カテゴリーアーカイブ:著作と講演

JICA「強靱な国・社会づくり」講師2

2024年11月16日   岡本全勝

昨日午後は、国際協力機構(JICA)の「強靱な国・社会づくり」の講師を務めました。先日に続き、2度目です。
今回は「東日本大震災への対応」です。研修生たちが、このあと石巻市の被災地を見学するので、その準備としてです。

この内容は何度もやっているので、お手のものです。とはいえ、短時間で日本を知らない人に伝えることは、何度やっても難しいです。鎌田浩毅先生に作ってもらった、日本列島がいくつものプレートの上に乗っていて、その衝突と沈み込みで地震が起きることから話すのです。
要点を絞る、その他は大胆に削除する必要があります。

1時間の講義、30分の質疑応答です。
研修生からは、「どうして危険な地域に再度町を再建するのか」「政府が町の再建の場所などを決めず、住民の話し合いで決めたのは参考になった」「国土の復旧から生活の再建へ哲学を変えたことがよくわかった」との意見をもらいました。理解してもらえたようです。

昨日は、午前と午後と2回の講演でした。

市町村職員研修機関所長会議で講演

2024年11月15日   岡本全勝

今日の午前は、市町村職員中央研修所で開かれていた、市町村職員研修機関所長会議で講演をしました。
表題は「電子化が変える役所の流儀」です。デジタル変革や人工知能が入ってくることで、役所の仕事が変わることを整理して話しました。

「ルンバ問題(効果)」という言葉を知っていますか。業務を電子化しようとすると、まずはその業務を電子化しやすいように合理化する必要があることです。ルンバ(自動掃除機)を入れようとすると、まずは床の上を片付けないと、ルンバは動けないのです。
また、機械の導入によって便利になりますが、良い面ばかりではありません。この変化は進行中であり、日に日に変わっていきます。それをどう捉えるかが、私の問題意識です。日頃考えていることをお話しして、皆さんの意見を聞きました。

あわせて、社会での電子化の影響も、お話ししました。有名な経済学者のケインズは約100年前(1930年)に、「100年後は、一日3時間労働ですむようになるだろう」と話しました。大外れです。
かつてより、現代人は忙しくなっています。機械が人に代わって仕事をしてくれるはずが、人は機械に使われています。
スマートフォンを持つようになって、人は常に「つながり」「つながれ」て、緊張状態に置かれています。休日でも夜でも、メールが来て仕事が入ります。朝起きても、歩いていても、電車の中でも、布団の中でも、スマートフォンを見ている人がいます。「スマホ疲れ」「つながらない権利」が話題になっています。
参加者にも、共感してもらえたようです。

連載「公共を創る」第204回

2024年11月14日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第204回「政府の役割の再定義ーうまくいっていない「政治主導」」が、発行されました。
第199回から、政治主導の在り方を議論しています。今回から、これまでの実績を振り返り、改革が意図通りになった点とうまくいっていない点を議論します。まず、「政治家と官僚の役割分担」を説明します。

目指した政治主導は、単純なことでした。政治家は期待される本来の仕事をし、官僚も自らの役割を果たす、ということです。官僚が政策のお膳立てをし、首相と閣僚はそれに乗っかるのではなく、首相や大臣が政策立案を主導する、官僚はそれを補佐し、決められた政策を実行するというものです。政と官の役割分担の明確化、適正化です。
省庁改革が2001年に実行されてから、ほぼ四半世紀が経た ちました。政治主導は実現したでしょうか。まだ道半ばでしょう。その理由は、政府が社会の課題に対して適切な政策を打てていないという現状があり、それは政治家と官僚が十分に務めを果たしていないからだと思われるからです

これまでの運用を振り返ると、その問題は三つに分類するとよいと、私は考えています。一つは、政治家と官僚の役割分担が、うまくいっていないことです。次に、政治家が政治主導を使い切れていないことです。そして3番目は、政治家と官僚の意思疎通がうまくいっていないことです。

2009年に政権についた当時の民主党は、政治主導を徹底するとして「脱・官僚主義」「脱官僚」を掲げました。政策決定は政務三役が行い、官僚は政務三役が行った決定を執行するものとしましたた。しかし、すぐに行き詰まり、民主党政権の失敗の一つと記憶されました。
政務三役が政策の方向を決め、官僚に実施を指示することは、それ自体が間違ったことではありません。しかし、すべての政策を政務三役が理解し、判断することは無理なのです。

関西学院大学シンポジウム「霞ヶ関は今」に出演

2024年11月13日   岡本全勝

今日11月13日は、関西学院大学丸の内講座特別シンポジウム「霞ヶ関は今」に出演しました。黒江哲郎・元防衛次官、矢野康治・元財務次官と一緒です。会場には80人、オンラインで130人の方が聞いてくださいました。

次のようなことを、話してきました。
私が公務員になった40数年前に比べ、官僚に対する社会の評価が大きく低下しました。官の比重が軽くなってきたという面はあるでしょうが。原因の一つは、1990年代の度を過ぎた接待などで「官僚バッシング」が起きたこと。もう一つは、社会の課題に的確に答えていないことです。30年間の経済の停滞、社会の不安に答えていないのです。
かつて、官僚の評価が高かったのは、清廉潔癖であることと、国家の発展に大きく貢献したからでしょう。その二つを、損なってしまったのです。このような状態を後輩たちに残して、申し訳ないと感じています。

優秀な若者が、官僚を選ばなくなったことも問題です。
その理由の一つは、やりがいがないことでしょう。仕事が増えているのに職員数が増えず、業務量が増えています。かつては係長がやっていた仕事を課長補佐がしているという声があります。それで、政策を考えることが少なくなっているようです。
もう一つは、給料など処遇が悪いことです。国会待機などに時間が取られ、働き方改革が実現していません。そして、大学時代の友人に比べ、給料がはるかに少ないのです。

官僚は、日本の将来を考える、ほかにない集団です。この集団を、上手に使ってほしいです。
参考「日本記者クラブ登壇「政と官」」(2021年5月27日)

連載「公共を創る」第203回

2024年11月8日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第203回「政府の役割の再定義ー政治主導は成果を出しているか」が、発行されました。

かつて経済と社会が発展期だった時代には、官僚主導が効果を発揮しました。しかし日本が成熟社会になって、それが行き詰まり、政治主導が求められるようになりました。
1990年代にいろいろな行政改革が試みられ、最後に政治主導が改革の対象となりました。2001年に実施された中央省庁改革です。
中央省庁改革と呼ばれますが、その第一は内閣機能の強化でした。例えば、内閣総理大臣の指導性の強化として内閣総理大臣が閣議で案件を発議できるようにすること、内閣及び内閣総理大臣の補佐・支援体制の強化として内閣官房の体制強化と内閣府の設置などが行われました。
私はその具体化を行った中央省庁等改革推進本部事務局で、行政の減量担当参事官を務めました。

実行された政治改革には、1990年代の前半に行われた小選挙区制の導入など政党と選挙に関する改革(選挙制度改革、政治資金制度改革)と、2000年前後に省庁改革と同時に行われた政治主導への改革がありました。前者についてはすでに30年近くが経ち、省庁改革からは四半世紀が経とうとしています。それぞれに定着し、今となってはそれが当たり前だったように、何の混乱もありません。

しかし、当初考えられたような制度の機能を発揮して目的を達しているかという点では、完全な成功とは言えません。
政党と選挙に関する改革では、二大政党制を目指しました。政権交代はあったのですが、その後、自由民主党は政権に復帰し、非自民勢力は分裂して、二大政党制は定着していません。
政治主導は、総体としては現状ではまだ及第点はもらえないと評価しています。政治家と官僚が役割分担を明確にして成熟社会において良い成果を出すという、政治主導の目的はまだ道半ばで達成されていないと考えるからです。