カテゴリー別アーカイブ: 地方行政

地方行財政-地方行政

千代田区、複数職員で議員対応

7月31日の読売新聞夕刊に「千代田区が官製談合受け再発防止策「複数職員で議員対応」」が載っていました。

・・・東京都千代田区の発注工事を巡り、区議が職員から聞き出した入札情報を漏らした見返りに業者から賄賂を受け取っていた事件を受け、同区が設置した検討委員会は、複数の職員で議員への対応に当たるなどの再発防止策をまとめた・・・

・・・職員へのアンケートでは、過去5年以内に議員や元議員から公表前の予定価格などの情報提供を求められた職員が部長級の幹部で13・6%に上ることが判明。議員から大声で罵倒されたり、依頼を断ると「お前の人事異動がどうなっても知らない」と威圧されたりするなど、議員によるハラスメントの実態も浮かび上がった。
再発防止策をまとめた報告書では、事件の背景について「議員と良好な関係を構築し円滑な議会運営に貢献したい職員の思いが、適切な判断を誤らせ、非違行為につながった可能性が高い」と指摘。議員に対する職員の行動基準として、「複数職員での対応」「対応記録の徹底」「議員など部外者の執務室立ち入り禁止」などを盛り込んだ・・・
千代田区の発表

地方創生10年

7月18日の朝日新聞に「地方創生、夢の跡 提唱10年、東京一極集中変えられず 交付金、計1.3兆円」が載っていました。

・・・第2次安倍政権が「地方創生」を打ち出してから10年。東京一極集中に歯止めをかけ、人口減少を食い止めようと、これまで約1・3兆円を自治体に配ったが、政府は6月の報告書で「大きな流れを変えるには至っていない」と結論づけた。今後の戦略も描けておらず、「地方創生」の旗印は行き場を失っている。

地方創生は、第2次安倍政権が2014年に新たな成長戦略の目玉として掲げた。異次元の金融緩和で大幅な株高が実現し、富裕層を中心に恩恵が広がっていた時期だ。翌年春に控えていた統一地方選をにらみ、「アベノミクス」の果実を地方に波及させる姿勢を打ち出す狙いがあった。
政府は、地方創生の司令塔となる「まち・ひと・しごと創生本部」を設置。雇用創出や移住などを基本目標にする「総合戦略」を14年12月に閣議決定し、自治体にも数値目標を盛り込んだ地方版の総合戦略をつくるよう求めた。それに応じて新たに創設した「地方創生推進交付金」を配った。

ただ、成果は乏しい。例えば、東京一極集中の是正をめぐり、政府は生活コストの高い東京への人口集中は少子化につながるとみて、東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県)から地方への転出増を重要目標の一つに掲げた。しかし、政府がまとめた報告書によると、23年の東京圏への転入数は転出数を11・5万人上回り、14年時点の10・9万人より増えた。報告書は「国全体でみたときに人口減少や東京圏への一極集中などの大きな流れを変えるには至っていない」と認める。当時より人口が増えている自治体についても「多くは移住者の増加による『社会増』にとどまっており、地域間での『人口の奪い合い』になっている」と指摘した・・・

役所のデジタル化に見る分権と集権

6月27日の日経新聞オピニオン欄「中外時評」は、斉藤徹弥・上級論説委員の「デジタル時代の新・地方分権」でした。デジタル化を進めるに当たって、なぜうまくいかないか。その問題から、新しい時代の国と地方の関係を分析した内容のある記事です。本文をお読みください。

・・・アジサイに誘われ、鎌倉の明月院を訪ねた。濃く鮮やかな明月院ブルーの花群れを眺めながら、かつて自治省(現総務省)に入ると教えられたという心構えを思った。
地方はアジサイの花だ。全体が一つの花にみえるが、よくみれば多様な形の小さな装飾花の集まりである。地方も様々な事情を抱える市町村の集合体で、全体をみるだけでなく、個々の自治体に目を向けなければならない――。
地方全体を抽象的にとらえるマクロの視点だけで政策を判断すると、市町村をみる解像度が低くなり弊害を生む。多種多様な自治体への影響をミクロに見極めて政策を判断せよという教えである。
霞が関は地方をマクロでとらえ「こうすれば地方も回るはず」と考えがちだ。デジタル庁はその典型で、現状は地方への理解が足りず、十分な成果は上げていない・・・

・・・地方分権だからバラバラなのではない。地方自治法は統一すべき基準づくりを国の役割としているが、これに国が後ろ向きすぎたのである。
各省は人員不足で手が回らず、分権を口実にしてきた面もあろう。基準がないなか、自治体は独自に対処し、結果として業務フローやシステムがばらけていった。
地方が統一した方がよいと思うものは国がはっきり基準を示すー。半年あまりの調査と協議を経て国と地方、そしてデジタル派はこうした共通認識にたどり着いた。「これがデジタル時代の新しい地方分権」と国は位置づける・・・、

天皇陛下記者会見、JETプログラム

天皇陛下が6月22日から6月29日まで英国を訪問されるにあたり、記者会見をされました(6月19日)。その中で、「今回の英国訪問において、私が特に関心を払っていきたいと思っている点についてお話ししたいと思います」として、次のように話されました。

「第二に、我が国と英国の若い世代の交流についてです。 昭和62年以降、JETプログラムには、英国から約1万2千人が参加しているとのことで、このプログラムにより日本に派遣され、各地の学校での語学指導や、地方自治体での国際交流支援などを行った青年たちが、英国への帰国後、閣僚、下院議員、大学教授、政府職員、日本企業の社員などとして活躍していると聞いております。私自身、以前に雅子と共にJETプログラムの記念式典に出席した折に、JETプログラムに参加した方々にお会いしたことがありますが、今回、お会いする方々からも、日本での滞在の印象や両国の交流についてお聞きしたいと思っています。」

JET プログラムとは、語学指導等を行う外国青年招致事業(The Japan Exchange and Teaching Programme)で、外国青年を招致して地方自治体等で任用し、外国語教育の充実と地域の国際交流を推進する事業です。1987年に始まり、現在では6000人近くが活動しています。

地方自治法改正は政権の暴走への歯止め

5月18日の朝日新聞オピニオン欄「地方自治法改正は必要か」から。
・・・地方自治法の改正案が国会で審議されている。大規模災害や感染症など「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」で、国が自治体に指示できる内容だ。国と自治体の関係は変わるのか・・・

牧原出・東大教授の「地方自治法改正は政権の暴走への歯止め」
・・・国の指示権拡大を答申した地方制度調査会(地制調、首相の諮問機関)の委員として議論に関わりました。2020年2月、安倍晋三首相(当時)が全国に一斉休校を要請しましたが、私は、国がああいう法的根拠のない指示を二度としてはいけないと問題意識を持っていました。
要請は木曜で、4日後の月曜から一斉休校する内容でしたが、科学的根拠も現場への配慮もなかった。

大災害やパンデミックなど非常時に直面すると、人間の判断は危うくなる。非常時の政権は、世論やメディアから「もっと強く対応するべきだ」と迫られ、焦りがちです。世の中が冷静さを失うと、官民挙げて暴走する危ない状況が生まれます。現行制度では、個別法の想定を超える事態が起きた時、国の指示に関する規定がない。それが、制約のない非合理的な判断につながることが、コロナ禍で明らかになりました。

今回の地方自治法改正案の指示権は、非常時の政権に歯止めをかける規定です。行使には「必要最低限」や「国民の生命等を保護する」といった要件がある。一斉休校の時にこの規定があれば、官邸内で「やりすぎじゃないか」と考え直す根拠になったと思います。
もちろん、強権的な政権が地方に指示を出す懸念はあります。だとしても、今回の規定を踏まえて「間違った判断では」と事前か事後に政権を問いただすことはできる。それが政権を縛ることにつながります・・・