内閣府が、犯罪被害者等施策に関する調査報告書を公表しました。今回は、地方公共団体での取り組みについての調査です。犯罪被害者等基本法は、2004年にできました。そこでは、国とともに地方自治体にも、相談、医療や福祉サービスの提供、安全と居住の確保などの責務が、書かれています。被害者への支えは、国ではできないのです。
その結果は本文を見ていただくとして、概要は本文「4」に載っています。担当窓口は、県や政令市では置かれていますが、その他の市町村ではまだです。条例を制定しているのは18県、135市区町村にとどまっています。
私はこの施策を、社会の新しいリスクであり、行政の新しい課題であると位置付けています。しかし、まだ、自治体や住民には認知されていないようです。
カテゴリー別アーカイブ: 再チャレンジ
行政-再チャレンジ
自殺、12年連続3万人
警察庁が、昨年平成21年中の自殺者数を公表しました。各紙夕刊が伝えています。これで12年連続で、3万人を超えています。男性が7割、女性が3割です。年代別では、50代、60代、40代の順に多いです。自殺原因は、半数の人が健康問題、特にうつ病です。4分の1が経済・生活問題、8分の1が家庭問題です。
大きな社会問題ですが、人の心の問題であり、他人や社会との関係の問題なので、対策は難しいです。しかし、あれだけ大きな問題だった交通事故も、3分の1まで減らすことに成功しました。40年かかりましたが。
若者の自立支援
大学院の授業では、社会の新しいリスクとして「社会関係の問題」を取り上げています。自立が困難な若者も、その中の一つです。この問題を、私は内閣官房再チャレンジ室で勉強しました。再チャレンジ室は廃止になりましたが、若者支援は内閣府と厚労省で引き継がれ、また各自治体やNPOの取り組みもあり、充実しつつあります。昨年は、子ども・若者育成支援推進法が成立しました。ニートを支援する拠点である若者サポートステーションは、平成18年度に25か所だったものが、今年度は100か所にまでなりました。関係者のおかげです。しかし、対象者が60万人もいます。全国で100か所では、1県に2か所ですから、まだまだ少ないですね。詳しくは、厚労省の記者発表資料(平成22年3月19日)、取り組みの解説をご覧ください。
社会のリスクの変質
宇野重規東大准教授が、日経新聞「やさしい経済学」に、「個人の再発見」を連載しておられます。
・・これまでの社会では富の配分が問題になったとすれば、これからはリスクの分配こそが問題になる。このように予言したのは、ドイツの社会学者ウルリッヒ・ベックである。
・・ベックの念頭にあるのは、いまや階級とは関連しない社会的不平等が存在するのではないか、という問題意識である。例えば失業である。現代社会において、失業は個々の人生のある局面で、あたかも個人的な運命として訪れる。彼が例示するのは、女性にとっての離婚である。データが示すところでは、社会的出自でも学歴でもなく、離婚こそが新たな貧困への入り口になっているという。結婚や離婚は、個人にとっての私的関係の問題であ利、社会的な問題ではない。このように考えるとすれば、現代において失業を生み出すきっかけは、階級ではなく、私的関係にあることになる・・(さらに重要なことが書かれていますが、引用はこれくらいにとどめます)。
私はいま、最近の大学での講演大阪大学講演を元に、原稿をまとめつつあります。趣旨は、「社会のリスクの変質がもたらす行政の変化」です。古典的な災害、事故、戦争、病気といったリスクの分野にも、新しいリスクが生まれています。それとは別に、個人の社会関係の破綻ともいうリスクが、個人の責任から社会や行政の課題になりつつあるというのが、私の主張です。かつて、内閣官房再チャレンジ室に勤務したときに、その一端を文章にしました。「再チャレンジ支援施策に見る行政の変化」月刊『地方財務』(ぎょうせい)2007年8月号。それを、社会のリスクという観点から、整理しようと考えています。
シングルマザーが働けるように
22日の読売新聞夕刊に、「シングルマザーは即戦力」という記事が、載っていました。石川県のある旅館は、180人いる客室係のうち、60人がシングルマザーです。会社は、母子寮兼保育所を建て、年間3,000万円の経費がかかるとのことです。しかし、優秀な職員を確保するためでもあるのだそうです。このほかにも、20人のシングルマザーを雇っている病院の例も、紹介されています。残念ながら、このような企業は、まだまだ少ないようです。今や、4組に1組が離婚します。一人親(父でも母でも)が、子育てしながら働くことは大変です。社会にとっての当然のリスクとして、公的支援と企業などの理解が必要です。