カテゴリー別アーカイブ: 社会と政治

社会と政治

人口減少への対応

2月25日の日経新聞経済教室は、浦上拓也・近畿大学教授の「老朽化するインフラ 水道、広域・官民連携に活路」でした。

・・・厚生労働省は経営基盤強化を目的に水道法を改正した。主なポイントは、(1)法律の目的を水道の計画的な整備から水道の基盤強化に変更(2)国・都道府県・事業者の責務の明確化(3)広域連携・官民連携の推進の明示――の3つだ。
(1)については、水道が普及・拡大の時代から維持・管理の時代に移行したと宣言したといえる。20世紀は水道をつくるための技術が問われた時代だった。21世紀は水道を維持するためのマネジメント力がより一層重要となる・・・

日本の行政が、明治以来歩んできた「普及・発展」から、「維持・管理」の時代に変わったことが、よくわかります。人口は、2010年から減少し始めました。
さらに、「縮小・撤退」の分野も出てきます。これは、あまり楽しい話ではありませんが、避けて通ることはできません。
普及・発展は、研究者や企業が参入します。しかし、縮小・撤退は企業は「参入しない」ので、行政が責任を持って行わなければなりません。

居心地良い「日本人どうし」を抜け出す

2月28日の読売新聞解説欄、エマニュエル・トッドさん(フランスの歴史人口学者)の「「日本人どうし」抜け出せ」から。

・・・日本はなぜ移民を拒むのでしょう。人種差別主義、あるいは外国人嫌いなのでしょうか。やがて私は問題の核心を理解します。外国人を敵視するのではなく、日本人どうしでいる状態を失うことが怖いのです。日本人どうしの居心地は申し分なく、幸せなのです。日本社会は自己完結の域に達していると言えます。
それは極めて特殊です。フランスの場合、誰もが身勝手で不作法。フランス人どうしでいると不愉快になります。だから移民受け入れに特段の不安はなかった・・・
・・・人口危機は数十年の潜伏期を経て発現し、一気に激化します。合計特殊出生率の極めて低い状態が何十年も続く日本は今や危機に瀕しています。私見では「日本人どうし」に固執する先には衰退しかない・・・

・・・第三に、多文化主義は採用しない方がいい。
欧州ではかつて英国やドイツが多文化主義を唱えていましたが、いずれも「共存」に失敗し、もはや旗を振っていない。ある国で主流の言語・文化は主流であり続ける必要があります。日本は日本語・日本文化を主流として、どうか主義を取るべきです・・
原文をお読みください。

あなたの町の外国人

2月18日の読売新聞が、全国1,741市区町村ごとの外国人割合を、全国地図を色分けする形で載せていました。
5%を上回っている自治体は、43に上っています。5%とは、20人に1人です。小学校のクラスだと、1クラスには外国の子供が1~2人がいることになります。
最も高いのは、北海道の占冠村20.6%、5人に1人です。2位は群馬県大泉町18.24%、第3位は北海道赤井川村12.6%、第4位が東京都新宿区12.56%です。
全体では、中国、韓国、ベトナムの順ですが、近年増加しているのはベトナムからの人のようです。

地方自治体や学校、地域、自治会にとって、この人たちを受け入れることが大きな課題になります。

金融危機対応、日米の共通点と相違点

2月17日の朝日新聞「平成経済・リーマンの衝撃」は、「金融危機対応、日米の教訓は」でした。
しばしば、「欧米は○○だけど、日本は××だ(で出来が悪い)」といった見方がされます。「欧米がお手本、日本は見習わなければ」史観ですね。場合によっては、そんなことはありません。アメリカもヨーロッパも、試行錯誤しながら進めているので、間違いもあります。

・・・2008年9月のリーマン・ショックと1997年秋からの日本の金融危機。これまでは「対応が迅速だった米国、遅かった日本」という図式で日本側に反省を促す論調が多かった。ただ改めて日米を比較すると共通した失敗が多く、米国政府が犯した重大な判断ミスも見えてくる。日本の金融当局で対応にあたった3人の証言から、危機の教訓を探った。(編集委員・原真人)・・・

・・・一方、米国では2008年10月3日、緊急経済安定化法(金融救済法)が成立。政府が7千億ドルの公的資金で不良債権を買い取ることを決めた。リーマン・ショックから18日後のことだ。
これだけ見ると迅速な対応のようだが、すんなり事が運んだわけではない。混乱の末、にっちもさっちもいかなくなって決定したのだ。
最初の法案は9月29日に下院で否決された。これにニューヨーク株式市場が強く反応。史上最大の下げ幅を記録した。株価急落はすぐ世界の市場に波及した。
まずいと思った米議会はすぐに修正法案を上院で可決し、そして下院で改めて成立させた。
市場に追い込まれ、結果的には短期間に公的資金制度を作ったものの、最初からうまくやったわけではなかった。
そもそも米財務省と中央銀行の連邦準備制度理事会(FRB)は、危機に陥った金融機関を大手金融各社に救済させようとしたり、奉加帳方式で資金を集めようとしたりしたが、いずれも頓挫。結局リーマンは破綻し、世界金融危機にまで事態を悪化させてしまった。「日本の失敗を見ているのに教訓を生かせなかった」(五味氏)・・・

・・・「日本ではバブル崩壊から金融危機まで6年かかった。米国では07年のサブプライム・ショック(パリバ・ショック)からリーマンまで1年。米国の方がより速いスピードで危機が顕在化し、その分、対応も一気にやらないといけなくなった」と五味氏は言う。
前日銀副総裁の中曽宏氏(大和総研理事長)は、金融危機とリーマン・ショックを第一線で担当した。その目から見えたのは、日米の金融を取り巻く環境の違いだ。日本は「銀行救済」への視線が厳しく、同時期に接待汚職問題もあり大蔵省(現・財務省)や日銀が強い批判を浴びた。「破綻した銀行の経営陣が逮捕され、自殺に追い込まれたこともあった。日銀や大蔵省でも自殺者が何人も出た」
「米国はまったく逆だった。金融機関トップの多くはそのまま居残り、ウォール街を嫌悪するムードがいっそう高まった。それがトランプ大統領を生む土壌にもなった」・・・

オルテガ『大衆の反逆』

NHKEテレ「100分 de 名著」2月は、オルテガ「大衆の反逆」です。

政治学や法律学では、土地や親族や組織に縛られた中世や封建時代から、近代革命によって、「自由な個人」が生まれることを学びました。これは良いことなのですが、他方でそれが孤立を生むことを、社会学は指摘します。そして、社会主義革命による共産党独裁、ヒットラーによる独裁もありました。
本を読むことで、理解はしたのですが。それを乗り越えたことによって、民主主義は次の段階に進んだと、思っていました。
東西対立の冷戦もありましたが、西欧諸国の安定と経済発展、そして日本の安定と驚異的な経済発展の光の前に、独裁国家や孤独の問題はかすんでいました。

近年になって、ヨーロッパや南米諸国、さらにはアメリカでのポピュリズムや排外主義が強くなることで、「自由主義、民主主義社会での孤独、大衆の暴走」が改めて問題になっています。
「大衆の反逆」は1930年に出版されています。大恐慌が起き、ヒットラーが政権を取る直前です。現在に、当時と似た状況を思わざるを得ません。今回、NHKがこの本を取り上げているのも、そのような理由でしょう。
また、原著を読むこと以上に、このような解説がわかりやすいです。

「民主主義が持続するためには経済成長が必要だ」という説があります。国民は夢を求め、他方で安心と安定を求め、また豊かな生活と生きがいを求めます。そのよう生活ができる社会を望み、その役割を国家に期待します。それが達成されないときに、国民は不満を持ちます。
社会において一つの安定装置は、中間団体です。親族、地縁社会、会社、様々な団体(結社)、政党など、「安心を提供してくれる団体への参加」です。大衆社会は、この中間集団がなくなったときに暴走します。

大衆社会論は、大学時代にいくつかかじりました。『孤独な群衆』『自由からの逃走』、西部邁先生の本も。久しぶりに思い出しました。
引き続き、中間集団の役割を考えています。「結社が支える市民社会」「ポピュリズムの背景、制度不信や中間団体の衰退」「NPO、公共を担う思想の広がり