9月19日の日経新聞に「UAゼンセン、労組で一人勝ち 「非正規」代弁し存在感」が載っていました。
・・・流通・サービス業などの労働組合でつくるUAゼンセンの拡大が続いている。18日に公表した組合員数は約190万人と約10年で3割増えた。非正規の働き手の組織化が進んだほか働き方改善などにも取り組んだことが奏功した。正社員の賃上げに活動の軸を据え続ける主要な産業別労働組合(産別)の退潮が続くなか、存在感は高まる一方だ・・・
・・・UAゼンセンは12年、繊維産業などの労組でつくるUIゼンセン同盟と、小売業などの労組でつくるサービス・流通連合が統合して発足した。2位の自動車総連の約80万人を引き離し、国内最大の産別だ。
日本の労組の組合員数は1994年の1269万人をピークに減少に転じ、2023年には993万人にまで減った。過去10年間、約40の主要産別の7割で組合員が減り、電機連合や情報労連など、1割以上減らした組織も少なくない。そのなかで、UAゼンセンは発足以来、組合員数を約50万人増やし一人勝ちしている状態だ。
躍進の理由の一つが、パートやアルバイトなど非正規の働き手の取り込みに成功してきたことにある。日本の労組は伝統的に終身雇用の正社員が中心だ。国内全組合員に占める非正規の比率は14%(23年)にとどまり、「正社員クラブ」とやゆされることもある。UAゼンセンは非正規組合員の比率は6割超、過去1年に加入した組合員では9割を占める。
ここ20年余り、生産年齢人口の減少が加速するなか、多くの企業が女性やシニアなど短時間労働の働き手を増やした。とりわけ「非正規の基幹化」が進んだのがUAゼンセンの中核を占める小売業や飲食業だ。「職場の正社員比率が低下するなか、『数の力』を強化するため、短時間労働者の組合員化が不可欠になった」(松浦会長)
このため発足当初から「雇用形態間格差の是正」を掲げ、加盟労組に非正規を組合員化する労働協約の改定を促した。UAゼンセンの都道府県支部ごとに目標を設け、地方企業での労組結成も後押しした。昨秋以降もヨークベニマルなどで数千人規模の非正規が組合員となり、串カツ田中などでは新たな労組が誕生した。
23年秋以降、約1万7千人の非正規を組合員に加えたスギ薬局ユニオンでは、原則、正社員に限定していた積み立て有給休暇制度などの対象を非正規に拡大。小沢政道中央執行委員長は「短時間従業員の不満を把握し解消することで離職防止にもつながる」と強調する。
UAゼンセンのもう一つの特徴は賃金交渉以外の活動の広さだ。伝統的に日本の労組の最大の役割は春の賃上げ交渉にあったが、2000年代にはデフレの長期化などで主要企業の労組はベア要求を凍結。13年に政府が企業に賃上げを要請した「官製春闘」でベアは復活したが、要求水準は依然として低く、「労組不要論」すらささやかれた。
UAゼンセンはこの間、職場のジェンダー平等や育児・介護の両立支援など総合的な労働条件の改善に交渉の範囲を広げ、19年には他産別に先立ち、デジタル化などに対応したリスキリング(学び直し)も労使交渉のテーマに掲げた。
今年は小売業などの現場で深刻化する「カスタマーハラスメント(カスハラ)」対策にも力を入れ、顧客の迷惑行為に直面した従業員向けの相談窓口の整備や専門研修の実施を経営側に求める。賃金だけでなく働き手の多様な悩みに対応することが、労組の存在価値を高め、さらなる組合員の獲得につながる好循環が生まれている・・・