カテゴリー別アーカイブ: 消防・防災

行政-消防・防災

消防大学校の授業、学生の目的意識

消防大学校では、学生に、授業内容や講師を評価してもらうほかに、卒業前に、感想文を書いてもらいます。その中に、次のような感想がありました。
・・教室では一番前の席であったが、今まで、こんなに前の座席で良かったと思ったことはない。高校や大学の学生だったころには、考えられない心境である。教官や講師の話し方、細かな動作も、間近で見ることができた。遮るものがないことで、講義に非常に集中できた。後ろの座席の学生が、気の毒に感じた。講師のすべての言動が、まさにすべてお手本である・・
これは、新任教官科(新しく県の消防学校の教官になる職員のための課程)なので、自分が教官になって教壇に立つことを想定して、授業を受けています。その点を割り引いても、学生に教室の前に座る方が良いと考えてもらえる授業が、理想ですね。
少し話は違いますが、学校の英語の授業は身が入らないのに、お金を払っていく英会話学校は熱心だ、という話を聞いたことがあります。これは、英会話学校へ行くのは、それだけの目的を持っているからでしょう。
なお、授業では、学生がそれぞれ教官役で模擬授業をして、それをビデオに撮り、同僚に評価してもらうということもしています。自らの話し方をビデオで見ることは、すごく勉強になります。

救急車の出動・続き

昨日(救急車の出動、消防大学校の機関誌「消防研修」を紹介しました。その中に、樋口範雄東大教授の論文があります。「救急活動と法の役割~奈良地裁判決を契機として~」です。
2009年4月27日に出た判決です。事案は、2006年11月に起きました。警察署の駐車場で、未明に男性が顔から血を流し酔った状態で、警察署員に保護されました。駆けつけた消防の救急隊員が、緊急性がないと判断し、男性の家族が到着したので、家族が男性を自宅に連れて帰りました。その後、男性は脳挫傷などがわかり、昏睡状態になりました。男性が、消防組合を相手取って提訴し、地裁は消防組合に1億4千万円の支払いを命じました。
いくつか興味深い論点があり、先生も指摘しておられるのですが、1点だけ紹介しておきます。
裁判で争われた大きな争点は、搬送すべき義務があったかです。そして、判決が敗訴で確定すると、救急隊員は次回から、軽傷であっても、なるべく搬送するように行動するようになるでしょう。しかし、誰でも運ぶとなれば、軽傷者が運ばれ、その間に後回しにされた重傷者が手遅れになる場合もあります。一方で、救急車にも限りがあるのです。
損害賠償請求裁判は損害の補填が目的ですが、その結果が、救急現場の問題解決にならないのです。先生はこの点を指摘し、解決策も提示しておられます。なお、公刊物として、樋口先生の「医療と法を考える―救急車と正義」(2007年、有斐閣)が参考になります。

救急車の出動

消防大学校は、「消防研修」という専門誌を発行しています。平成22年3月号は、「消防と救急医療」が特集です。
救急車は、皆さんもよく見かけるでしょう。救急車は全国に約6,000台あります。平成20年の1年間に、510万件も出動し、468万人を運んでいます。6秒に1回の割合で救急車が駆けつけ、国民の27人に1人が運ばれている計算になります。国民の期待に応えるように、この分野でも改善が続けられています。救急救命士という専門資格を持った職員が乗るようになり、救急車も大型になりました。
しかし、救急車を呼ぶ人が増えていること、救急車を呼ぶほどの状態でないのに救急車を呼ぶことで、本当に運ばなければならない人を運べない場合があること、受け入れ病院が決まらず時間がかかる場合があることなどの、問題が出ています。
ちなみに、1991年には、出動件数は約290万件でした。約20年の間に、これだけも増えているのです。事由の内訳では、交通事故(約60万件)などは横ばいか減っているのですが、急病が140万件から310万件に倍増しています。病人がそれほど増えたとは考えられないので、救急車を呼びやすくなったということでしょう。
軽傷の方には救急車でなく自分で病院に行ってもらうこと、そのために電話で相談にのることや、病院との連携を改善することなどが、取り組まれています。本号では、法令改正の概要、医療から見た問題点、現場での実情と改善方法、判決の問題点など多面的に解説しました。結構良くできています。内容が専門的なのと、各消防本部や関係機関にしか、配布していないのが残念です。

消防の国際交流

今日は、消防大学校に、中国政府公安部消防局長(日本の消防庁長官に相当)と、北京市公安局消防局長(日本の東京消防庁消防総監に相当)がお見えになりました。日中消防交流の一環です。
2008年5月の四川大地震の際には、日本からも国際緊急援助隊が、駆けつけました。これまで大学校では、中国や韓国からの消防職員も、受け入れています。また、東京消防庁を始め、いくつかの消防本部はいろんな国に技術援助に行っています。

消防大学校の卒業生

消防大学校の在校生と卒業生が会員となっている「学友会」があります。連絡と親睦の組織です。3月号の会報ができました。
卒業したばかりの会員が教育訓練中の苦しみ楽しみを綴った文章や、卒業生の活動報告のほかに、同期会の便りもたくさん載っています。大学校は全寮制なので、私生活まで一緒になります。共に苦労した人たちの同期会は、活発なようです。消防職員の現役だけでなく、退職なさった方、しかも高齢の方も、奥さん同伴で楽しんでおられます。
全国から集まった学生ですから、持ち回りで幹事をすると、各地を訪ねることができます。楽しそうな写真が、たくさん載っています。お元気でご活躍ください。