カテゴリー別アーカイブ: 地方行政

地方行財政-地方行政

市役所への終活登録

7月5日の日経新聞、斉藤徹弥・編集委員の「横須賀市の終活登録、尊厳と財政救う 身寄りない人保証」から。

・・・多死社会、無縁社会の到来で、自治体が身寄りのない高齢者の終活支援を重視し始めた。行政が身元を登録、保証することで、亡くなる前後の「周没期」を孤立せずに尊厳を保って過ごすことができ、財政負担も抑制できる。優れた終活支援で知られる神奈川県横須賀市を訪ねた・・・

・・・墓地埋葬法などは亡くなって引き取る人がいない場合、死亡地の自治体に火葬を義務づける。大都市の病院は近隣市町村から入院して亡くなる人が多いが、引き取り手がなければその自治体が火葬することになる。
最近は独り暮らしの高齢者の増加で、亡くなった人の1割は引き取り手がない自治体もある。病院や自治体は火葬など死後の手続きや費用負担に苦慮しており、身寄りのない高齢者は入院を拒まれることもある。

横須賀市は終活支援として、身寄りのない市民の身元登録制度を導入している。希望に応じて緊急連絡先、かかりつけ医や薬などの情報、葬儀や遺品整理の契約先、墓の所在地などをあらかじめ登録してもらう。
これらが事前に分かれば、病院なども手続きに困ることが少なく受け入れやすい。最近は身寄りのない横須賀市民が入院すると、病院から登録を勧めるようになってきた。現在の登録者は約650人に達する。
生活が苦しい高齢者には、市に協力する葬儀社と死後の手続きの委託契約を結び、費用を前納する制度もある。信教など遺志を尊重した葬儀で見送られ、市は納骨まで見届ける。北見さんは「尊厳を保つのは憲法が保障する権利」と話す・・・

・・・北見さんは①身寄りのない人の身元保証②引き取り手のない遺体③空き家や遺留金――を三位一体の問題と考える。いずれも元気なうちの生前解決が大切で、自治体の関与が欠かせない。マイナンバーはこうした行政にこそ活用したい。
岸田文雄首相は先の通常国会で、身寄りのない高齢者の身元保証に関して対策を講じる考えを示した。おひとりさまの周没期を社会的に支える流れが動き出している・・・

自治体のツボ、分権30年の評価

先日紹介した「自治体のツボ」が、分権決議から30年を機に、振り返って評価をしています。
分権決議30年を考える①意識」から始まって、財界人、知事、合併、国地方と、なかなか思いつかない、多角的な分析です。これは、この30年間、分権を追いかけていないと書けない内容です。参考になります。

自治体のツボ

久しぶりに、ブログ「自治体のツボ」を紹介します。「2020年自治体のツボ

相変わらず精力的に書き続けています。全国各地の地方行財政に関する話題を、丹念に拾っています。これは、かなり労力が必要でしょう。
話題に対する意見も、積極的で、辛口なものも多いです。かなりの専門家とお見受けします。自治体関係者には、役に立つことがあると思います。

記事についている写真も、楽しみです。記事とはほとんど関係なく、食べ物が多いようです。

増田リポートから10年

6月7日の読売新聞が「「増田リポート」10年 人口減 地方雇用創出が急務 格差是正で女性定着カギ」を解説していました。

・・・増田寛也・元総務相(現在は日本郵政社長)らがまとめ、人口減少問題に警鐘を鳴らした「増田リポート」の公表から、今年で10年となる。少子化の要因の一つとして、若い女性が東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)に流出する動きに着目したが、国の対策の効果は限定的で、「一極集中」に歯止めはかかっていない。地方で若い女性が魅力を感じる雇用の場を確保していくことが急務だ。

2040年までに全国の自治体の約半数が消滅する可能性がある——。13年11月から順次、公表されたリポートが示す将来像は衝撃をもって受け止められた。
リポートでは、人口減少対策には、次世代の子どもを産む、人口の「再生産力」が重要だと指摘し、20〜39歳の女性人口に着目した。都市部への人口流入が収束しない前提で将来人口を試算し、10年〜40年の間に若い女性が5割以下に減る自治体が、896自治体に上ると指摘。「消滅可能性都市」と呼びリスト化した。
896自治体のうち40年時点で人口が1万人を割り込む523自治体については、「このままでは消滅の可能性が高い」と踏み込み、「若年女性が減少し続ける限り、総人口の減少に歯止めがかからない」と訴えた。
増田リポートは、地方創生など、政府が取り組みを強化するきっかけとなったが、コロナ禍などを経て状況は悪化している・・・

・・・若い女性が職を求めて東京圏に流入しているとみられている。22年の女性の転入超過は約5万4000人。年齢別では、「20〜24歳」が約3万9000人にのぼった。公益財団法人「東北活性化研究センター」(仙台市)が20年、18〜29歳の女性を対象にした調査によると、東京圏への就職理由として「希望する就職先がその場所にあった」が53・4%でトップだった。
ニッセイ基礎研究所の天野馨南子(かなこ)・人口動態シニアリサーチャーは、「女性流出によって、地方では若い男女のバランスが崩れている。地元で結婚するカップルが少なくなれば人口減少は激しく進む」と指摘する。その上で「地方では子育て支援だけでなく、男女の賃金格差の是正によって女性定着に注力する必要がある」と強調している・・・

学校の労働環境改善へ

3月31日の日経新聞に「教職 魅力向上へ「2本柱」」が載っていました。
・・・教職の人気低迷を受け、学校の労働環境改善に向けた動きが活発になってきた。長時間労働の一因となっている事務作業はDX(デジタルトランスフォーメーション)を急ぎ、給与制度は勤務状況に合うよう見直す議論が始まった。優秀な人材を確保するためには働き方と待遇の「2本柱」の改革が欠かせない。現場の人材不足は深刻で、取り組みのスピード感が求められる・・・

・・・日本の教員は事務作業に費やす時間が長い。18年の経済協力開発機構(OECD)の調査によると、中学教員が1週間で事務作業にあてる時間は5.6時間で、参加した48カ国・地域で最も長く、平均(2.7時間)の2倍を上回る。
教員のストレスにもなっており、同調査で「事務的な業務が多すぎる」と答えた割合は小学教員61.9%、中学教員52.5%だった。文部科学省幹部は「民間企業と比べ業務のDXが遅れたのが響いている」とみる・・・

時代遅れの事例や改善された具体例が載っています。でも、このようなことは、かなり以前から指摘されていましたよね。
学校行政の閉鎖性、市町村長が責任を持っていない、文科省が現場の問題を拾わないなどが、動きの鈍い原因でしょう。大学の教育学部も、役に立っていないのでしょうか。