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社会

東京大学、卒業生の進路変化

2月19日の日経新聞に、「スタートアップ#東京大学(上) 勃興本郷バレー 省庁・大企業から人材シフト」が載っていました。
・・・省庁や大企業に優秀な人材を送ってきた東京大学。東大生の進路に変化が生じている。東大ブランドが通用しないスタートアップを選ぶ卒業生が増えている。スタートアップが大企業をリードするパラダイムシフトが起きているからだ。硬直的な官僚システムへの不満もある・・・

公務員就職率6%どまり」という解説もあります。
・・・東大から大蔵省へ――。このキャリアがエリートの代名詞だった時代は過去のものになったかもしれない。東大生が就職先として公務員を選ぶ比率はこの20年間で低下傾向にある。大学資料から算出した学部卒業生の公務員就職率は2017年春に6%と20年前(9%)と比べ下がっている。法学部でも29%から23%に低下した・・・

明治国家が先進諸国に追いつくために作った「総合輸入商社」「各分野での指導者育成塾」でした。ここが、オックスブリッジやハーバード大学などとの違いです。「制度輸入、官主導の国家育成」に効率よく成功しました。第1段階の使命は、達成しました。
次に、どのような役割を果たすか。第2段階への変身は、理工系学部は成功していると思います。世界の研究の最先端で伍しています。
難しいのは、社会科学系です。自然科学なら、研究対象は、多くの場合万国共通です。社会科学の場合は、研究対象が世界なのか日本なのか。その違いがあると思います。

イギリスの強さ、官僚の留学記

橘宏樹著『現役官僚の滞英日記』(2018年、PLANETS)が興味深かったです。著者は、1980年生まれの官僚で(橘宏樹は仮名です)、2014年から2年間、イギリスの2つの大学院に留学しました。LSEとオックスフォードです。その間に、毎月1回、見聞きしたこと考えたことを、メールマガジンで連載しました。この本は、それをまとめたものです。

海外での体験や見聞を記すことは、かつてはよくありました。読む価値があるかどうかは、筆者の「切り口」「切れ味」によります。この本は、一読の価値があります。仮名なので、どのような経験を積んでおられるかは不明ですが、かなりの教養と学識があるとお見受けします。

私が特に興味を持ったのは、「無戦略を可能にする5つの戦術-イギリスの強さの正体」(p145)です。筆者は、「イギリスには戦略はなく、行き当たりばったりに見える。しかし、そこに強さの正体がある」と分析します。その「うまさ」とは、次の5つです。
弱い紐帯のハブ機能(旧英領植民地とのつながり)
カンニングの素早さ(他国から優良事例をパクること)
乗っかかり上手なイギリス人(人にやらせるのが上手。反対が日本人)
トライ・アンド・エラーをいとわない(とりあえずやってみる)
フィードバックへの情熱(やってみた結果を生かす)

そのほかにも、オックスフォードのエリート再生産システム、会員制クラブによる金とコネと知恵による力など、イギリスの強さを鋭く観察しています。
世界を支配した国、経済的に衰えたとはいえなお力を持っている国。世界第2位の経済大国になったものの、次の道を迷っている日本には、まだ学ぶことがあります。
お勧めです。

このような立派な内容を、匿名で出版しなければならないほど、役所の「規制」があるのなら、残念です。

英会話での謙遜

2月13日の日経新聞オピニオン欄「私見卓見」、山中司・立命館大学国際部副部長の「英語に過剰な謙遜不要」から。
・・・大学で英語を教える教員として、学生が「Sorry for my poor English(英語がつたなくて恐縮です)」と前置きしてから話す場面に遭遇する。日本人が日本語の会話で謙遜するのは、自らへりくだることでコミュニケーションを円滑にしようとするからだが、英語の言い回しとしては違和感を抱く・・・
・・・英語を使う際、謙遜はプラスに働かない。同じ語学レベルの場合、「少ししか話せない」と認識するか、「少しだが話せる」と考えるかは将来の伸びに大きな違いをもたらす。前者は、消極性が前面に出てコミュニケーションがおっくうになる。後者は多少間違っても堂々と話し続けるだろう。英語に接する機会が増えればネットワークも広がり、さらに話すようになる・・・

結婚披露宴の変

2月10日の日経新聞夕刊、中野香織さんの「ブライダルタキシード 貧相に見える仮装衣装」を読んで、我が意を得たりと思いました。詳しくは、原文を読んでいただくとして。
・・・横山氏によれば、結婚式は新郎新婦の2人が主役であるはずなのに、日本では新郎がおまけ扱い。ゆえに誰も新郎の仮装衣装に疑問を抱かず、式場スタッフも正確な知識をもたないので、世界から笑われる珍奇なブライダルタキシードがいまだに幅を利かせているという・・・
そうですよね。披露宴って、花嫁が主役で、新郎は刺身のつまですよね(両親の知人である来賓(いわゆるえらいさん)が主役のような場もありますが)。
もっとも問題は、タキシードなどを持っていても、着ていく機会が少ないことです。社交の場を作らなければなりません。(この記事に添えられている写真も、日本人男性でなく西洋人のようです。残念)。

ところで、男の黒の略礼服は、戦後日本で発明されたものです。この文章にも出て来ますが、「物資が乏しかった第2次世界大戦後に、アパレルメーカーが提案した冠婚葬祭システム」です。私は、東京の洋服屋さんが発明したと聞きましたが。
長年にわたって定着したので、これを正装だと思っている人も多いです。かつて、後輩の結婚披露宴にダークスーツで出席したら、「礼服を持っていないのですか」と聞かれたことがありました。郷に入っては郷に従うということわざもありますが・・・。

ついでにもう一つ。結婚披露宴で一番嫌いなことは、司会者、特にプロの司会者の話です。
主催者は新郎新婦またはそのご両親・家なのに、その人たちに最大級の敬語をつける。やたらと拍手を強要する。
さらに、のべつ幕なしにしゃべりまくる。少しは、静かにしていてくれよなあ。時々、司会者が主役をやっています。

広辞苑改訂

「広辞苑」が10年ぶりに改訂され、第7版が出ました。広辞苑は、国民的辞典と呼ばれるほど、なじみの深いものです。改訂が、ニュースで取り上げられるほどです。私も、愛用しました。
インターネットでの検索が便利になり、売り上げ部数は半分ほどになっているようです。分厚いので、机の上に置いておくには場所を取るのです。職場では、同じ岩波書店の「国語辞典」を使っています。

広辞苑に載ることが、言葉としての一つの「認知」です。
職員の文章に見慣れない言葉が使われていると、「これって、広辞苑に載っているか? いないのなら、他の言葉に言い換えるか、補足説明を書いてくれ」と指導します。

今回は、約1万項目を追加したとのこと。新語が、社会を反映しています。次のような言葉が、新たに載ったそうです。
東日本大震災、安全神話、限界集落、モラルハラスメント。
どのような事象が生まれたかが、よくわかります。他方で、「上から目線」「立ち位置」などは、新たに生まれた事象ではなく、私たちの認識が変わったということですね。