、学校、会社まで、人はさまざまな集団に帰属して、生活と精神の安心を得ます。

本書には、日本語の文献案内もついていて、価値があります。紹介されている「結社の社会史・全5巻」(2005~06年、山川出版)も買ってあるのですが。本の山に埋もれています。

ところで、NPO(非営利活動団体)に、何かよい名前はないかと考えています(日経新聞夕刊コラム第19回)。「結社」は一つの候補者です。漢字二文字です。ただし、政治結社や秘密結社という印象がついて回ること、なにやら古く感じることから、人口には膾炙しないでしょうか。

在宅医療、武藤真祐先生

6月23日の朝日新聞オピニオン欄「広がる医療の地域格差」に、武藤真祐さんが出ておられました。

・・・私は在宅の患者さんを往診するクリニックを、都内4カ所と宮城県石巻市で運営しています。またシンガポールでは、在宅医療サービスと、それを支えるためのICT(情報通信技術)やAI(人工知能)の企業を経営しています・・・
・・・その経験から、医師や看護師、介護スタッフなど、チームで医療を支えるのが大切だと考えます。
クリニックでは、書類は医師以外のスタッフが8割方作ったものを医師が仕上げます。在宅医が移動中に診療内容を電話で口述すると、石巻の専門スタッフがカルテの下書きデータを作ります。医師が診療や患者とのコミュニケーションに時間を使えるようにするためです。専門外の病気を診る場合、グループ内の専門医が相談にのります。テレビ会議で週3回、スタッフの研修をして情報共有をしています。効率化を図るとともに、スタッフや地域の間の格差をなくす努力をしています・・・

記事にも出ているように、石巻市で在宅医療を行ってくださっています。かつて、このホームページでも紹介しました。「被災地から発信する新しい地域包括ケアモデル」(2013年6月8日)

第3波のグローバル化、2

先日書いた「第3波のグローバル化」の続きです。

私は、グローバル化=ものなどの国際的移動の進化を、次のように考えていました。
1 モノの移動 これは鉄道や船などによる運搬の発展に支えられ、大量の工業製品が、国境を超えて移動することです。産業革命期から始まり、19世紀20世紀です。

2 情報の移動 通信、特にIT技術の発展による、情報の瞬時による世界での伝達です。そこに乗るのは、文章といった情報だけでなく、お金=資金もです。これは、20世紀末から発展しています。

3 人の移動 モノと情報とくれば、次はヒトです。でも、これはまだ先のことと思っていました。
上の1と2は技術さえ発展すれば、金儲けのために容易にそれを利用します。しかし、人はそう簡単には移動できません。農業は土地とともにあります。農業の比重は下がりました。ビジネスマンが出張したり、有能な人が世界のどこにでも移住することはあります。しかし、多くの人は働く場所とともに、家族がいます。その上に、育った土地への愛着があります。そう簡単には、移住はできないのです。

ところが、このボールドウィン説では、人体は動かずに、ヴァーチャル技術によって、あたかも人が移動したかのような効果が得られるのです。
なるほど。とはいえ、人の体と住み家が動くこととは、少々意味が違うと思うのですが。

第3波のグローバル化

6月5日の日経新聞オピニオン欄、リチャード・ボールドウィン、ジュネーブ国際高等問題研究所教授の「グローバル化の将来は」から。

・・・グローバル化の第1波は(蒸気エネルギーが普及する)1820年ごろに始まり1990年ごろまで続いた。第1波は主にモノの取引の国際化だった。日本で言えば(トヨタ自動車本社に近い)名古屋圏に産業集積が進み、それが自動車産業の競争力を高めた。輸出が増えると、さらに集積が進んだが、技術革新は国内にとどまった。国境を越えた伝達が難しかったからだ。
これで(日米欧の)先進国がいち早く工業化し他の国々が停滞する、大いなる分岐(グレート・ダイバージェンス)が起こった。
1990年ごろから逆転が起こった。中国、インド、インドネシアのような新興国が先進国よりも速い成長をとげるようになった。第2波のグローバル化は先進国と新興国の所得格差を縮める方向に動いており、これを私は大いなる収れん(グレート・コンバージェンス)と呼んでいる。
その背景には、1980年代から始まったICT(情報通信技術)革命で、国際的な協働がしやすくなったことがある。企業は生産工程の一部を近隣の低賃金国に移し、自社の技術も移転するようになった・・・

・・・グローバル化は(価格差を利用して稼ぐ)裁定取引だ。第1次はモノ、第2次は技術ノウハウ、そして第3次は労働サービスの裁定取引だ。
今はサービス労働の多くは1つの国の中で行われているが、それが国境を越えていくのが第3のグローバル化だ。私はこれを(遠くと移民の合成語の)「テレマイグレーション(Telemigration)」と呼んでいる。
要するに在宅勤務が国際化するということだ。日本でも企業は在宅勤務の活用で労働力不足を補おうとしている。デジタル技術の深化で遠隔地から仕事に参加することが可能になった・・・

記事についている表が、わかりやすいです。一部を抜粋します。原文をお読みください。
第1次グローバル化:1820年ごろ~、蒸気機関の普及。モノが移動するコストの低下
第2次グローバル化:1990年ごろ~、情報通信技術革命の進展。アイデアが移動するコストの低下。
第3次グローバル化:2016年ごろ~、遠隔操作によるバーチャルな人の移動。人が移動するコストの低下。