カテゴリーアーカイブ:政治の役割

威勢が良いけど・・・

2025年6月25日   岡本全勝

6月20日の朝日新聞に「不信任案、関税理由に回避 野田氏、首相会談後に表明」が載っていました。政治には駆け引きがつきものですが、威勢がいいだけではねえ・・・。詳しくは記事をお読みください。

・・・立憲民主党の野田佳彦代表が19日、内閣不信任決議案の提出を見送った。早い段階から意向を固めていたが、提出見送りは22日投開票の東京都議選や7月の参院選を控え、「弱腰批判」を招きかねない。日米関税交渉を理由にダメージをかわせると踏み、石破茂首相から交渉状況の説明を受けた直後のタイミングを選んだ。

「不信任案を出すなら、国民民主党や日本維新の会に共同提出を求め、一緒に政権を担おうと言う。彼らは乗れるわけがないだろう」。野田氏は今月に入り、側近議員から「維新や国民民主に瀬踏みをさせたらいい」と進言される中、こんな言葉を漏らした。
6日の記者会見でそれを実行に移し、「他の野党も不信任を通したいなら、共同提案するつもりはあるのか」と言及。それまで、国民民主の玉木雄一郎代表が「政権交代を目指す野田氏として出すべきではないか」、維新の前原誠司共同代表も「『首』は取れるときに取りに行かなければ」などと挑発的な言動をしてきたが、野田氏の発言で両党はトーンダウン。立憲幹部は「瀬踏みがうまくいった」とほくそ笑んだ。

野田氏は19日の会見で提出見送りの理由に「政治空白の回避」を挙げた。だが、実際には不信任案を出せる状況にはなかった・・・

中道政治

2025年6月11日   岡本全勝

5月21日の朝日新聞オピニオン欄「「中道政治」の時代」、中島岳志・東京科学大学教授の「リスクと価値、新たな対立軸に」から。

――国民民主党など、「中道」とされる政党が支持されています。
「僕は中道という概念を積極的には使いません。中道は『右と左』という概念の中にありますが、もう右か左かの図式が成立しない時代で、中道の意味が非常にあいまいになっている」
「安倍晋三政権で、政治がかなり右に傾斜したといわれますが、当時でも自民党のコアな支持層は2割から3割しかいなかった。イデオロギーで支持している人は1割以下でしょう。一方、左派を支持している人はもっと少ない。右・左のイデオロギーから距離のある人が、中道支持に見えるのだろうと思います」

――なぜ「右と左」の図式が成り立たなくなったのでしょうか。
「この変化は、冷戦終結後、左派が崩壊していったことで起きたのでしょう。日本だけではなく、欧州でも『右派対左派』という二分法の枠組みが機能しなくなり、近年では『極中道』の政党が伸びている」
「政治の課題が変化し、右・左といった1本の対立軸で並べることができなくなっています。政策の立ち位置が違う政党を『中道』とくくってしまうのは、むしろ有害だと思います」

――どんな基準で政党を選べばいいのでしょうか。
「僕は、複数の対立軸が必要だと思っています。政治の大きな仕事のひとつはお金の配分です。配分の問題をめぐっては、リスクの個人化と社会化という対立軸があります」
「リスクの個人化とは、基本的には自己責任で、自分でリスクを取る。行政サービスは小さくするという考え方です。社会化は、いろいろなリスクを国民全体で負担する。当然、行政サービスは大きくなります。リスクへの姿勢で、政党の立ち位置を判断できます」
「もうひとつは、価値の問題をめぐる対立軸、リベラルとパターナル(父権的)の対立です。リベラルは個人の自由を尊重するのに対し、パターナルは力を持った人間が価値の問題にも介入していく。従来の『リベラルか保守か』や『右か左か』という図式より、こちらのほうが対立が明確になります」

現金給付「効果なし」7割

2025年5月12日   岡本全勝

4月22日の日経新聞に、「現金給付「効果なし」7割 消費税減税、自民支持層は評価二分」という世論調査結果が載っていました。

・・・日本経済新聞社とテレビ東京は19〜21日の世論調査で、トランプ米政権による関税引き上げや物価高への対策についてたずねた。国民への現金給付やポイント付与は「効果があると思わない」と答えた人が74%を占めた。「効果があると思う」は21%にとどまった。
現金給付は夏の参院選をみすえた「バラマキ」との批判がある。ほとんどの世代で効果なしの回答が7割を超えた・・・

渡邉雅子著『論理的思考とは何か』2

2025年4月28日   岡本全勝

渡邉雅子著『論理的思考とは何か』の続きです。
91ページ以降に、「ディセルタシオンの誕生ー市民の論理と思考法」が書かれています。これは、日本の作文教育、学校教育だけでなく、法学部での教育と比較して、深く考えさせられます。

・・・ディセルタシオンは、自律して考え判断できるフランス市民(国民)育成のために18世紀末に起こったフランス革命後、100年余りの試行錯誤の中から創られた。フランス革命は人権宣言を理念的な柱とし、法の下の平等、人民による人民のための政治を宣言して「政治的主体としての市民(国民)」を誕生させた。これ以降、フランスは統治者である国民の育成という大事業に取り組むことになる。そのため公教育の目的は、憲法をも真理として扱わず事実として教え、完成している法律の称賛ではなく、「この法律を評価したり、訂正したりする能力を人々に附与すること」を求めることとした。近代の学校が国家を支える労働者と国家防衛のための兵士の育成を第一の目的としたのに対し、フランスはフランス革命の理念の実現を公教育の第一の目的にしたのである・・・

・・・実際にディセルタシオンの登場によって「暗記と模倣」が中心だった伝統的な教育は、生徒自らが構想し批評する教育へと大きく変化した・・・
・・・こうした歴史に照らしてディセルタシオンの構造を見ると、政治領域には欠かせない「既存の法律を評価したり訂正したりする能力」を育成し、「自立的に考え破断すること」「批判的にものを見ること」が論文構造に否応なく組み込まれていることが確認できる・・・
参考「できあがったものか、つくるものか

政権に入らない野党の打算

2025年4月17日   岡本全勝

4月4日の日経新聞経済教室は、境家史郎・東京大学教授の「少数与党下の政策、問われる有権者の判断力」でした。

・・・なぜ少数内閣が存在するかという問題は、なぜ閣僚ポストと一定の政策実現を約束されるにもかかわらず政権入りを拒む政党があるのか、という問題と言い換えることもできる。ノルウェー出身の政治学者カーレ・ストロムによれば、これは政党がより長期的な視点から得失計算すると仮定することで理解できる。
政権入りに現時点で一定の利益があるとしても、次の選挙で政権運営全体の責任を問われるリスクを負う。このリスクが大きいと判断する政党は容易に政権入りに応じない。国民民主党や日本維新の会が閣内協力を否定するのはそのためで、不人気の自民党と一蓮托生になりたくないのである。
以上の議論は、裏返せば現野党の連合による政権交代が実現していないことの説明にもなる。国民民主党や維新の会にとって立憲民主党と組むことは、自民党と組むこと以上にリスキーと見られているのである・・・

・・・この点で参考になるのがオランダ出身の政治学者アレンド・レイプハルトの、多数決型民主主義とコンセンサス型民主主義を対置する議論である。多数決型とは英国のように過半数議席を得た単独政党に権力を集中させるタイプを指す。コンセンサス型は欧州大陸諸国に見られるように、統治への幅広い参加や政策への広範な合意が目指される。
伝統的に政治学では多数決型、すなわち英国式の二大政党制を理想視する向きが強かった。しかしレイプハルトの分析によると、実際には様々な経済指標でコンセンサス型は多数決型と同等以上の結果を出している。またコンセンサス型では相対的に汚職が少なく、選挙の投票率が高く、国民の民主主義への満足度も高いといった傾向がある。

この議論を踏まえると今回、自公政権がコンセンサス型の政権運営を強いられることになったこと自体を悲観する必要はない。「103万円の壁」にせよ、高校授業料無償化にせよ、これまで政権内に異論の強かった、もしくは関心を持たれにくかった政策争点が野党の影響を受け、この半年間に動き始めている。
夫婦別姓やガソリン暫定税率の議論も進むかもしれない。個別の政策への賛否は様々あるとしても、長らく惰性で続けられてきた政策が変化する可能性が高まったのは多くの有権者の期待するところだろう。

ただし、レイプハルトはあくまで国際的な「傾向」を示したにすぎない点にも留意しなければならない。多くの政党が政権入りせず影響力を発揮する政治のあり方には、やはり短所もある。ひとつの大きな懸念は政策決定の責任の所在が不明確になることである。
すでにこの半年に見られたように、財政全体に責任を負わない各野党が個別に多額の費用を要する政策実現を要求し、財政規律が緩みつつある。その結果、仮に今後インフレがさらに進むとしよう。そのときどの政党が責任を問われるのだろうか。少なくとも与野党は互いに責任をなすりつけ合うことになるだろう・・・