カテゴリーアーカイブ:地方行政

地方自治の関心を高めた首長

2025年12月30日   岡本全勝

「自治体のツボ」12月29日は「地方自治の関心を高めた首長2025」でした。「オリジナリティを出すべくもがいている地域を探してみた」とあります。どのような首長が選ばれているか、記事をお読みください。
ツボ氏は、次のような評価をしています。
「どちらも社会的な問題に対し、自治体としてやれることをやったという点で高く評価できる。対応が速い。スタンドプレーでなく、実効性を追い求めているのがとてもいい。政策立案で地域に貢献するという、行政関係者の鑑である」
「分権というか、自立というか、地域に必要なことは正面から議論しようという気持ちが薄い。国と喧嘩しろと言っているわけではない。国の力も借りながら、新しい地平を切り開く。そこに公務員の仕事の面白さがあると思うのだが」

前日は「地方自治の信頼を下げた首長2025」でした。こちらは、たくさんの首長が並んでいます。
「首長の言動に呆れ果てる1年だった。あまりにも身勝手で情けない。仕事上のミスは仕方ないが、住民そっちのけで自分だけよければそれでいいとふんぞり返る首長のなんと多いことか」とあります。確かに、仕事での失敗というよりは、倫理上の問題です。
1990年代に一部の官僚の行動(過度な接待、汚職の際の接待内容)が露見し、評価を下げたことを思い出します。思い上がりが、本人の身を滅ぼし、組織の信頼を低下させます。

自治体のツボ」は何度か紹介しているように、地方行政の話題を丁寧に拾い、取り上げてくれます。それも意外な角度からです。報道ではなかなか得られない知識があります。来年も、期待しましょう。

自治体のツボ「印象に残った2025地方コメント10選」

2025年12月24日   岡本全勝

紹介できなかった記事を、順次載せます。
まず、「自治体のツボ」11月6日の「印象に残った2025地方コメント10選」です。
いつものことながら、よく調べたものです。みなさんは、どの程度覚えていますか。
ちなみに、ツボ氏の感想は、「大したコメントがないというのが、情けない」です。

12月24日には「キレイすぎる知事の漢字」が載っています。

ノーベル賞を最も多く生む県

2025年10月15日   岡本全勝

地方行政を、鋭い角度や独特な角度から取り上げる「自治体のツボ」。10月10日は「ノーベル賞を最も多く生む県」でした。なかなか思いつかない視点です。

・・・せっかくなので30名のノーベル・ローリエイトの出身地を調べてみた。いま、東京、愛知、大阪が4人でトップタイ。京都と愛媛が3で続く。意外に均衡。あとは1人ずつ。北海道、埼玉、山梨、静岡、富山、滋賀、奈良、兵庫、山口、福岡、鹿児島、満州。

愛媛の3人は大健闘ではないか。対して東北は唯一ブロックでゼロ。田中耕一さんが東北大OBだが、東北生まれのローリエイトはいない。女性もまだゼロ。経済学賞とあわせ、この3大空白を埋められるかが、今後の日本の焦点である・・・

大都市、自治体間の自発的連携を

2025年9月25日   岡本全勝

9月22日の日経新聞経済教室は、砂原庸介・神戸大学教授の「大都市制度の論点、自治体間の自発的連携を促せ」でした。これまでにない発想だと思います。ついている図を見ると、日本の3大都市圏は、世界で比べると大きい方ですが、突出しているわけではありません。図では都市名は明示されていませんが、ニューヨーク、パリ、ローマ、ミラノ、ロンドンなどと同じか小さいのでしょう。

・・・地方自治体が行う公共サービスは、基本的にその自治体に住む人々を対象に、その自治体の有する資源を利用して提供されるものだと考えられる。それでは、ある自治体の外からやってきて、その自治体が提供する公共サービスを利用する人々の負担をどのように考えたら良いだろうか。人々が社会経済活動のために移動する範囲である「都市圏」と、地域住民として公共サービスの費用を負担する範囲である「自治体」にズレが生じるとき、この問題への対処が求められる・・・
・・・問題を解決する方法は2つある。1つは制度を変えて、都市圏の大きさに見合った自治体を作ることだ。合併を通じて自治体と都市圏の範囲が重なるようにすれば、より多くの人々に負担を求めることができる。近代化の過程で都市圏が大きくなっていく中で、まず採用されやすい解決策が、中心都市による周辺自治体の合併だった。
また、これまでの自治体を維持しながら、新しいレベルの政府を作ることもある。例えば1980年代にフランスやイタリアでは新しいレベルの州政府が作られ、広域の公共サービス提供を担当している。

しかし最近は先進国ではこれらの方法はあまり使われず、その代わりに自治体間の連携が強調される。合併や、新しいレベルの政府を作る際の政治的なコストが高すぎるからである・・・
・・・特に、必要なサービスを全て自前でそろえることが困難な自治体にとっては、連携は重要な選択肢となっている。
多くの国では、都市圏の単位で公共交通をはじめとした生活インフラ整備のための調整が行われている。同時に、公共サービスはその性質によって、個々の自治体単位や小規模の自治体間連携で提供されている。
それに対して日本の重要な特徴は、自治体間の連携が低調なことである。例えば経済協力開発機構(OECD)からは、加盟国の中で唯一、都市圏での公共交通の調整機構がないことが指摘されている。
日本で連携が低調なのは、都市圏と自治体の領域のズレを自治体合併で解消する傾向があったためだ。しかし、現在の政令指定都市のような規模の自治体が生まれると、合併による解決策は困難になる・・・

・・・合併による解決の行き詰まりを背景に、日本で大都市制度の議論をするときは、現状の政令指定都市という規模感で議論されることが多い。しかし実は、政令指定都市は、国際的な都市間競争という文脈から見ると相当に小さい。
図はOECDが収集している加盟国の都市圏に関するデータから、面積と、都市圏を構成する自治体の数を対数軸でプロットしたものである。丸の大きさは人口規模を示している。
黒丸は日本の都市圏で、首都圏が人口3600万人、京阪神都市圏が1700万人、中京都市圏は860万人を擁する。含まれる自治体数は首都圏で189、京阪神で112、中京で82とされている。
三大都市圏は、日本の感覚から言えば1つの単位としては大きすぎると思われるかもしれない。確かに人口はOECD諸国の都市圏では大きい方だが、面積や構成自治体数がとくに際立っているわけではない。図の右上にある丸はいずれも面積が広くて構成自治体の数も多く、首都圏ほどでないにせよ人口も多い。

世界的な「都市間競争」では、このような規模感の都市圏が意識される。首都圏・京阪神は複数の政令指定都市を内包し、それらを個々の競争のための単位として考えるのは、グローバルな観点から見ると小さすぎる。大阪府を1つの都市圏としてみる大阪都構想は日本の感覚から見ると大きいが、世界的には必ずしも大きいとは言えない・・・
・・・大都市問題を考えるときに、政治的なコストがかかる目新しい制度改革に焦点が当てられることは多い。しかしそれだけではなく、なぜ日本で自治体間の連携が起きないかという、より根本的な問題に目を向けるべきだ。1つの自治体にとらわれない政党や公営事業の出現を促すような、基幹的な制度改革を検討する時期に来ている・・・

地方版ハローワーク

2025年9月10日   岡本全勝

8月23日の日経新聞に「地方版ハローワーク、女性や高齢者の働き手発掘 就職率は国を上回る」が載っていました。これまで地方自治体の関与が少なかった(できなかった)分野の一つが労働政策です。

・・・自治体が運営する無料の職業紹介所「地方版ハローワーク」が眠れる働き手を発掘している。5月時点で全国に992カ所あり、島根県は県と全19市町村が設置する。地域課題を解決する自治体の政策と連動した職業紹介で、働く意欲のある高齢者や女性、障害者らの背中を押す。就職率は2019年度以降、国のハローワークを上回る。

地方版ハローワークは、地場産業の振興や介護・福祉の人手不足解消、移住促進といった地域課題を解決する政策の効果を高めるため、自治体が独自に職業紹介する。
地域のニーズをきめ細かく吸い上げて雇用に結びつけ、23年度の就職率は全国で31.3%。民間の職業紹介が存在感を増し、就職件数の減少が続く国のハローワーク(26.8%)より4.5ポイント高い。
都道府県別に自治体の設置割合をみると、島根県が100%で最も高く、鹿児島県の65.9%、大阪府の61.4%が続く。

島根県益田市は介護現場の課題解消をめざし地方版ハローワークを活用する。高齢者福祉課が実施する入門研修やUIターン人材への働きかけと並行し、課内に設置した「無料職業紹介所」が介護の周辺業務の求人と求職者をマッチングする。
施設の部屋の清掃や食事の片付け、利用者の話し相手など、資格が不要な周辺業務を担う人材を多数確保することで、資格のある職員が食事や入浴の介助、専門的な知識の必要な業務に集中できる環境を整えるのが狙いだ。
経験や年齢、勤務時間、資格の制限を設けず「介護お助け隊」として募集したところ、4年間で延べ97人が登録し、43人が職を得た。24年度の就職率は50%だった。
益田市は広報紙やチラシのほか、介護保険や家族の介護の相談で市役所を訪れた高齢者らに地方版ハローワークを紹介して周知してきた。「普段から足を運ぶ市役所の窓口に開設したことで、働きたくても一歩を踏み出せなかった高齢者のニーズを掘り起こせた」(高齢者福祉課)・・・

・・・中央大学の阿部正浩教授は地方版ハローワークについて「地域の課題やニーズをくみ取る自治体の施策に合わせた活用は効果が期待される」と評価する。
そのうえで「高齢者や女性の就職支援は国のハローワークも力を入れ、人材を奪い合う構図もある。地方版の一部は開店休業状態だ。地域の事情を詳しく知る強みをマッチングに生かすことが、地方版にはさらに求められる」と話している・・・