先日(1月31日)書いた「官の役割、民の役割。養子縁組」の続きです。
明治以来日本の行政は、国家に有意な人材と健康で優秀な職業人を育てることを、主たる目的としてきました。そして、そこから漏れ落ちた人への対応は、十分とは言えなかったようです。
学校教育を考えてください。東大を頂点とした教育の一方で、高校を中退した若者には、ほぼ何の公的支援もありません。彼らが次に接触する行政窓口が、ハローワークと場合によっては警察では、さみしすぎますよね。挫折した場合のセイフティネットの教育も、十分ではありません。犯罪を犯した場合、誘いに乗って法を犯した場合、どのようにして応援をもらい、立ち直るかは、学校では教えてもらえないのです。「すべてよい子に育てる」という方針の下で、落ちこぼれは置いてきぼりになります。
拙著『新地方自治入門』p175で、スウェーデンの中学の教科書『あなた自身の社会』を紹介しました。そこでは、ちょっとしたいざこざで相手を傷つけ警察に逮捕された少年を例に、その後の手続きを説明しています。同棲や結婚とともに離婚や、失業や病気になった場合の支援も書かれています。
もちろん「よい子」に育てる必要はあります。しかし、みんながみんな優等生にならないのが、現実です。すると、落ちこぼれた場合のことを教えておく必要があるのです。
不本意な妊娠をした場合、それも未成年の場合はどう対処してよいかわからないでしょう。親に言ったら叱られる、どこに相談したらよいかわからないのです。他方で、子供に恵まれない夫婦は、どこに相談したら養子縁組ができるか。あなたは、知っていますか。
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行政-再チャレンジ
官の役割、民の役割。養子縁組
笹川陽平・日本財団会長のブログ、1月27日は「養子縁組あっせん法の成立」でした。詳しくは原文を読んでいただくとして。これを読んで、官の役割と民の役割を考えました。生みの親が育てることができない子どもを、誰がどのように支援するかです。
・・・日本の養子縁組の制度には、普通養子縁組と特別養子縁組がある。普通養子縁組は、古くから家の跡取りなどを迎えるために行われてきた。これに対して特別養子縁組は30年ほど前に創設され、生みの親が育てることのできない子どもに、あたたかい家庭を提供するための児童福祉としての制度である。諸外国では、養子縁組は子どもが家庭で健やかに育つための重要な児童福祉と捉えられているが、日本では、これまで児童相談所などの行政機関は積極的に取り組んでこなかった。
そのため、民間の養子縁組団体が、予期しない妊娠で悩む女性の相談にのり、子育てを希望する夫婦への仲介を担ってきた。不妊治療をしても子どもを授からず、養子を希望する夫婦は多く待機しており、赤ちゃんは安全で愛情にあふれた家庭ですこやかに育つことができる。日本の虐待死で最も多いのは0歳0ヶ月の赤ちゃんで、10年間で111人が死亡しており、その9割は実母によるものである。特別養子縁組は赤ちゃんの虐待死を防ぐ上でも重要な役割を果たすことが可能である・・・
これまでは、民間の団体が斡旋していましたが、中には営利目的で問題を起こす団体もありました。日本財団が支援している「ハッピーゆりかごプロジェクト」によると、次のようになっています。
・・・様々な家庭の事情で、生みの親と暮らせない子どもたちがこの日本にも約4万人います。こうした子どもたちは、国連のガイドラインによると養子縁組や里親制度を通じて家庭で暮らすことが望ましいとされていますが、日本では、社会的養護下にある子どものうち、約85%が乳児院や児童養護施設などの施設で、約15%が里親家庭やファミリーホームで暮らしています。諸外国では里親家庭で暮らす子どもの方が多く、日本でも子どもが家庭で暮らせるようにする取り組みがさらに必要です。
また、生みの親の元に戻ることができない子どもについては、養子縁組により新しい家庭を得ることが望ましいとされ、日本では公的機関である児童相談所と民間団体が、子どもの福祉を目的とした養子縁組を行っています。日本で特別養子縁組される子どもは年間540人程度ですが、アメリカでは毎年5万人以上、イギリスでは4,500人以上の子どもたちが養子縁組されています・・
このような恵まれない子どもたちへの支援を、誰が責任を持って行うか。これまでは民間に任せていましたが、それでは問題が出ることがわかってきました。また、なかなか養子縁組が進みません。「赤ちゃんポスト」も、様々な意見があります。しかし、恵まれない子供たち、困っている母親たちをどのように救うか。民間の力を、行政がどのように引き出すか。法的規制だけでなく、財政面やノウハウ面での支援も行うべきでしょう。
この項続く。
NPO3人組の活躍
このホームページにしばしば登場するNPO3人組が、それぞれに活躍しています。
田村太郎さんは、毎日新聞に「社会起業家」について連載しています。本業のダイバーシティ研究所については、ホームページをご覧ください。
青柳光昌さんは、9月末に「ソーシャルイノベーションフォーラム」を開催します。
藤沢烈さんは、このホームページ9月3日に「社会起業家が新公益連盟、分野の枠超え政策提言」を紹介しました。その他の活躍については、烈さんのブログをお読みください。
それぞれに、民間の立場から、社会の課題を解決するべく、奮闘中です。いつものことながら、その熱意と行動力に脱帽します。行政も、負けてはいられないのですが。
社会の課題に取り組むNPO
日経新聞9月2日夕刊「パーソン」は、河野俊記者の「社会起業家が新公益連盟、分野の枠超え政策提言」でした。
・・・子どもや女性の支援、災害復興、地域活性化など社会が抱える課題の最前線で奮闘する、NPOの代表など社会起業家が「新公益連盟」を結成した。分野の枠を超えた政策提言や経営・人材育成のノウハウ共有を狙う。東日本大震災を機に社会貢献への関心は高まった。ただ個々の活動だけで社会を変えるには限界がある。そんな危機感を胸に、志を同じくする人たちが続々と集まった・・・
大震災の被災者支援、被災地の復興に際し、NPOは大きな貢献をしてくれました。拙著「復興が日本を変える」で紹介したとおりです。社会でもだんだんと認知されつつあります。
課題は、被災地だけでなく全国に広げること。被災者支援だけでなく、その他の社会の課題解決に広げることです。社会でもっと認知してもらうことです。参考、「復興がつくった新しい行政」の図3。
他方で、行政とどのように連携するかが課題です。社会の課題を解決するのが行政の任務であり、地域の課題を解決するのが市町村役場の任務です。私は、市町村役場に、「地域の課題解決のためのNPOとの連携窓口課」を作るのが一つの方法だと考えています。
河野記者、良い紹介をしてくれて、ありがとう。
犯罪者の贖罪
日本財団は、犯罪加害者が贖罪のため寄付する金銭を受け付けています。それを、加害者の反省の気持ちを代弁して被害者の救済に活用しています。このような活動もあるのですね。詳しくは、「笹川会長のブログ」をお読みください。