カテゴリーアーカイブ:政治の役割

お願い対応は法に基づかぬ統治招く懸念

2020年6月11日   岡本全勝

6月8日の日経新聞経済教室、大屋雄裕・慶応義塾大学教授の「次の危険への備え、平時に 危機下の民主主義」から。詳しくは、原文をお読みください。

・・・多くの先進国では、それが日常とは異なるという点に注目し、戦争に対応するための法制度を危機へと当てはめる対策がとられてきた(表参照)。日本でも戦前の体制では、非常時に軍隊による治安維持を可能にすること(戒厳の布告)が憲法上想定されていた。
だが周知の通り、日本国憲法はそうした体制が引き起こした問題点への反省を契機として、平和から戦争へと移行することを厳に禁じるという特徴を持っている。軍隊や警察による強制的なロックダウン(都市封鎖)が実施されることなく、ただ自制と協力を訴えかける「お願い」のもとで、ある程度の日常生活が維持され続けるという、特に欧米の目から見れば奇妙な対策がとられた。その背景には、そもそもそれ以上の対応を認めた制度が存在しないという事情があった。

だが、それでも今回の危機は何とか抑えられたからいいだろうと、そうした手法を手放しに肯定することが許されるだろうか。
本来はある程度の自主的な判断や弾力的な対応が許容されるはずのお願いのもとで、自粛への過大な社会的圧力が生じた面もあっただろう。さらにはお願いをすら超える水準の対応を他者に強制して回る「自粛警察」と呼ばれる人々を生んでしまったことも事実だ。お願いの範囲や強度が適切だったか、補償や経済的支援など負担に相応する配慮がなされたかを検証するための制度が存在しないことも問題として指摘できる。

それでも建前上は平和の中にとどまることができ、それ以外の状況を認めない憲法の枠組みを傷付けなかったことに満足する人もいるかもしれない。しかしその結果、法の外側の圧力の存在を許容することによりかえってコントロール不能な状況を生み出さないか、様々な人権侵害や政府権限の拡大が放置される結果に陥らないかということは、再検討する必要がある。
むしろ危機を安易に戦争へと移行させないために、危機時にも決して手放せない自由や人権とは何か、逆に言えば政府にどこまでは許してもいいかについて、平和時に事前に定めておく必要があるのではないだろうか。あるいはその中で、ただちに憲法自体の改正に飛びつかないとしても、これまでの制度や理解のあり方について修正を図る必要が出てくるかもしれない・・・

ジャレド・ダイアモンドさん、コロナ危機対応の要点

2020年5月12日   岡本全勝

5月8日の朝日新聞、「ジャレド・ダイアモンドさんに聞く」「新型コロナ 世界の一員アイデンティティー作る好機」から。新型コロナ危機にあたって重要なポイントを、5つ挙げておられます。

第1は、国家が危機的な状況にあるという事実、それ自体を認めること。危機の認識がなければ、解決へと向かうことはできません。
第2は、自ら行動する責任を受け入れること。もし政府や人々が祈るだけで行動しなければ、問題は解決しません。
第3に、他国の成功例を見習うこと。第4に、他国からの援助を受けること。
第5に、このパンデミックを将来の危機に対処するためのモデルとすること。

・・・欧州には、「有益な助言であれば、例えそれが悪魔からのものであっても従うべきだ」という言葉があります・・・
詳しくは原文をお読みください。

改革のやりっ放し

2020年4月3日   岡本全勝

3月30日の読売新聞、松岡亮二・早稲田大准教授の[1000字でわかる教育格差]「政策提案「改革のやりっ放し」脱却を」から。

・・・日本の教育改革は「現状把握」を十分せずに根拠薄弱な目標を掲げ、予算不足のまま強行することで学校現場を疲弊させ、効果の測定をしない、という迷走を繰り返してきた。
教育は自身の経験と見聞で尤もっともらしい議論をすることができる上、成果はすぐには表面化しない・・・医者が診察と検査をせずに病名を断定し、何となく良さそうな投薬・手術を行い、経過観察をしないのと同じである。

この教育「改革のやりっ放し」を止めるために、具体的にできることは多い。たとえば、
(1)全国学力調査の改善(抽出にして保護者と教員も調査)、
(2)同一の子供を長期的に追跡する大規模パネル調査の実施、
(3)貧困率や教員非正規率など学校の特性を示すデータの作成・更新、
(4)審議会など政策議論時に全国調査による現状把握を義務化、
(5)制度変更前にデータ取得計画作成、などである。
これらの「現状把握」に基づき、一部の地域でランダム化比較試験などによる実践・政策の効果検証を行い、どんな「生まれ」の子供に「何」が効くのか研究知見を蓄積した上で、効果のある対策を広域で実施することができれば合理的かつ効率的だ・・・

政治家の自己愛と他者への共感力

2020年3月16日   岡本全勝

3月14日の朝日新聞オピニオン欄「宰相の言葉」、水島広子・精神科医の発言から。

・・・政治家は自己愛が強いと言われます。「自分は特別な存在」という性格そのものは、私は全否定しません。人を酔わせる演説も、自己愛が強くなければできませんから。自己愛は多くの政治家にとって不可欠なエネルギー源です。
しかしもう一つ、まっとうな政治家に欠かせない条件があります。それは、他者への共感力です。他者とは、自分とは異なる意見を持つ人たちも含みます・・・

世界の警察官の負担、人と金

2020年3月8日   岡本全勝

2月28日の朝日新聞国際欄に、「米国社会に漂う非介入主義」が載っていました。
ここで紹介するのは、そこに付いている表です。「米同時多発テロ(2001年)後の対テロ戦争関連犠牲者」(表の3)

それによると、総計77万人~80万1000人。内訳は、米軍が7千人ほど、民間契約業者が8千人ほど、現地の軍と警察が17万人ほど、現地の民間人が33万人ほど、敵軍が26万人ほどです。
また、これまでアメリカが支出した金額が、5.4兆円と出ています。