カテゴリー別アーカイブ: 復興10年

石巻市の災害遺構

先日、東松島市で講演をした際に時間があったので、石巻市の災害遺構を見てきました。
石巻南浜津波復興祈念公園は、国が3県に作った祈念公園の一つです。周辺を含め、国と県と市が分担して、整備し管理しています。「みやぎ東日本大震災津波伝承館」「石巻南浜津波復興祈念公園
私は構想過程から見ていて、中心施設もできたときに見ています。今回も、見てきました。見学者も多いようです。

石巻市震災遺構門脇小学校」に入るのは、今回が初めてです。津波に襲われ、火災が発生した生々しい状態が残されています。また、学校に避難した人たちが、機転を利かせて裏山に避難した状況もわかります。

当時を知らない人には、良い勉強の場となっています。
街は見事に復興し、歩いているだけでは、あの被害がわかりません。石巻市の中心から近くにあります。石巻に行かれたら、ぜひ立ち寄ってください。

舞台ファーム専務の独り言

このホームページでしばしば紹介している、原発被災地で農業支援をしてくださっている「舞台ファーム」。ありがとうございます。
専務取締役の伊藤啓一さんが、ホームページで「ひとりごと」の欄を作られました。専務といっても、ネクタイを締めてソファーに座っている職業ではありません。「47歳で、この世界では若手」の農業従事者です。

「日本農業の歴史や、我々も含めた農家の考え方、農業関連の法律や農政、植物生理に関すること、海外の農業と日本農業の違い、そしてこれからの農業について」説明してくださるとのこと。
農業従事者数は、全産業の3%まで減っています。農業現場を知らない人も多いでしょう。ご関心ある方は、お読みください。
レタスのキモチ」(9月26日)も面白いですよ。

国会事故調査委員会のその後

9月10日の朝日新聞オピニオン欄に、東京電力福島第一原発事故に関する国会事故調調査統括を務めた宇田左近さんへのインタビュー「原発事故後、変わらぬ日本」が載っていました。

東京電力福島第一原発事故で時限設置された国会事故調査委員会のメンバーが今夏、「同窓会」を開いた。日本社会に突きつけた課題が、干支が一巡してもほとんど改善していないことを憂えた集いの名は「変わらぬ日本と変わる私たち」。調査実務を統括した宇田左近さんに、問題の所在と解決の糸口を聞いた。

――2011年の原発事故を受け、政府・国会・民間・東電と、いくつもの事故調査委員会ができました。その中で国会事故調は、どんな存在でしたか。
「当事者からの独立性は、政府と東電の事故調は弱く、国会と民間の事故調は強かったといえます。一方で調査権限は、民間と東電は弱く、政府と国会の事故調は強く広範だった。つまり、独立性と調査権限を兼ね備えていたのが国会事故調でした。だからこそ、その結論は海外からも信頼されました」
「委員10人は各党推薦で、私を含め調査実務を担った約80人は全員民間からの参加でした。政治家や政府関係者による接触も制限し、独立性を担保。調査権限では、いざとなれば国会に国政調査を要請できることが効き、広く協力が得られました」
「省庁の審議会と違い、結論ありきではありません。調査結果に基づき、委員全員が全体に責任を持つ形で報告書をまとめました。その結果、歴代の規制当局と東電の間で、津波や地震、過酷事故などの対策を見直す機会が何度もあったにもかかわらず、してこなかったことから『人災』だったと結論づけたわけです。また、いつしか規制当局が圧倒的に情報量が多い電力事業者の言いなりになってしまっていたことを『規制の虜』という言葉で指摘しました」

――その後への提言もありましたね。
「提言は(1)規制当局に対する国会の監視(2)政府の危機管理体制の見直し(3)被災住民に対する政府の対応(4)電気事業者の監視(5)新しい規制組織の要件(6)原子力法規制の見直し(7)独立調査委員会の活用――の七つでした。国会事故調は、実質半年で報告をまとめることが法律で定められており、12年7月に報告書を両院議長に提出すると翌日には解散しました。以降のボールは国会にあると考えています」

――提言の実施状況を、どう見ていますか。原子力規制委員会という独立性の高い規制組織は整備されたものの、事故や原子力のあり方について国会に検証や監視・議論を続けていくことを求めた提言は、ほとんど実現していないようにみえます。
「提言(1)に沿い、衆院原子力問題調査特別委員会が13年に設置されましたが、実質的な議論の機会は限定的に思えます。何を実施したのか、しないのならばその理由などを、国民に明らかにすべきです。関係者の証言記録を含め、集めた膨大な調査資料は、今も非公開のまま国会図書館に眠ったままです。提言の背景や趣旨について国民の理解を深めてもらうためにも、扱いを早急に判断すべきです」
「米国では、スリーマイル島の原発事故の際に民間人を活用した独立調査委員会が報告書をまとめ、規制当局と原子力事業者の関係見直しにつなげています。英国は、狂牛病やイラク戦争などの重大事には独立委員会で政府対応を検証し、批判も含めて報告書にしています。日本の国会も、政府が言ったことだけを議論するのではなく、自分たちで対案を出して議論していくということが大いにあっていい。そうでないと、世界の信頼はなかなか得られません」

災害備蓄品の進化

9月2日の日経新聞に「防災備蓄、自治体積み増し」が載っていました。

・・・自治体が災害時の食料などの備蓄を増やしている。直近でも南海トラフ地震の臨時情報が初めて発表され、強い勢力の台風10号が猛威を振るう。9月1日は「防災の日」。地域が孤立無援の対応を求められかねない広域災害や、道路の寸断による孤立集落の発生という「2つの孤立」をにらんだ戦略の練り直しが進む・・・

そこに、大災害を経験して、品目が追加されたことが、図で載っています。
阪神・淡路大震災(1995年)、東日本大震災(2011年)では、紙おむつ、生理用品。
熊本地震(2016年)では、米粉クッキー、液体ミルク。
房総半島台風、東日本台風(2019年)では、段ボールベッド、屋内テント。
能登半島地震(2024年)では、携帯トイレ。

鎌田浩毅著『M9地震に備えよ 南海トラフ・九州・北海道』

鎌田浩毅著『M9地震に備えよ 南海トラフ・九州・北海道』(2024年、PHP新書)を紹介します。このホームページでしばしば登場していただく、鎌田先生の新著です。

宣伝文には、次のように書かれています。
・・・「大地変動の時代」に入った日本列島で生き延びるために。「京大人気No.1講義」で名を馳せた地球科学者が、列島を襲う巨大地震を警告!
今後、東日本大震災と同じマグニチュード9の巨大地震が、三つ起こる可能性がある。震源域はそれぞれ、千島海溝と日本海溝、南海トラフ、九州・沖縄沖の琉球海溝である。本書ではこの三つの巨大地震について取り上げるほか、犠牲者最大2万3000人と推測されている首都直下地震や房総半島沖地震、2020年代に桜島や有珠山が噴火する可能性など、警戒すべき大地震を平易に解説・・・

先日、8月8日に宮崎県日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震がありました。「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が出されました。この地震は南海トラフ地震ではないのですが、緊張感を高めました。
時宜を得た出版ですね。アマゾンを見たら、環境分野でベストセラーになっていました。