カテゴリーアーカイブ:政治の役割

綸言汗の如し

2026年9月15日   岡本全勝

「総理のSNS投稿は行政文書か2」に、総理の発言も、職員が書き取って、組織的に共用し、持っているものなら、行政文書に当たると書きました。そして、「その中には政策の基礎となった総理指示などもあり、行政文書の中でも重要ですから、1に準じた扱いをすべきでしょう。なお、この場合は行政文書ですから、総理自身も持ち帰ったり、後で直したり廃棄したりすることはできません。総理も「自らの発言は記録として残る」と自覚して、発言するべきです」と書きました。

「綸言汗の如し」という言葉を思い出しました。
元は中国古典の言葉で、皇帝が一旦発した言葉(綸言)は取り消したり訂正することができないという意味です。日本では、天皇の言葉について使われました。
他方で、「過ちては改むるに憚ること勿れ」という格言もあります。

若い日本人の持つ能力の生かし方

2026年9月14日   岡本全勝

9月9日の各紙が、世界各国の学習到達度調査(PISA)の結果を報道していました。例えば、朝日新聞「数学・科学、世界上位を維持 読解力やや低下 15歳国際調査」

・・・経済協力開発機構(OECD)は8日、世界の15歳を対象に、2025年に実施した学習到達度調査(PISA〈ピザ〉)の結果を公表した。日本の順位は「科学コンピテンシー(課題解決力)」が5位(前回22年調査で2位)、「読解力」が4位(同3位)、「数学的リテラシー」は5位(同5位)と上位を維持した。
PISAは00年から3~4年ごとに実施。3分野に即した文章やグラフを読み解く問題で、知識や技能を実生活の課題解決に活用する力を測る。25年の調査には91の国と地域から約76万人が参加し、日本では高校1年生約6500人が受けた。

OECD加盟国(38カ国)全体の科学コンピテンシーの平均得点は、前回と有意な差はなかったが、読解力や数学的リテラシーは下がった。一方、日本が低下したと認められるのは、516点から503点に下がった読解力のみで、OECD加盟国の中では初めて全分野で1位となった。
文部科学省は、課題解決能力の育成を重視した学習指導要領の定着や、1人1台の学習端末環境の整備が、好成績につながったと分析している。
日本、OECD全体ともに、AIを学校の学習で適度に採り入れている生徒ほど科学コンピテンシーの得点が高い傾向がみられた。ただ、日本は学校の勉強におけるAIの利用頻度がOECD加盟国で最も低かった。
今回は3分野とは別にプログラミングツールなどの技術を使った課題解決能力を測る調査も行われた。日本の順位は4位で、OECD加盟国では1位だった・・・

記事では、さらに詳しく説明されています。上位にはいますが、課題もあるようです。
ところで大きな疑問は、高校生までは世界でもこんなに優秀なのに、日本経済はなぜダメなのでしょうか。
・この調査で測る能力と、仕事での能力が異なるから
・高校生までは優秀だけど、大学生になると勉強しないから優秀でなくなる
・成人も優秀だけど、その能力を生かし切れない会社や社会が悪い
・・・・

総理の指示書と閣僚の評価

2026年9月12日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第29回「所管のみ、目標なき役所」(7月10日配信)で、次のようなことを指摘しました。
「役所の各部局には、「任務と所管」は定められていても、「目標」は与えられていない。各省設置法や組織令には任務のほか、所掌事務が詳しく書かれていますが、その目標は書かれていない。何が課題なのかを考え、それら課題に優先順位をつけ、いつまでにどのように進めるのかを考える。そして、大臣や首長の了解を取って、部下を指揮して解決に導く。それが幹部の役割だ」

9月9日の日経新聞に「内閣改造、首相指示書が占う「高市人事」」が載っていました。「指示書」と聞いても、知らない人が多いでしょう。総理は内閣発足時に、各閣僚に何をしてほしいかを紙に書いて渡します。それが指示書です。
総理の政策の重点は、国会での所信表明演説や施政方針演説で示されますが、それを各大臣に示したものと言えるでしょう。各省からすると、各省設置法による任務(各省とも広範です)の中で、この内閣が何に力を入れるかが示されることになります。

内容には具体的なものとそうでないものが含まれているようです。しかし、このように項目として指示が出されると、どこまでそれを達成したかが評価できます。もっと知られてもよいことであり、そしてこれによって閣僚を評価するべきです。

ところで、この指示書は役所の文章としては、どのような位置づけにあるのでしょうか。各大臣からは、職員に対しどのようなかたちで指示が降りてきているのでしょうか。
また、これも秘密事項以外は国民にわかるように、総理官邸のホームページなどに載せればよいと思います(すでに載っていたらごめんなさい)。「高市早苗首相の18閣僚への指示書、全文明らかに」(2025年10月23日づけ日経新聞)

総理のSNS投稿は行政文書か3

2026年9月7日   岡本全勝

「総理のSNS投稿は行政文書か2」の続きです。総理の発言などの保存についてです。

3 総理のその他(行政の長として以外)の発言
与党総裁としての発言など。これは、現在の行政文書の定義には含まれないでしょう。しかし、総裁として公約を掲げ、それを総理として実行するなら、これも行政にとって重要な資料です。高市総理のSNSの一部も、これに含まれるでしょう。
総理や大臣に関して、法律を作るか閣議了解などで、これら政務に関する資料を保存するようにしてはどうでしょうか。国立公文書館や国会図書館憲政資料室で保管し、一定年限後に公開するとよいでしょう。

4 総理の個人的記録
総理の日記などです。これも、3と共に重要な資料です。アメリカの大統領博物館などでは、保存・展示されています。総理が歴史に名を残すために、これらも保存・展示する仕組みをつくりたいものです。

理想は官邸内に担当官がいて、総理のところに入った資料、総理や秘書官のメモ、SNS原稿などをまとめて、任期終了後に公文書館に送るなどすると、内閣のよい記録になるでしょう。アメリカのケネディ大統領は記録に残すために、若き政治学者のアーサー・シュレジンジャー・ジュニアをホワイトハウスに補佐官として入れ、情報に接する権限を与えました。その記録を基に書かれたのが『ケネディ――栄光と苦悩の一千日(上・下)』(河出書房、1966年)です。

総理のSNS投稿は行政文書か2

2026年9月6日   岡本全勝

「総理のSNS投稿は行政文書か」の続きです。
世間では「公文書」と言いますが、現在はその用語は使わず、定義を変えて「行政文書」と言っています。「政府に「公文書等」はあるが「公文書」はない」

「高市首相のXへの投稿は行政文書に当たらず」では、「「歴史に名を残す」「歴史の審判を受ける」ためにも、行政文書として保存すべきだと思うのですが。将来、伝記や自伝を書かれる際にも、重要な資料となるでしょう」と書いたのですが、識者の意見も聞いて考えました。一律に行政文書として扱うのは(総理の発言などを含めて)、実務上も合理的ではないと思います。次のように分類してはどうでしょうか。

1 かつての公文書に当たるもの
定型化された意思形成過程についての文書。各省協議、法制局、審議会、閣議請議など、かつての「決裁書のついた公文書」。これは、役所としては残さなければならないものです。公文書管理法で、役所に作成と保存の義務がかかっています。いずれ公文書館に移管され、公開されるのでしょう。

2 それ以外の行政文書
現在「行政文書」としているもののうち、1を除いたもの。行政文書の定義は、①職員が職務として作って、②組織的に共用し、③今現在役所が持っていることです。これらは残すかどうか判断されますが、多くの場合、短期間で廃棄されているようです。私は、組織にとって都合の悪いやりとりや記録でも、後世に伝えるために、あるいは「保身」のためにも、残すべきだと思うのですが。「都合が悪いから廃棄する」ようでは、公務員への信頼は落ちるばかりでしょう。

それはそれとして、総理の発言も、職員が書き取って、組織的に共用し、持っているものなら、これに当たります。職員が総理に説明した資料や、総理の行動記録などもここに入ると思います。その中には政策の基礎となった総理指示などもあり、行政文書の中でも重要ですから、1に準じた扱いをすべきでしょう。なお、この場合は行政文書ですから、総理自身も持ち帰ったり、後で直したり廃棄したりすることはできません。総理も「自らの発言は記録として残る」と自覚して、発言するべきです。
この項続く