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行政-政治の役割

政治の役割12

9日の朝日新聞連載「小泉時代とこれから・中」は、竹森俊平教授の経済でした。
景気回復は構造改革の成果だと政府は強調します、との問に「不良債権問題を片付け、『失われた10年』に決着を付けたのが最大の貢献だ・・経済財政諮問会議に情報を集中し、経済政策で指導力をはっきり示したのは小泉首相の功績だ」。
構造改革の評価については、「経済を停滞から脱却させたが、構想力、長期的なビジョンが欠けていた。例えば、国民が安心できる徹底した社会保障制度の改革ができなかった。もう一つはアジアの経済外交だ。経済連携協定(EPA)を中国やインドに広げるなど経済ネットワークを構築できなかった。従来の政治手法や制度を壊すことに存在意義があったから、その意味では過渡期の人と言える」
「格差を是正する所得再分配政策をどうするのかは世界的な問題だ。どの国にも解決策はなく、思考停止状態・・むしろ、小泉政権は再分配政策と決別する方向に動いた・・政府は財政赤字で余裕がないと、再分配を事実上放棄した」
「いまや国内総生産の8割はサービスセクターで生産され、特に金融・情報など都市部で作るサービスが重要だ。他方、製造業はグローバルに展開され、次々アウトソースされる。政府は官主導でなく資本の論理や力を借りて経済の転換、調整をする方向に変えたが、小泉首相でなくてもそうなっただろう」
「首相の指導力が発揮できる政策決定プロセスが意識されてきた。しかし、状況が変われば元に戻る可能性もある」

日経新聞は8日から連載「日本を磨く、小さい賢い政府を」を始めました。第1回は行天豊夫氏でした。
「民にできない仕事は極端にいえばない。国防を民に任せるケースさえある。国民が料金を払い民に任せるか、税金を払い官にやらせるか。どちらが費用対効果に優れているかで、官と民の分担を決めればいい。官の役割は『国民が必要とすることだが、民にはできないこと』に尽きる。今の日本で必要なのは経済、外交、軍事、理念、文化、技術(知識水準)の各分野のバランスを取って、国の競争力を高めることだろう」
「官尊民卑は国民にとって幸せではない。明治以来、あるいは戦後の官僚主導の国家運営に、現状では大きなプラス点は付けられない。政は国民に働きかけ、指導力を発揮する。官は戦略を効率的に実行し、国益を実現するのが望ましい」(2006年8月9日)

10日の日経新聞「小さく賢い政府を」第2回は、佐々木毅教授の「イフ重ね政策に深み」でした。
役所中心の従来型の政策決定でこれからもやっていけますか、という問には「高度成長期のように少々無駄をしても大丈夫という時代ではなくなった。今までは部分最適の積み上げみたいな政策で、体力に任せてなんとかやってこれた。今は目標のはっきりした政策を効果的に出すことが必要になっている。これまでの調整型の決定の仕組みを相当変えないといけなくなる」
「政策を作るには、いろいろなイフ(IF)、もしもを重ねながら、綿密に詰める作業をしないといけない。それを政府も与党もしているように思えないのが、極めて深刻なことだと思う」
「本当の政策論議は思い切った議論をしなければならないのに、外に出すことを前提にすると議論に深みがなくなる。一つの発言の背後に百、二百の発言があるべきだろう。いざという時のいろいろなことを考えているように見えない。だから『想定外』の領域が大きくなる」
「大目標を作ろうとしてもいつの間にか限りなく些末になる。細分化してあちこちに投げ、役所が料理して出しているのが実態だ」

10日の朝日新聞「小泉時代とこれから・下」は、藤原帰一教授の外交・安保でした。
アジアで中国の求心力が飛躍的に高まった間、日本は何をしていたのでしょう、という問に、「空白だったと思う。各国が前より豊かになり、日本の経済協力が行き詰まった。経済援助に頼るアジア外交に代わるものを作らなければならなかったのに、政策の空白が続いた」
「ASEAN諸国との連携強化も必要。日本は債権国として各国の経済に直接的な影響力を持っている。直接投資の規制緩和、日本の労働市場の開放などで主導権を取ることで、ASEANを引き戻せる。ASEANは中国を恐れてもいる。ASEANとのパイプを利用し、中国を牽制する力に使うべきだ」(8月10日)

11日の日経新聞「小さく賢い政府を」第3回は、北城かく太郎さんの「挑戦の機会いつでも」でした。
「ここに至るまでに小泉政権が果たした役割はやはり大きい。財政出動に期待しないでくれ、民自身の努力で立ち直ってくれと発信し続け、民間に覚悟を決めさせて経営改革の背中を押した」
「創業支援では民間がお金を出すのを後押しする税制をつくってほしい・・・国や自治体からもらう税金で出資してもらうのでは、創業者は痛みを感じにくい。一般の個人からの出資ならその人の顔が思い浮かぶので懸命に努力する・・」(8月11日)

12日の第4回は、田中直毅さんの「優先順位国民に示せ」でした。
「先進国の政府の機能に大きな変化が生じている。米国も一国の経済情勢だけで金融政策を決められない。グリーンスパン前FRB議長の市場との対話は、ウォール街との対話ではなく、国際社会の重要な意思決定者に米金融政策の目標や優先順位について伝えることを意識していた・・・日本もグローバル経済のなかで、財政規律や金融秩序でこれだけは満たさなければいけないというものが出てきた」
「政治家も磨かれたが、企業も国民も磨かれている。政府に依存してはいけない、要求してばかりいるといずれ我が身に跳ね返る、という因果関係がわかった・・霞ヶ関が作った案に永田町が粉をふりかけるだけの昔ながらのメニューは、完全に排除されるだろう」
「政府のぜい肉がとれたと国民が認定して初めて、どういう形で政府の規模を決めるのか、どこまでを民間の自助努力に求めるのかの議論ができる」(8月12日)

17日の日経新聞経済教室「回顧・日本経済」は、加藤寛教授の「小泉改革、背後に公共選択。政府の失敗を是正」でした。(8月17日)

先日書いた「30年後の日本」について、ある人との会話です。
「30年後を考える前に、今のおれたちは、何を次の世代に残しているのかなあ」
「まずは、巨額の借金。これはひどい贈り物です。プラス面では、世界有数の工業力、社会資本ですかね」
「うまくいっていないアジアとの関係も、引き継ぐぞ」
「でも、それは僕らの前の世代もでしょ。親父たちの世代から引き継いだ負の遺産です」
「そうだな、お金は出すが人は出さないという評価は、前の世代がつくった。ただし、経済大国、工業国家という実績と評判もつくってくれた」
「そうですね。メイド・イン・ジャパンを、安物でないブランドにしたのは親父たちの世代です。それで言うと、その世代は、二度と戦争をしないといって、実際半世紀の間戦争をしなかったんですがね。アジアからの評価はそう見てくれませんね。そちらの方は、努力の割には、ブランドを作り上げるのに成功しなかったと言うことですかね」
「半世紀の間、戦争をしなかったけど、それは努力の成果ではないと見られているんだな」
「もう一つ前、じいさんたちの世代は、何を残してくれたのですかね」
「焼け跡と孤児、食うや食わずの生活。アジアの人たちを巻き込んだ悲惨な戦争、日本はひどい国だという評価だな」
「どこまで考えて、やっていたのですかね」
「そこが問題だね。でも、次の世代から、おれたちもどう言われるか」(8月18日)

21日の日経新聞経済教室は、青木昌彦教授の「資源・環境対応で世界主導」「技術・価値観を革新、市場・民主制と同時進化へ」でした。
「ここ10年ほどの間、日本の政治、経済、社会には、個々には小さくとも多様な変化が生じ、その累積効果は社会システムの質的変化を予感させうるほどのものとなった。
従来のシステムの下で人々は、生涯帰属する組織、それを業界・職業ごとに包括する団体、関連する監督官庁と族議員とタテに連なる関係に包み込まれて、自分の社会的位置や生活水準の生涯展望にある程度安定した予想を持ちえたのだった。
今、「改革」の政治的宴がおわり、にわかに格差社会の懸念が一部の政治家、マスコミ、学者などから声高に発せられるようになったのも、そういう安定化の仕組みの揺らぎを反映するのだろう」
「従来のシステムが感覚的に保障した安定性はそれなりに好ましいものであったが、それはまた行き過ぎると個人のモチベーションを弱め、外部環境変化に対するシステムとしての適応力を弱める」
「むしろ移りゆく環境に適応する個々人のチャレンジを側面から助け、組織の設計やガバナンスのありかたに関し多様な組織のあいだの自律的な競争を促し、行政府はそうした競争の当事者から一歩退いた公正なレフェリーの地位にとどまるという仕組みが、増大する複雑性と不確定性によって特徴づけられるこれからの社会の一つの行き方だろう」
「そして、政党は、将来世代と現在世代の間の利益裁定という意味合いを持つ財政の再建、中央と地方の間の規律ある関係の構築、競争のルールづくりとセーフティネットのデザインなど、国のかたちづくりのプログラムをめぐって、選挙民の支持獲得を争う役割に徹するべきだろう」。

22日の経済教室は、吉川洋教授の「人間力で不断の価値創造」でした。「新しい付加価値はどこから生まれるのだろうか。情報力といい技術といい結局のところそれを生み出すのは人間である。こうした「人間力」を経済学では「人的資本」と呼んでいる。歴史をふり返っても、人口規模の大きさが国際競争力の源泉になったことはない。重要なのは人の数ではなく、国民一人ひとりの力、すなわち「人間力」なのだ」

政治とは過程

(政治とは過程)
6日の読売新聞「地球を読む」は、佐々木毅教授の「日本外交の課題、対北戦略練り直しを」でした。
「北朝鮮のミサイル発射をめぐる目まぐるしい安保理での外交交渉は、外交についての素晴らしい教材を日本国民に提供してくれた。特に、日本政府の主張がどのような形で取引され、変形され、一定の結果につながるかを如実に実感させられたことに加え、日本だけでなく、どの国の外交力にも可能性と同時に限界があることがはっきりした」
「アメリカにも中国にもできないことがある。その中で各国政府がどのような位置取りを選択するか、目まぐるしい役割交代をどうこなすかに「可能性の術」としての外交の要諦があるが、日本外交はほとんど一つの役割しか果たせなかったこともまた事実である」
「当初の日米案が中国とロシアの反対によって修正を余儀なくされたにせよ、安保理全会一致の北朝鮮非難決議が成立したことの意味は大きい。今や中露も、そして韓国も従来以上に北朝鮮政策の見直しを迫られざるを得なくなった・・・」
(日本の外交デビュー)
「日本の外交論議は長い間憲法解釈論議と混線し、外交は外務官僚を中心とした極めて一部の人間だけが関与してきた(政治家の関心の低い)政策領域であった。ところが小泉政権の下で事態は変わった。「小さな政府」の名の下に利益配分型政治が抵抗勢力と名指しされ、昔日の存在感を失うとともに、外交問題が政治家にとって新たなリソースとして浮上してきたからである・・・」(8月7日)
8日から朝日新聞は、連載「小泉時代とこれから」を始めました。「5年間の小泉政治は日本をどう変え、次の政権にどんな課題を残したのか」。第1回目は、佐々木毅教授の政治と政党です。
「結局、再生したのは民間セクター、今までは民間が困っていたらすぐに手を差し伸べて助けた。それをしないことで、民間セクターの体質改善、強化を促した。これに対し、政府のあり方については規模を小さくする議論はあるが、どう変えるかがない。とりあえず小さくするというだけ。郵政や道路公団の改革には手を付けても、政府本体の構造改革は行われていない」
「言い換えれば、政府の競争力が上がっていない、ということだ。そういう意識が政権にあるのかも疑わしい。ただ小さくするというだけで、競争力に関するアイデアは見あたらない」
「グローバリズム化が進むのに任せるだけでは、国民の支持は得られない。グローバル化を進めるだけでいいのなら、政府は何のために存在するんだ、という問題が出てくる。政府としては『存在する意味があるんだ』ということをいわなきゃいけなくなる」
「5年間で政治家の質は向上したのか、とうことがある。問題は極めて深刻で、政党の責任は重い。新しい人たちが登場することは結構だが、どこでどういうトレーニングを受け、どういう基準で選ばれて議員や閣僚などになるのか、甚だ心もとない状態だ」(8月8日)

 

気になった記事から

7月12日の読売新聞「論壇」、菅野覚明教授の「若者に国を託そう」。
「今日、あらためて国家やナショナリズムが問われているのには、たぶんそれなりのわけがあるのだろう。世間の噂を信ずるならば、戦後日本の体制が根本的につかえなくなってきたからということらしい。だが、もしそうであるとするなら・・国家論の本当の主体は、未だ明確な自己表現を持っていない、20代、30代の人たちであるはずなのだ。明治以来、転換期の国家像に展望を拓いてきたのは、功罪はともかく、幕末の志士にせよ・・いずれも長老たちの理解を絶した若い力であった。たぶん同様に、もし今という時代が本当に転換期であるなら、次の時代を切り拓く力は、今どきの若者のわけのわからなさの内にこそ秘められているであろう」
「次の世代への信頼なしに、国家論など成り立ちようがないのである」
8月6日日経新聞別刷り「あっと、データ」、世界価値観調査2000から。戦争が起きたら国のために戦うかという問に「はい」と答えたのは、ベトナム94.4%、中国89.9%、韓国74.4%、ロシア63.8%、アメリカ63.3%、ドイツ33.3%、日本15.6%。
8月2日の朝日新聞夕刊「文化」、「厳しい若者の対日意識。中国で80年以降生まれ調査」。日本人の一般的なイメージは、勤勉75%、有能69%、強い62%。人間性が良い10%、悪い44%。信頼できるが15%、信頼しがたい53%。日本、米国、韓国、フランスなどの企業に同じ条件で就職が決まった時に、日本企業を選ぶ人は6%、全く思わないが58%、あまり思わないが18%。

増税を問う

政府・与党が、歳入歳出一体改革の歳出削減骨子を決定しました。例えば27日の日経新聞によれば、概ね次の通りです。「2011年度に国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化するため、11兆4000億~14兆3000億円の歳出削減を実施。黒字化に必要な16兆5000億円程度の7割以上を歳出削減で賄い、残りの2兆~5兆円は増税などで穴埋めする。
政府・与党は名目経済成長率3%を前提に今後の歳出の伸びを試算。2011年度に借金をせずに行政サービスの経費を賄う基礎的財政収支を黒字化するには、16兆5000億円程度の財源を捻出(ねんしゅつ)する必要があるとし、これを歳出削減と歳入増で解消する方向を打ち出した」。
その決定過程が、連日報道されました。参議院側が原案を修正したことなど、政治学的にも興味深いものでした。詳細は報道に譲るとして、私はこれが決定され実行されると、日本の政治にとって画期的だと思います。それは次の2点です。
1 国民に初めて負担をお願いする
今回の決定では、増税は正面から書かれてはいません。しかし、2011年までに埋めるべき金額が16.5兆円であり、歳出削減額を決めれば、残りは増税となっています。今回の重要なポイントは、実質的に増税を決めたことにあるのです。
日本はこの半世紀、国民に本格的増税をしたことがありません。正確には、ガソリン税やたばこ税を増税していますし、所得税・法人税での減税廃止はあります。年金や健康保険の保険料を値上げしたこともあります。しかし、基幹税目で本格的な増税をしたことがないのです。消費税は、導入時は増減税同額、5%に引き上げたときは減税先行でした。大平内閣の時に、一般消費税導入を企画しましたが挫折しました。たぶん、これが唯一の増税のお願いだったでしょう。この半世紀は、増税しなくても済んだのです。また、増税が必要になったのに、国債でつけ回しをしたのです。
そもそも、代議制民主主義とは「代表なくして課税なし」というように、国民に負担を問う代わりに意見を述べるための制度です。利益を配分するだけで負担を問わない政治とは、お気楽な政治だったのです。
これについては、拙著「新地方自治入門」p299を読んでください。
今回決まった数字は幅のあるものですし、今後の経済情勢で変わるでしょう。しかし、それはたいした問題ではありません。すなわち、歳出削減が厳しすぎると国民が考えるなら、削減額を小さくすればいいのです。その代わり、増税額が増えます。必要な穴埋め額が決まっているのですから、歳出削減と増税は、どちらかが減れば他方が増えるのです。それを国民に選んでもらうのです。今回は、この三段論法を国民に提示し、国民に選択してもらうこととしたのです。
2 自民党主導での負担決定
これまで自民党(野党も含めて政党)は、利益の配分は行ってきましたが、負担の配分は避けてきました。それが、与党政治家主導で増税に進むとなると、これは日本の政治にとって大きな転換点になるでしょう。
これまで政策立案は内閣、実質的には官僚が担って来ました。その案を与党が賛成するか、修正することで成案にしました。しかし、今回は新聞で伝えられる限りは、与党の政策責任者が議論をとりまとめました。もちろん、これが民主主義の基本です。国民が政治を付託したのは政治家であって、官僚ではありません。
また、今後の実施過程においても、政治家がとりまとめたことで、円滑に進むと思われます。
(6月27日)
昨日、歳出削減と増税の関係を書きました。今朝28日の朝日新聞に、次のような記事が載っていました。「小泉首相が22日の経済財政諮問会議で『歳出をどんどん切りつめていけば『やめてほしい』という声が出てくる。増税してもいいから必要な施策をやってくれ、という状況になるまで、歳出を徹底的にカットしなければいけない』と発言していたことがわかった」。諮問会議議事要旨では、11ページです。(6月28日)
朝日新聞は28日から、「検証、構造改革。第2部小さな政府」を始めました。第1回目は、「理念なき一律カット」です。(7月29日)
(政策評価)
27日の日経新聞「瀬戸際のWTO交渉・下」は「影薄い貿易立国。工業品輸出、好機逃す」でした。日本の農業市場開放が進まない=農産物の輸入を自由化しないため、相手国が工業製品の輸入を自由化しない=関税を下げないのです。一対一の関係だけでなく、多角的交渉ででも主導権を取ることができません。輸出で稼いでいる日本は、自由貿易体制の大きな受益者なのですが。
これまでも国内農業者を保護するために、輸入制限で守るほかに巨額の公金を投入しています。「国内農業の競争力強化」はずーっと言われてきたことです。長く言われていて、まだ言われるということは、どこかに問題があるのでしょう。どなたか、日本の農業政策の評価をしてくれませんかね。また、農業を守ることと、自由化による国益との比較評価も。農水省と経産省が合体して産業省になると、どんな判断を下すでしょうか。
私は、日本の農業政策は、「農業」政策ではなかったのではないかと疑っています。それは、農家政策であっても、業としての農業を育てなかったのではないかという疑問です。
ほかにも、農業高校や大学の農学部はたくさんあるけど、卒業生のほとんどは農業に就かないこと。新規農業従事者より、JAや農水省・農政部などへの新規採用者の数の方がはるかに多いこと。農業予算は巨額だけど、その多くは農業土木業者にわたっていること、などなど。いろんな疑問があるのです。(7月29日)
31日の日経新聞経済教室では、成田憲彦教授が「政策決定過程変えた経済財政諮問会議」を書いておられました。従来の自民党政治を、冷戦構造と高度経済成長という条件で成り立った、保守政治と分配の政治と位置づけ、その条件が失われたこと。小泉政権は、この自民党的政策と施策決定手続にノーを突き付けたこと。その際に、本人のパーソナリティーの他に、小選挙区制と経済財政諮問会議があったこと。経済財政諮問会議は、議院内閣制のものとでは異端の政策機関であることなど、を指摘しておられます。わかりやすい分析です。

ソフトパワー

このHPでも何度か、ソフトパワーの重要性について述べてきました。麻生外務大臣の演説「文化外交の新発想」が、それを主張していることを教えてもらいました。
「本日ここには、コンテンツ業界の皆さんが大勢おいでのことでしょう。皆さんこそは、現代日本の文化を世界に広めていく、新時代の担い手だと思っております。例えば中国の街で、若い人が行くオタッキーな店を覗いてみるとよくわかります。日本のアニメグッズ、ありとあらゆるフィギュアが、所狭しと並んでおります。Jポップ、Jアニメ、Jファッション。これらの競争力は、ミッキーとドナルドには悪いですが、実際聞きしに勝るものがあります。
皆さんが好きでやってきたこと、外務省はおろか、誰に頼まれたのでもなく打ち込んでこられたこと。それが着実に、日本のファンを増やしております。若い人たちのハートを、中国始め、いろんな国でつかんでいます」
「漫画の話をし始めますと、私の場合きりがなくなるのでここらでやめておきますが、外交というものは外交官同士、秘密の交渉をし、おしゃれな会話をして進めることだという古い固定観念は、この際きれいさっぱり捨ててください。
『日本』とか、『ジャパン』と聞いて、ぱっと浮かぶイメージ。それが明るい、暖かい、あるいはカッコいいとかクールなものですと、長い目で見たとき、日本の意見はそれだけ通りやすくなります。つまり、日本の外交がじわりじわり、うまく行くようになるわけです」
「日本のブランド力は決して弱くありません。それどころか、最近米国のある大学とイギリスのBBCが、世界のいったいどの国が『良い影響力を持っているか』についてアンケートを取ったところ、調査対象33カ国中、31カ国までが、日本を挙げたという事実があります。これだけ圧倒的多数の国に支持された国というのは、この調査による限り他にありません。日本はダントツの1位です。
国を、一種の企業のようなものと見て、そのものずばり、ブランド力を計る調査というものもありまして、英国の専門家がやっております。それでも日本はドイツの次、フランスの上で、第7位です。アジアからは唯一、10位以内に入る国です。こういう土台のうえに、古いものから新しいものまで、日本文化をいろいろとアピールしていかねばならないと、思っております」
「日本文化を外国に広めていく王道は、なんといっても日本語の学習者を増やすことです。皆さん世界中で日本語を勉強しようとする人の数は、増えていると思われますか、減っていると思われるでしょうか。
日本経済は長いこと低迷したので、それに連れて日本語に興味を持つ人も減っただろうと思いきや、実は増えております。外務省関連の独立行政法人、国際交流基金の調べによると、1990年に98万人だった世界の日本語学習人口は、2003年に235万人と、倍以上になっております。
なぜかと思ったら、テレビから流れてくるアニメの主題歌が、日本語なのです。それで自然に、日本語に関心をもつ子供たちが増えてきた…。日本のポップカルチャーが、今までとはまったく違う関心を日本語に対して生んでいるからなのです」
これは、デジタル・ハリウッド(略称デジハリ)という、デジタルコンテンツの学校で行われた演説です。デジハリは、私も一度見学に行ったことがあります。皆さんなじみがないでしょうが、間違いなくお世話になっています。CGグラフィックで作られたテレビコマーシャルの多くが、この学校関係者の作品だそうです。
大臣演説の画面に添えられている「プレゼン用データPPT」は、楽しめますよ。PDFの方は動きませんが、PPTはクリックするかページダウンを押すと画面が動きます。これも、デジハリの学生さんの作品のようです(スライドをとばし先に行くとき、終わるときは右クリックしてください)。