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行政-官僚論

黒江・元防衛次官の壮絶な体験談、その2

2月21日に紹介した「黒江・元防衛次官の壮絶な体験談」。
朝日新聞ウエッブ論座に、載るそうです。予告編として「筆者の黒江元防衛事務次官に聞く」が載っています。
「論座」には、今日から載りました。「第1回 防衛官僚の道を選び⽗から勘当 しくじり糧に「背広組」トップへ」。記事の最後に、記者による補足もついています。

元の連載は、22日に、第12回「官房業務 ~官房とは謝ることと見つけたり~」が載りました。

黒江・元防衛次官の壮絶な体験談

市ヶ谷論壇」に、黒江・元防衛次官の回顧談「失敗だらけの役人人生」が連載されています。本人の失敗と苦労が生々しく書かれていて、防衛官僚の苦労と黒江さんの生きざまがよくわかります。

第1回は、親の反対を押し切って防衛庁を選んだことです。その後も、苦労を重ねます。自衛隊が「日陰者」扱いされた時代です。
第6回は、「三つのK」です。きつい、汚い、危険の3Kとともに、企画する、形にする、共感を得るの3Kが説明されています。これは、どの職場でも通じることでしょう。
第7回と第8回、第9回は、交渉についての苦労、調整の板挟みの苦労です。これも、若手官僚には勉強になります。
圧巻は、第10回と第11回の「健康管理」です。黒江さんは、過労とストレスで6回倒れました。退官した直後にも、救急搬送されます。私も若いときは職場に泊まり込みましたが、さらに上がおられました。

東京のスーパーマーケット、福島応援

わが家の近くのスーパーマーケット「クイーンズ伊勢丹、新高円寺店」で、福島産品の販売企画が行われていました。「発見ふくしま」。この企画は東京電力が協力しています。

キョーコさんが、いろいろと買ってきました。「良い商品がたくさんあった」とのことで、私も行ってきました。
店内の一つの場所でなく、野菜、魚、肉、お菓子などそれぞれの棚で、福島産の食品が並んでいます。各棚を、福島産品が占拠しているのです。目立つ幟も、たくさん立ててあります。これは、目立ちますわ。
クイーンズ伊勢丹の各店舗で、4日間にわたってやってくださっているようです。ありがとうございます。

政治家による官僚人事

1月27日の朝日新聞オピニオン欄、嶋田博子・京都大学公共政策大学院教授の「官僚の忖度、いつから?」が、勉強になります。ぜひ原文ををご覧ください。

・・・伝家の宝刀・人事権を使い、霞が関を支配してきたとされる安倍、菅両政権。官僚側の過度な忖度(そんたく)や萎縮も問題となっている。なぜ、「政と官」はこんな関係になったのか。人事院の元官僚で、人事政策とその国際比較を研究する嶋田博子さんは、英国をモデルにした平成の「政治改革」にその伏線があるという・・・

――菅義偉首相は、選挙で国民の審判を受けた政治家に反対する官僚は異動してもらう、と明言しています。
「最近の米国の研究では、多数決原理だけでは実現できない公益がある、との指摘があります。もし『選挙で勝った政権はすべてを託されている』といった選挙万能主義があるなら、それは日本独特と言えます。英国では、『選挙独裁』とも呼ばれるこの課題を克服しようとする仕組みもあります」
――それは何ですか。
「下院にある特別委員会です。政府の監視・チェックなどを目的とする超党派の委員会で、たとえば政官関係に懸案があると、この特別委が調査し、報告書をまとめ、政府は60日以内に回答しなければなりません。そっけない回答が多いのですが、さらなる証拠を求められる可能性を見越して政府が慎重になるため、政府に対する有効な牽制として機能している、とする研究者の分析もあります。実際、現ジョンソン政権の前のメイ政権では、官僚への高圧的言動、理不尽な要求を禁じる文言が大臣規範に加えられました」
――なぜ英国では、議会がそこまで政府に対峙できるのですか。
「議会には、与野党を問わず、内閣を生み出した立場として内閣を監視し続ける責任がある、という自覚があるのです。べつに官僚を擁護しているわけではありません。内閣も、権力の行使には自重、抑制的である姿を示すことが国民の信頼獲得につながり、中長期的にも有利との考えがあります」

――政治改革で、英国から導入されなかった要素は他にありますか。
「政治家は官僚の人事に介入しない、という原則です。19世紀からの政治的伝統で、政官がともに仕事をするからこそ、官が政に臆せず進言できるようにする、との理由からです。具体的には、事務次官以下の高官の職能要件をあらかじめ公開して公募し、各省次官や外部有識者らでつくる委員会が各省ポストを選考しています」
「これと対照的なのが米国の政治任用制でしょう。米国では、大統領と官僚が一緒に働く以上、大統領が信を置く人物を選ぶという発想です。ただし、もともと議会や最高裁が大統領を強く牽制できるシステムになっています」
――英国では、政治家が「官僚の人事に介入したい」という誘惑には駆られないのですか。
「それが時々あるんです。キャメロン政権は12年、大臣が事務次官を選べるようにしたい、と提案しました。ところが下院の特別委が賛同しない見解を示し、上院からも『それは国家のオウンゴールになる』との声が上がりました」
――英国も試行錯誤を続けている、と。
「その通りです。初めから理想的な正解があるとは考えておらず、絶えず見直しを続けています。こうした柔軟性は、日本も学ぶところがあります」

――そうした海外の制度・ルールから、日本の参考となる点はあるでしょうか。
「官邸が各省の幹部人事を一元管理する内閣人事局が14年にせっかくできたのですから、主要ポストについては、どんな能力・経験が求められるかを政治の側があらかじめ具体的に示しておく、といった改善が図られてもよいのではないでしょうか。そうして透明性を高めておけば、人事で何らかの問題が起きた時、その妥当性を事後にチェックできます」
「現状では、人事の決定がブラックボックスなので、官僚も疑心暗鬼になり、上司の顔色を気にしがちになります。日本は英米のように転職容易な労働市場でもないため、政治家の不興を買うことを先回りして避けようとするのです。これは内閣人事局ができる前からありました」

どういうルールを創ったら、人はどう行動するか

Web日本評論、有吉尚哉さんの「どういうルールを創ったら、人はどう行動するか」(2021年1月25日掲載)から。この記事は、池田真朗著「行動立法学序説―民法改正を検証する新時代の民法学の提唱」についての紹介です。

・・・法律を制定する権限は国会に帰属するものであるが、行政がその企画立案に大きな役割を果たしているほか、政令・省令などの下位法令は行政が制定権を有する。このように立法作業を担うのは主に行政の役割であるが、実務上、民間の法律実務家が立法過程に関与することも少なくなく、その影響も高まっている。
例えば、近年、私法の領域においても規制法の領域においても、取引実務に影響を与えるような法令改正等が頻繁に実施されているが、業務への影響が生じる法令改正が行われる場合には、パブリックコメントの手続において意見提出をすることが想定される・・・特に各取引分野の専門化が進む中、法制度の制定・改正を行うために実務経験を有する民間の意見の重要性が高まっている。このような場面では、民間の法律実務家にも立法のための思考法が求められることになる。

ここで、新規法令の制定や既存法令の改正などの立法作業は、法令を扱う業務という点では法律実務家が実務の課題に取り組むために法令の解釈を検討することと共通している。もっとも、後者は制度趣旨を考慮することは必要であるとしても、存在する法令の枠組みの中での解釈論が求められるものであるのに対して、前者は(既存の規律や実務との整合性が考慮要素となるとしても)価値判断を前提に新たなルールを策定するものであり、求められる発想は大きく異なる。
また、法令が存在せず、取引が発達していない状況で新たに法令を制定する場合には、出来上がった法令の内容が適切なものであればそれでよいことになろう。しかしながら、既に法制度が存在し、取引が複雑化している中で、新規の立法を行ったり、既存の法令の改正を行う場合には、立法後の法令の内容だけでなく、規律が変動することによる実務への影響にも十分に配慮することが必要となる。

本稿は民法の権威であり武蔵野大学大学院法学研究科の池田真朗教授が2020年に施行された民法改正(いわゆる債権法改正)を題材に「行動立法学」という考え方を説くものである。「行動立法学」は確立した学問分野ではなく、社会的に最適な立法をするための理念や方法論を考察しようとするものとして池田教授が提唱する新しい考え方であり、「もともと不合理な行動をする人間の存在は当然の前提としたうえで、新しい立法をする際には、どういうルールを創ったら、人はどう行動するかという、その法律の対象となる人々の事前の行動予測の観点から法律というルールを創るべきとするもの」と説明される。この考え方から、池田教授は、「法律は、作ってから解釈を工夫して運用するものではなく、作る前に効果を想定しシミュレーションをして作るもの」であると強調する・・・

池田論文は、次のページで読むことができます。「法学研究(慶應義塾大学)93巻7号(2020年)57頁~113頁」