カテゴリーアーカイブ:著作と講演

連載「公共を創る」第215回

2025年3月6日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第215回「政府の役割の再定義ー政策の大転換に必要な意識改革とその手法」が、発行されました。

政策を大転換するために必要な、首相の取り組みを説明しています。まずは、内閣が取り組む課題と政策を大小に分別し、首相には重要課題に集中してもらうことです。次に、首相が取り組む政策体系を示すことが必要です。

各府省は主要政策の体系をつくって公表しているのに対し、内閣にはそれがありません。私は麻生首相の指示の下、同僚の首相秘書官たちと議論して、首相が目指す目標と首相が特に力を入れる政策を整理しました。内政にあっては安心と活力、外交にあっては安全と繁栄を目標とし、現在進めている政策とこれから進める政策を体系化しました。これは、内閣が取り組む政策の全体像を示したものではありません。「この内閣は、この課題を解決したいのだ」という意思を示すものです。

しかし、首相の目指す日本と主要な政策体系は、首相に就任してから表明するのではなく、首相に就任する前に示しておく必要があるでしょう。かつての自民党総裁選挙では、候補者が「マニフェスト」を発表しました。麻生首相は自民党総裁選挙に4度出馬しましたが、そのたびにマニフェストを発表していました。私もその作成に関与しました。

成熟社会に適合するように政策を大転換するためには、「課題と政策の整理」の次に、「解決への取り組み手法」を明らかにしなければなりません。成熟社会の課題は、従来の行政手法では達成できないのです。また政策の大転換には、政治家、公務員、国民の意識を変えなければならず、そのためにはそれなりの手順も必要になります。
政策の大転換には、関係者や国民の理解を得ることと、抵抗勢力を説得することが必要です。これもまた、首相指示だけでは実現しません。

ウクライナ政府幹部講義3の2

2025年3月5日   岡本全勝

ウクライナ政府幹部講義3」の続きです。一行は10日間の講義や視察を終えて、今日はその振り返りでした。私も呼ばれて参加しました。参加者全員(次官は先に帰国)から、今回の企画についての意見と、役に立った点を発言してもらいました。

いや~、うれしかったですね。「良くできた企画だった」「講義を聞いてから現地を見たのでよくわかった」という意見とともに、「オカモトさんの説明で、全体像がよくわかった」と言ってもらいました。そして私が伝えたかった次のようなことを、何人もの方から理解したと言ってもらいました。
・復興庁の司令塔としての役割
・インフラ復旧だけでは暮らしは戻らず、産業と生業、つながりやコミュニティの回復も重要なこと
・復興計画づくりには、住民が参加することが重要なこと
・政府だけでは復興はできず、住民と企業や非営利団体の参加が重要なことなど

現地視察の様子が、報道されています。「朝日新聞」「NHK福島ニュース
一行は、今晩の飛行機で、帰国の途につかれます。早く戦争が終わって、本格的に復興に着手できることを祈っています。

この企画は、国際協力機構(JICA )による「ウクライナ国緊急復旧・復興プロジェクト」第4 回本邦招へいプログラムです。
2023年3月から、技術協力「緊急復旧・復興プロジェクト」を開始し、復旧・復興にかかる技術支援及び機材供与と主要都市の都市復興計画策定を進めています。現地では、キーウ州における瓦礫処理、越冬支援(ヒートポンプ供与による電化効率化)などを実施しています。日本への招へいは、東日本大震災からの復興の経験を講義及び現場視察を通じて共有し、今後の復旧・復興に活かそうとするものです。

連載「公共を創る」第214回

2025年2月27日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第214回「政府の役割の再定義ー成熟社会にふさわしい政策への大転換」が、発行されました。

政治家が行うべきですが十分になされていないことの一つとして、政策の大転換を取り上げています。
憲法が改正されていないことも、政策の大転換が十分に行われていないことの、一つの表れでしょう。日本国憲法は1946年に公布され、その後80年近く改正されたことがありません。世界の成文憲法の中で、改正されていないものとして最も古いものとなりました。第2次世界大戦が終わった45年から2022年までに、米国は6回、フランスは27回、ドイツは67回、中国は10回、韓国は9回の憲法改正(新憲法制定を含む)を行っています。
近年に改正された各国の憲法は、環境保護、情報公開、プライバシー保護などの新しい人権の規定を盛り込んでいます。日本も事情は同じと考えられますが、これらについて、憲法改正の動きは見られません。

他方で、条文をかなり強引に解釈している実態もあります。社会の変化に憲法が追い付いていないのです。憲法第89条は、「公の支配に属しない教育」への公金支出を禁じていますが、「公の支配に属さない」私立学校の国庫補助が続いています。
また、憲法第24条第1項では「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」すると定め
ています。これに関して、同性婚を認めていない民法などの規定は憲法違反だと訴訟が起こされ、多くの判決は違憲としています。しかし条文を読んでいると、無理があるような気がします。憲法制定時は同性婚を想定しておらず、「両性」と規定したのでしょう。

歴代内閣は政策課題への取り組みを怠っているのでなく、懸命に取り組み、新しい取り組みも次々と打ち出しています。では、なぜそれが効果を上げているようにみえないのでしょうか。どのように変えれば、政策の大転換が進むのでしょうか。そのためには、「課題と政策の整理」と「解決への取り組み手法」を明らかにし、それを評価し変えていくことが必要でした。内閣は、それを怠ってきたのではないかと考えられます。
各府省は、それぞれ多くの政策群を抱えています。それらを実行しつつ、首相の示す「重点」「転換」に取り組むことになります。官僚機構は、与えられた方向でそれぞれの分野での政策を考え、実施することは得意です。しかし、各組織間、各政策間での優先順位付けはできず、政策の大転換もできません。

近年の「官邸主導」も問題です。首相が取り組む重点を絞っていないこと、首相官邸の官僚が各省の活動に口を挟むことから、逆に各省の大臣と官僚がその政策分野においての優先順位の判断ができず、さらには政策を考えなくなっていま。官邸と各省との分担が明示されていない官邸主導は、弊害が多いのです。
首相には、重要課題に集中してほしいのです。首相がいかに忙しいか、首相に考える時間を確保することも首相秘書官の役割であることを、私の経験を交えて説明しました。

ウクライナ政府幹部講義3

2025年2月26日   岡本全勝

今日2月26日は、ウクライナ政府幹部に講義をしてきました。国際協力機構(JICA)が、日本に呼んでいます。復興に向けた準備をするためです。今回で3回目です。「ウクライナ代表団への講義2

私の講義は、東日本大震災からの復興です。戦争で壊された町、また一時的に避難してから戻る町もあります。そこで、津波被災地と原発事故被災地の両方を説明しました。
言葉で伝えるより、写真がわかりやすいです。

マリナ・デニシウク地方・国土発展省次官をはじめ、13人の高官が参加してくださいました。マリナ次官が、次々と鋭い質問をされました。それに答えることで、理解が深まったと思います。

朝日新聞オピニオン欄に載りました

2025年2月21日   岡本全勝

今朝2月21日の朝日新聞オピニオン欄「複合災害、防災庁の役割は」に、私の発言「一元的窓口と司令塔機能、重要」が載りました。中林一樹教授と並んでです。
・・・能登半島地震の被災地は、復旧の途上で豪雨災害に見舞われた。複合化・激甚化する災害に対して、石破茂首相は防災庁を2026年度中に設置する方針を示し、議論が本格化している。今後起こりうる災害に備えるため、国や自治体に求められるものとは・・・

かなり詳しく取り上げてもらいましたので、記事をお読みください。私の主張の主な点は、次のようなものです。
・防災庁は内閣府防災部局の充実と復興支援を(政府に復興を支援する組織がない)
・防災庁は窓口の一本化と司令塔機能を(実働部隊はそれぞれに任せる)
・官邸に置く「本部」より「館」を構える長所がある(復興庁の経験)
・生え抜き養成は非効率、各省庁の専門家を生かせ(出戻り組の活用を)
・能登地震が人口減時代の復興の試金石(過疎地では元の街に戻すことは不可能)

朝日新聞ウェッブ版では、より詳しく述べています。「「ミスター復興」の反省と防災庁への注文 選択と集中で生活の再建を」(2月20日配信)
・・・石破政権肝いりの「防災庁」新設へ向け、検討が本格化している。複合化・激甚化する災害に平時から備え、緊急対応と復興支援の要となる新組織には、どのような体制が求められるのか。東日本大震災の復興に長年携わり「ミスター復興」の異名を持つ岡本全勝・元復興事務次官に、課題を聞いた・・・

例えば次のような文章。
「現在の内閣府防災と復興庁、そして東京電力福島第一原発事故の被災者支援部門を統合し、各統括官の下で役割を分担するのが、組織統制上もよいと思います」