日本経済新聞が27日から、連載「ニッポンの農力、自立するために」を始めました。環太平洋協定(TPP)が政治課題になり、農業保護が問題になったのです。
その記事によると、農業就業人口は、ピークであった50年前から8割以上も減り、今年は260万人と全就業者に占める割合が3%台に低下しました。農業総産出額は8.5兆円と、最も多かった1984年に比べ72%に低下しています。農林水産業がGDPに占める割合は、1960年には13%でしたが、現在では1.5%です。記事では、「国内農業は失われた50年」と形容しています。
稲作は50年前に比べ、生産性が大幅に向上しました。これだけ農家が減っても、米は余っています。しかも、減反を4割もしています。その点では、成功したのです。しかし、国外産に比べ、まだ低いのです。問題は小規模なままで、大規模化が進まなかったことです。兼業農家が、片手間でできるようになったのです。日本の農業問題は、稲作とその他の作物に分けて考えなければならないこと、そして問題のカギは農地です(2007年6月23日の記事)。
「政治の役割」カテゴリーアーカイブ
行政-政治の役割
国家のパワー再考・相手を動かす力と左右されない力
民主制の機能、政治エリートの選別
10月17日日経新聞「民主主義を考える」は、宇野重規東大准教授でした。
・・代議制は国民の代表を通じて民意を反映させるためのものだが、同時に政治エリートを選別し、競争させる仕組みでもある。現在はまさにこの仕組みが機能不全を起こし、指導力のある政治家をうまくつくり出せないでいる。
問題は、政治エリートと呼べる人が今の日本にいるかどうかだ。政治学者はこれまで一部のエリートが政治を独占することを批判してきたが、今や批判する相手が見えにくくなっている。
政党が自らの価値観に沿って人材を養成して「さあどうですか」と人びとの前に差し出すのが政党政治だったのに・・ただ首相を替えていくだけでは、遠からず差し出す営業品目がなくなる・・
詳しくは原文をお読み下さい。
山本健太郎君の著書・政界再編研究
山本健太郎君の著書『政党間移動と政党システム-日本における「政界再編」の研究』(2010年、木鐸社)が、出版されました。
1993年の自民党分裂と自民党下野から、2009年の政権交代まで、日本では政界再編(政党再編)が頻繁に起こりました。なぜそのようなことが起こったのか、国会議員はどうして政党を移動したのか。最大野党である新進党は3年で解党したのに対し、同じ民主党はなぜ10年にわたって存続し政権についたのか。
「政策を同じくする政治家が集まる集団が政党である」といった、甘いものではないことは、国民は知っています。では、政治家は権力追求のために集まったのか。次の選挙で再選されやすいように、その政党に属したのか。選挙の時にお世話になったので、ボスに付いていくのか。
政治部記者や評論家、そして政治家本人も、それぞれに評論的説明はおっしゃいます。それに対しこの本は、理論的分析とともに、1990年以降の全政党、全衆議院議員について移動を調べ上げデータ分析した力作です。
特に巻末に付いているそのデータは、新聞社も顔負けのものでしょう。何をもって政党とするか(実はこれも難しいのです)、いつをもって離党と判断するか(元の所属政党が直ちに離党届を認めず、しばらくしてから除名する場合もあります)、スキャンダルや首長選挙に出るための離党を除いたりと、これは大変な作業です。
さて、著者が述べているように、自民党は政権追求志向の強い議員が集まっていましたが、民主党に自民党からの移動議員を受け入れるインセンティブは乏しく、移動は困難です。すると、自民党の凝集力は消極的に維持されることになりますが、野党時代が続くと、凝集力は失われます。
一方、これまで政権を目指すために、政策をあいまいにしてきた民主党にとって、政権を獲得したことで政策を選択しなければならなくなります。それは、幅広い政策の議員を抱えている民主党にとって、分裂リスクに直面することになります。著者は、このように、現在の二大政党制は必ずしも安定したものではない、と指摘しています。
山本君は、私が東大大学院で客員教授を勤めた際の院生です。私の授業では、不慣れな講師(私)を助ける、3人の塾頭がいてくれたのですが、その一人です(このぺージに出てきます)。みんなそれぞれ立派になって、うれしいですね。私は何の貢献もしていないのですが、著書のあとがきに名前を載せてもらいました。恐縮です。
島国と大陸国家
朝日新聞10月7日夕刊、関曠野さんの「対中外交、真の戦略的互恵へ。島国と大陸、違い理解を」から。
・・戦後日本は海外領土を失って、純然たる島国になった。そして戦後の繁栄は、外敵の脅威がなく貿易に好都合といった島国の利点をフルに生かした成果だった。安全保障は米国にゆだね経済に専念するというのは、まさに島国の戦略だった。そして皮肉にも、その成功が島国の民であるという国民の意識を希薄にしてきた・・
まず島国と大陸国家の相互理解は容易でない。島国には外敵による侵略や征服の脅威はないが、他方では海上封鎖で兵糧攻めにされる不安がある・・この島国の海洋に関する敏感さを、中国は理解しているだろうか。
だがその一方で、日本は大陸国家の悩みを認識しているだろうか。大陸では国境は政治の産物であり人口は極めて流動的なので、大陸国には島国の安定性、完結性、求心力がなく、国家は社会に作用する遠心力に悩まされる。ゆえに巨大大陸国家は宿命的に不安定で脆弱であり、旧ソ連のあっけない崩壊はその実例である。そこで社会の遠心力に対抗して集権的一元的統治システムを維持することが、大陸国家の至上命令になる。そして大陸国には、統治システムを安定させるために国境を接する周辺諸国を自分のシステムに順応させようとする傾向がある・・
正確には、原文をお読み下さい。