連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第230回「政府の役割の再定義ー上司・部下の関係と公務員のやりがい」が、発行されました。
政治家と官僚との意思疎通が重要なのに、それがうまくいっていないことを議論しています。
幹部官僚にとって、首相や大臣からの指示を受けて働くこととともに、指示されていない事項の検討や、従前所掌されてこなかった施策の立案も重要な役割です。そのためには、幹部官僚に自由に幅広く考えさせる必要があるのです。私はそれを、少々品位を欠きますが、「放し飼いにする」と表現しています。
幹部官僚側も、政治家と良い関係をつくるために、気を配らなければなりません。協力して一定の政策を作っていくためには、幹部官僚や管理職は、政治家をはじめとする「上司に仕える」こととともに「上司を使う」ことが重要です。「上司を使う」とは、あなたの案を実現するために、「上司に動いてもらう」、露骨に言うと「あなたの案を実現するために、上司を使う」ことです。
公務員のやりがいという点では、人事院の「令和6年度年次報告書」(2025年6月6日公表)が、いろいろな調査を載せていて、参考になります。
国家公務員採用総合職試験等に合格して2024年4月に採用された職員へのアンケートでは、国家公務員になろうとした主な理由は、「公共のために仕事ができる」「仕事にやりがいがある」「スケールの大きい仕事ができる」が上位となっています。
内閣官房内閣人事局の2023年度「国家公務員の働き方改革職員アンケート」では、「私は、現在の仕事にやりがいを感じている」という項目で、「とてもそう思う」が12・5%、「どちらかと言えばそう思う」が45・5%、合わせて58%です。他方、「全くそう思わない」が6・2%、「どちらかと言えばそう思わない」が12・6%で、合わせて18・8%です。「どちらとも言えない」が23 ・2%です。6割が満足し、2割が不満を持っています。
国家公務員が世間でどのような印象を持たれているかという意識調査も載っています。比較する業界として、人材獲得において国家公務員と競合する可能性の高い、商社、コンサルタント・シンクタンク、金融機関、メーカー、地方公務員を設定しています。「やりがいのある仕事ができているイメージがあるか」という設問では、国家公務員(本府省と地方機関勤務とも)も地方公務員も、他の業界に比べて、肯定的回答の割合が低いのです。