カテゴリーアーカイブ:再チャレンジ

階級社会日本

2019年7月21日   岡本全勝

7月17日の朝日新聞朝刊1面は、「階級社会 中間層襲う転落不安」でした。

・・・「階級」という言葉には古めかしい印象が付きまとう。だが、昨年1月に世に出たその本は、筆者の予想をはるかに上回る反響を呼んだ。
「新・日本の階級社会」(講談社現代新書)。
閉塞感が漂う日本社会の現状をみるには階級という視点が不可欠、という警鐘だった。不安定な雇用で収入も低く、結婚や子育て、老後の蓄え、といった営みもままならない新しい階級「アンダークラス(下層階級)」の出現に注目するべきだ――。
本のヒットに、「何が起きているのかと思った」と誰よりも驚いたのが筆者だ・・・

佐藤 俊樹著『不平等社会日本―さよなら総中流 』(中公新書) が社会に衝撃を与えたのは、2000年でした。「一億総中流」と信じていた日本社会が、実は「格差社会」に変化しつつあることを提示したのです。
橋本先生が、2006年に「階級社会」という本を出版した際には、反響はほとんどなかったそうです。その言葉が、今や現実味を帯びて、社会に広まっています。

詳しくは本文を読んでいただくとして。私も、戦後日本が達成した成功の一つに、平等と全国での均一な公共サービスを上げていました。しかし、平等は過去のものになりつつあります。
なぜ、佐藤先生の時点では「階級」が自覚されず、近年になって自覚されるようになったか。それは、二つの要因があると思います。

一つは、「経済成長があれば格差は縮まる」という信念が持てなくなったことです。昭和後期、一億総中流と言われた時代にも、実は格差はありました。しかし、経済成長すると「私も豊かになれる」との思いで、それは前面に出なかったのです。しかし、経済成長が止まると、「私も豊かになれる」とは思えなくなりました。

もう一つは、貧困層の顕在化です。かつても、貧しい人はいました。母子家庭や生業に就けない人です。しかし、世間では「それはあの人たちに責任がある」と考え、我がことではなかったのです。
ところが、正規と不正規の処遇の格差、解消されない年長フリーター、結婚できない派遣職員、子供の貧困が増えて、身近に目に見えるようになりました。「他人ごと」ではなくなったのです。個人責任ではなく、社会の課題になりました。
「勝ち組と負け組」という言葉が、「一億総中流」に取って代わったのです。

企業の採用面接に見る「日本型雇用」その2

2019年7月18日   岡本全勝

企業の採用面接に見る「日本型雇用」」の続きです。

・・・まず、面接で学生に何を聞いているのか。「学習(研究)」「サークル・体育会」「アルバイト」「旅行や読書などの趣味」「その他」の選択肢から、それぞれにかけている時間の合計が10になるよう配分してもらった。顕著な差がみられたのが「学習(研究)」である。
事務系総合職の面接経験者のうち、日系非グローバル企業勤務者は10のうちの3.47を、日系グローバル企業は3.53、外資系企業は4.65を「学習(研究)」に充てている。
技術系総合職の場合、日本企業は非グローバル4.15、グローバル4.38と割合はやや高まるが、外資系5.08には及ばない。面接時間の約半分を学習の質問に割く外資系企業と、サークル活動、アルバイト、趣味などの学生生活を総合的に把握する日本企業という明瞭な差異がある。

これには、多様な仕事をローテーションする日本企業、特定の知識・スキルを求めるジョブで構成されている外資系という構造の違いがあろう。
自社に大学での専門との関連が明瞭な事務系総合職のポストが「ある」企業は、日系非グローバル26.0%、日系グローバル44.0%、外資系56.5%だった。技術系総合職ではやや増え、日系非グローバル43.9%、日系グローバル65.9%、外資系78.0%である・・・

日本の企業文化とともに、レジャーランドと化した大学についても、考えさせられます。採用面接の際に、会社は「大学でどのような学問をしたか」ではなく、「学生時代に一番力を入れたことは何ですか」と問うのだそうです。
先日、ある大企業の方に教えてもらいました。新入社員に聞いた結果です。「学生時代にもっとも力を入れていたことは何ですか?」との問に。部活動やサークル活動が約5割、アルバイトが約3割、学業は1割です。日本の大学がどのような場所かが、よくわかります。恥ずかしいことですが。
学問に励まない学生、卒業生という「製品」に品質保証をしない大学、大学に学問を求めない企業。三者のなれ合い構造です。そしてそれを当然と思っている国民も、同罪です。

企業の採用面接に見る「日本型雇用」

2019年7月17日   岡本全勝

7月15日の日経新聞教育欄、吉田文・早稲田大学教授の「日系企業の採用「空気読む人材」優先続く」が、興味深かったです。日本の企業(国内型)が、学生に学校で得た知識や学問でなく、空気を読むことを期待していることが分かります。

・・・近年の大学教育改革の喫緊の課題は「学修成果の可視化」、すなわち、学生がどのような能力を獲得したのかをエビデンスで示すことである。ここには、新たなタイプの人材を求める産業界からの要請があるという。確かに、グローバル人材、イノベーション人材という言葉はすっかり人口に膾炙した。
しかし、企業はそうした学生を求めているのか。新卒総合職の採用面接経験がある企業人を対象に行った調査(2014年10月実施、調査会社のモニターから過去5年間の経験者を抽出し、ウェブで調査。有効回答2470人)から検討する。
日本企業の特性を浮かび上がらせるため、回答者の勤務先を日本企業と外資系企業に分け、日本企業も事業をグローバル展開している企業と、そうでない企業に区分し、日系非グローバル企業、日系グローバル企業、外資系企業の3つのタイプ別に比較する・・・

・・・だが、それだけではない。そもそも企業が求める人材が異なっているとも考えられるからだ。その一例を表に示す。日本企業の採用担当者は事業のグローバル展開の有無にかかわらず、事務系総合職には「空気を読んで、円満な人間関係を築くことのできる人材」の方が、「論理的に相手を説得できる人材」よりも望ましいと考えている。
外資系は70%が「論理的に相手を説得できる人材」が望ましいとするのと対照的である。技術系も事務系ほどではないものの同様の傾向がある。面接で学習だけでなく、サークル、アルバイト、趣味などを聞くことで、空気を読める者を選ぼうとしているのだろう。
ところで、空気を読むという、暗黙裡に状況を推察しての行動が重要だとするのは、それを可能とする同質的な空間があるからではないだろうか。「男子、学部卒、日本人」から構成された環境である。
そこで、その対極にある「女子、大学院生、外国人留学生」に抱いているイメージを見よう。自社で「採用したい者が多くいると思う」か否かを聞くと、全カテゴリーにおいて、見事なほどに日系非グローバル企業、日系グローバル企業、外資系企業の順で「多くいる」比率が高くなる・・・
この項続く

日本型雇用の変化

2019年7月14日   岡本全勝

7月9日の読売新聞に「脱日本型雇用の波」が載っていました。

・・・大手企業の間で、若手社員の賃金水準を引き上げる一方、中高年社員には早期希望退職などを募って削減を進める動きが目立ち始めた。グローバル競争や産業構造の変化に対応するため、人員の構成を転換する狙いがある。だが、欧米に比べて非効率的とされる働き方の改革は道半ばだ・・・

その中に、電機や製薬業界での早期希望退職の動きが紹介されていました。
・・・人手不足にもかかわらず、企業が希望退職を実施するのは、事業や人員構成の構造転換を図るためだ。バブル崩壊後や2008年のリーマン・ショック後に目立った「リストラ型」とは様相が異なる側面がある。
中外製薬は、18年12月期の売上高が過去最高を記録したが、今年4月、172人の希望退職を発表した。「新薬開発にAI人材が必要」とされるなど、事業環境が大きく変わってきた」(広報)ことが理由という・・・

新卒一括採用、終身雇用を前提に、社員は社内で職場を移り、仕事の内容の変更も受け入れました。しかし、かつてのような組立型工場だった時代から、IT時代の職場になると、「企業内転職」では対応できなくなったようです。社員はどのような技能を身につけて、どの技能を売ることで生きていくか。難しい時代になりました。

就職氷河期世代の支援

2019年7月12日   岡本全勝

7月5日の読売新聞解説欄、山田昌弘・中央大学教授の「氷河期世代支援 30万人正社員化 間に合うか
・・・バブル崩壊後の景気低迷期に就職時期を迎えた「就職氷河期世代」に対し、政府が支援策を本格化させようとしている。何が課題になっているのか・・・
・・・政府は6月に決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」で、就職氷河期世代を対象に職業訓練や採用企業への助成金拡充などを集中的に行い、正規雇用を30万人増やす目標を掲げた・・・

紙面には、「骨太の方針」のポイントが表になっています。その中に、地域若者サポートステーションや引きこもり支援NPOなどが載っています。第一次安倍内閣で、「再チャレンジ政策」が進められましたが、まさにそのときの問題意識は、就職氷河期世代、正規になれなかった人たちだったのです。私は、担当室長でした。
簡単な資料」「保存されている当時の官邸資料

「正規と非正規」「勝ち組と負け組」という言葉が、はやりました。そのような観点から見ると、日本社会は「標準的人生」からはずれた人、何らかの制約を持った人には冷たい社会でした。
アルバイト・パートタイマー・派遣社員は正職員と同じ仕事をしても待遇は悪く、技能を向上させる機会もありません。女性は、補助的業務しかさせてもらえせんでした。学校を中退した若者は、誰もかまってくれません。事業に一度失敗すると、再挑戦の機会は与えられませんでした。

これらの問題は、それぞれに対策が進められています。しかし、これら「標準的と言われる人生を歩めなかった人」という視点で、統一して考える必要があると思います。
その人たちに、どのような支援をするのか。子供たちに「正しい生き方」を教えるとともに、「失敗した際の対応策」をどのように教えるか。
これが、成熟社会日本の課題です。ちょうど、連載「公共を創る」で、そこを書いているところです。