カテゴリーアーカイブ:政治の役割

憲法破壊勢力となった護憲派

2019年10月25日   岡本全勝

東大出版会PR誌『UP』10月号、井上達夫先生の「立憲主義を救うとは、どういうことか」から。
1997年の朝日新聞に載った鶴見俊輔さんのインタビュー「憲法改正に関する国民投票を恐れてはいけない。その機会が訪れたら進んでとらえるのがいいんじゃないか」を紹介した後。

・・・公正な政治的競争のルールの支配に権力抗争を服せしめる企てとしての法の支配と立憲主義の要請は、立法闘争だけでなく憲法闘争にも貫徹されなければならない。日本国憲法は、憲法闘争を公正に裁断するルールとして、九六条で憲法改正手続きを定めている。改憲派のみならず護憲派もまた、九六条の憲法改正プロセスに従って、九六条を改正すべきか否か、いかに改正すべきかについて国民投票により国民の審判を仰ぐ責任がある。
しかし、護憲派は「負ける試合はしない」とばかり、九六条のプロセスの発動自体に反対し、挙げ句の果て、「国民投票」自体を「危険なポピュリズム」として糾弾しさえしている・・・

・・・いまの護憲派は政治的御都合主義に開き直り、この要請(法の支配と立憲主義の要請)をまったく無視している。それにより、護憲派は残念ながら、いまや「憲法破壊勢力」に変質してしまっている・・・

政治をどう循環させるか

2019年10月16日   岡本全勝

10月13日の読売新聞、五百旗頭薫・東大教授の「安倍1強後を読み解く 政治の循環 首相の責務」から。

・・・政治の歴史をどう理解し、未来をどう考えるか。私は「循環」がキーワードになっていくと考えています。一方向に良くなったり悪くなったりするのではなくて、複数の政治のあり方をうごめくようなイメージです。
この概念で日本政治を見ると、長期的には三つのフェーズを循環する可能性が高いと思います。今のような「自民党優位」と政権交代を含めた「複数政党の競合」、自民党が崩壊して他党もうまく機能しない「空位」です。
空位は暗い見通しであり、避けなければいけませんが、一番まずいのは循環を止めることです・・・

・・・安倍首相は比較的安定した政治基盤の下で中央省庁を強力に束ね、意欲的な外交を行っています。ただ、後継者を育てて「自民党優位」の状況をうまくつなげていくという循環のための準備は十分ではありません。野党は「多弱」なので、自民党が混乱し支持を失えば、「大空位時代」に行き着きかねない困った状況です。
野党が弱いと、政権内の緊張感は維持できません。首相は後継者だけでなく、野党も育てなければいけないと思うんです。国会で反論の機会を与えて、より実質的な論争をする。衆院解散権の行使は自制して野党に政策を練らせて論戦する。それくらいの度量が必要だと思います・・・

極めて低い日本の公的教育支出

2019年9月12日   岡本全勝

9月11日の日経新聞が「公的教育支出、日本また最低 OECD16年調べ 負担、家計頼み鮮明」を伝えていました。
・・・経済協力開発機構(OECD)は10日、2016年に加盟各国が小学校から大学に相当する教育機関に対して行った公的支出の国内総生産(GDP)に占める割合を発表した。日本は2.9%で、比較可能な35カ国のうち、3年連続で最も低かった。
OECD平均は4.0%。最高はノルウェーの6.3%で、フィンランドの5.4%、アイスランドとベルギーの5.3%が続いた。公的支出のうち高等教育の割合も日本は31%で、OECD平均66%の半分以下。教育支出の多くを家計が負担している傾向が続いた・・・

グラフが付いているので、ご覧ください。OECD35か国で最低とは、耳を疑う数字です。しかし、それが実態です。

日本は教育熱心な国だと、私たちは思っています。子育て家庭にとって、教育費は大きな負担です。
しかし、学校教育には、力を入れていません。それを、学校以外が支えています。塾などです。学校教育だけですむ国と、学校教育だけでは不十分で塾などに行かせる国と。
芸術やスポーツの養成のための塾ではなく、学校での授業を補うための塾が普通になっています。そして多くの子供が通い、一大産業となっています。他方で、家計の事情で塾に通えない子供がいて、格差を生みます。学校教育だけで、普通の教育が完結してません。
日本は、学校教育が、親や社会の期待にこたえていない国です、変だと思いませんか。

経済政策の課題

2019年8月3日   岡本全勝

7月29日の日経新聞経済教室、小峰隆夫・大正大学教授の「参院選後の安倍政権の課題(上) 社会保障改革議論 超党派で
・・・参議院選挙が終わった。今回の選挙結果は直接的に安倍政権の経済政策に修正を迫るものではない。だがこれを機に、選挙前から引き継がれてきた課題や選挙中に各党が繰り広げた議論を踏まえて、これからの経済政策に求められる基本的な方向を3つ指摘したい・・・

・・・第1は非常時型の実験的・冒険的政策から平時の正統的な政策への回帰を図ることだ。バブル崩壊後の約30年の日本経済は資産価格の暴落、不良債権問題、デフレ、金融危機、2008年のリーマン・ショックなど、次々に未知の課題に直面した。いずれも前例のない出来事だったため、対応は実験的な試行錯誤の連続とならざるを得なかった。
その結果、ゼロまたはマイナスの超低金利が続き、日銀が新規発行される国債を買い占めるとともに一般企業の大株主となり、先進国中最悪の財政状態になった。財政金融政策の姿は持続不可能なものといえる。
一方で、経済の現状はもはや異例の政策対応を必要とするような異常時とは言えない・・・

・・・第2は生産性の向上に本気で取り組むことだ。長期的にみた日本経済の最大の課題は、生産年齢人口の減少(人口オーナス=負荷)という流れに対抗して、生産性を引き上げ、持続的な成長を実現することだ・・・前述の期間、日本の労働力人口は0.7%増加する一方、労働力人口当たりの生産性は0.5%の上昇にとどまる(図参照)。主に動員型で対応してきたということだ。生産年齢人口が減ったのに労働力人口が増えたのは、それまで労働力人口ではなかった女性、高齢者、外国人が参入したからだ。
こうした動員型の対応はいずれ限界に達するから持続可能ではない。また新たに参入してきた労働力は、賃金や生産性の低い非正規労働が中心だった。これが、雇用情勢が逼迫しているにもかかわらず平均賃金があまり上昇せず、平均的な労働生産性も高まらない主要な理由の一つだ。今後は労働者1人当たりの生産性の上昇を主要な目標として成長戦略を練り直すべきだ・・・

・・・第3は超党派で財政・社会保障改革に取り組むことだ。持続的な財政・社会保障の構築が日本経済にとって最重要の課題だと誰もが分かっている。だが参院選での各党の議論は、とても問題の解決に向かっているとは思えないものだった・・・
・・・財政・消費税・年金などの問題は、真剣に議論すれば国民負担を伴わざるを得ない。こうした問題を政争の具、選挙の争点にすると、負担を嫌がる国民にこびる公約が乱発され、問題解決からは遠ざかるばかりとなる。参院選でこのことが改めて確認されたといえる・・・

野党、政権交代への道筋

2019年7月26日   岡本全勝

7月26日の読売新聞解説欄「野党 体勢を立て直すには」、砂原庸介・神戸大教授の発言から。

・・・投票率が50%を切った背景に、有権者が投票先を選ぶ手がかりが乏しいことがあるのではないか。各政党のラベル(名前)は本来、投票の有力な手がかりになるはずだ。しかし、野党が非常に弱く分裂しており、野党のラベルは手がかりにならなかったのだろう。
候補者についても、その属性が決定的な手がかりにはなりにくくなっている・・・

・・・他方、障害やLGBT(性的少数者)などの属性が手がかりとして注目される候補も少なくなかった。当選した彼・彼女らが、国会に当事者としての視点を持ち込むことは極めて有意義だ。ただ、マイノリティーの当事者だけがその集団を個別的に代表できるとする発想には注意が必要かもしれない。個人の属性と政策への志向を結びつけるだけでなく、政党という集団と、それが生み出す政策への志向を通じて「多様性」を表現すべきだろう。マイノリティーの代表を選択することだけが「多様性」への配慮だとされると、有権者も戸惑うのではないか・・・

・・・野党にとって安倍首相は打ち勝つべき敵かもしれない。しかし、その反対を意識しすぎて、自らの立ち位置が不明になっていないか。政権がやることは全て悪いとすると、あなたがたが政権を取ったらどうなる、と同じ質問がくる。「モリカケ」に象徴される不透明性など政権の問題はあるが、0か1かの対比ではなく、政権党と野党とを並べて優劣を測る共通の尺度を示せていない・・・