昨日26日は、幹部科の卒業式でした。約2か月間の教育訓練を終えて、77人の学生が、各消防本部へ帰っていきました。
卒業式では、一人ひとりに、私から卒業証書を渡すのですが、その際に密かな楽しみがあります。まず、壇上で演台をはさんで、学生と向き合います。そして、証書を渡す前と渡した直後に、学生の顔と目を見ます。学生からすると、校長からにらみつけられる、に近いでしょうが。
それぞれ顔つきは違いますが、みんな「良い顔」「よい面構え」をしています。私をにらみ返す眼力にも、力が入っています。これで、彼らは立派な幹部を務めてくれると、安心し、うれしくなるのです。もちろん、制服姿、背筋は伸び姿勢もよいです。
成績優秀者には、別に表彰もします。表彰状を受け取る際の、学生の晴れやかな顔も、良いですね。
校長にしか味わえない、楽しみです。
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消防大学校・特別な訓練
消防大学校では、NBC・特別高度救助コースの学生が、今日は屋外訓練場を使って、化学テロの訓練をしていました。NBCは、原子力、生物、化学災害です。地下鉄サリン事件を、思い出してください。大学校では、このような特殊な学科もあります。使う機材も特殊で、救助の方法も特殊になります。火事の場合は少しでも早く救出しますが、化学テロの場合はむやみに近づくと、消防隊員が巻き添えになってしまいます。人が倒れていますが、何が起こっているかわからないのです。
授業では訓練が多くなりますが、今日は学生が企画した訓練でした。全身を覆う防護服に身を固め、被害者役の学生やダミー人形を救出します。
先週は、幹部科の学生が、特別教室で広域応援の指揮訓練、屋外訓練場と建物を使って指揮訓練をしていました。頭でいくら学んでも、実際にからだが動かないと、実践に役に立ちません。しかも、一人でなく、大勢の隊員とたくさんの部隊を、動かさなければなりません。
そして、現場は混乱し、正確な全体像はつかめません。訓練では、あわてた住民が間違ったことを消防隊員に伝えます。住民役の学生は、なかなかの演技でした。実際の現場では、混乱した被害者、野次馬などで、もっと大変でしょう。
学生企画訓練は、授業の総仕上げ・卒業訓練です。彼らは、卒業が近づいています。
危険物の取り扱い
今日は、消防大学校で、危険物科の卒業式がありました。
爆発したり激しく燃える物質(火薬、高圧ガスなど)、自然発火したり、引火しやすい液体(ガソリンなど)は、危険なので、取り扱いに規制がかかっています。身近なところだと、ガソリンスタンドや石油コンビナートなどがあります。「危」というマークをつけたタンクローリーを、見かけることもあると思います。
火事になったりすると、その消火が難しいのです。そのための専門課程が、大学校にあります。厳しい授業を終えた34人の卒業生が、地域と日本の安全のために、活躍してくれることを期待します。
市町村トップの危機対応能力講座
今日は、消防大学校の危機管理・防災教育科の一つとして、「トップマネージメントコース」を行いました。市町村長や副市長・危機管理監などを対象としたもので、大規模災害時の対応能力向上が目的です。専門家による講義と図上訓練とで、構成しています。
吉井博明東京経済大学教授のお話を、私なりに膨らませると、次のようになります。
大規模災害時には、被災現場がどうなっているかわからない=情報不足と情報の混乱。被害情報がないのは、電話が通じないからかもしれません。それは、しばしば同時に多発しています=全体像がわからない。しかし、待っていられない=急を要する。そして大災害時には、対応能力が不足している=消防職員では足らない。といった制約の中で、どこにどれだけの職員を送るか、どのような支援を求めるか、市民にはどのように伝えるかなど、首長の責任は重要です。
通常は、部下職員が情報を上げ、また案を持って伺いに来ます。しかし、災害対策では、待っていられないのです。また、市長が、市役所や市内にいない時もあります。その時は、誰が代行するか。
備えと訓練しか、方法はありません。先生は「過去問から学び、模擬試験で鍛える」と、表現されました。そして、首長も職員も入れ替わっていきます。
訓練にも、図上訓練と実動訓練があり、それぞれに、いくつかの手法があります。阪神淡路大震災以来、関係者の関心も高まり、より洗練されてきています。日野宗門先生の方法は、状況予測型図上訓練=イメージトレーニング方式です。参加者が一定の条件を与えられ、状況を予測し、するべき対応を考えるという方法です。
上級幹部科卒業式
今日は、消防大学校で、上級幹部科の卒業式がありました。消防長(各市町村消防本部の長)や部課長、署長といった最高幹部級の課程です。平均年齢54歳。期間は12日間と、短めです。科目も、人事管理・危機管理・危機管理広報・惨事ストレスといった管理職ならではの科目と、状況創出型図上訓練・消防応援受援といった運用訓練などからなっています。
消防の応援・受援というのは、近年クローズアップされてきました。消防が自らの市町村の区域を越えて応援に行くことは昔からありましたが、遠くまで出かける、広域で応援することは、阪神淡路大震災が、一つのきっかけです。
ところで、応援と受援(応援を受ける)では、受援が難しいようです。各消防本部は、応援の経験はあるのですが、受援の経験はまずはありません。しかも、大災害の時には、たくさんの部隊が、各地から集まってくるのです。被災地ですから、自らの部隊を運用するだけでも大変です。その上に、受け入れるのですから。おわかりいただけると思います。
近年では、各地で、そのような事態を想定した訓練を、行っています。