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連載「公共を創る」第200回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第200回「政府の役割の再定義ー官僚機構と「政府・与党」」が、発行されました。
前回から、行政の役割を考えるに当たって重要な、政治との関係の議論に入っています。まず、国民の政治意識の問題を取り上げています。

1991年のバブル経済崩壊後、政治家と官僚は、そして報道機関も国民も、いずれ経済は持ち直し、以前と同じ状態に戻ると考えていました。この考えに沿って、90年代は大型の経済対策を続けたのです。しかしその効果は少なく不況は長期化し、当面している経済停滞は単なる景気循環ではないと分かりました。就職氷河期もあり、98年には自殺者が3万人を超え、社会の不安が多くの国民の目にも明らかになりました。
ようやく政府も社会も、日本が発展期を終え成熟期に入ったことを認識し、政治の在り方を変えなければならないと考えました。行政改革が、「小さな政府を目指した時代」から、「仕組みの改革の時代」へと進んだのです。それが、橋本龍太郎内閣の省庁改革です。そこで指摘されたのは、官僚主導から政治主導への転換です。

ついに、連載が200回になりました。2019年4月25日に始めて、5年です。「第1回

『Public Administration in Japan 』に分担執筆3

『Public Administration in Japan』に分担執筆2」の続きです。

その1」で本書の前書きを引用しましたが、1983年に辻清明先生が出されて以来、英語による日本の行政の概説書はなかったのとのことです。それだけ内向きだったのでしょうか。日本語でも、教科書はたくさん出版されていますが、概説書は見当たりません。読者がいないということでしょうか。
外国人特に政府関係者に日本の行政を説明する際に、適当な英文書物がないのです。これは、行政学者と学界、政府の怠慢でしょう。日本の地方行財政については、自治体国際化協会が数カ国語で紹介しています。諸外国の地方行財政制度の紹介も。
今回出版された本は、外国の方に紹介できます。特にインターネットで無料で読むことができるのが便利です。そんな時代になったのですね。

時を同じくして、田中秀明・明治大学教授らによる『Handbook of Japanese Public Administration and Bureaucracy』も出版されました。目次を比べると、それぞれに特徴が出ています。
ところで、洋書は高くなりましたね。円が安くなったこともあります。

なお、私の肩書きは、第19章では次のように書かれています。
Japan Acacemy for Municipal Personnel, Chiba, Japan

本の最初の部分「NOTES ON CONTRIBUTORS xxv」では、次のように出ています。
Masakatsu Okamoto served for the central and local governments,including as Executive Secretary to the Prime Minister Taro Aso. He has worked for recovery and reconstruction from the Great East JapanEarthquake since immediately after the disaster as Director-General andVice-Minister of the Reconstruction Agency and Special Advisor to the Cabinet.

『Public Administration in Japan 』に分担執筆2

『Public Administration in Japan 』に分担執筆」の続きです。
要旨を、日本語で載せます。日本の危機管理を行政学として書くにあたって、次のような観点から執筆しました。

・・・第二次世界大戦後の半世紀にわたり、日本では自然災害がしばしば発生したが、国内でも対外的にも大きな危機に直面することはなかった。ところが1990年代に入り、国内ではこれまでにない大規模な自然災害が発生し、国際的には北朝鮮と中国が軍事力を増強し日本への脅威が現実のものとなった。
日本の危機管理の対象としては、大規模自然災害、安全保障、新しい感染症の流行を上げることができる。
それまで、国家の危機管理は日本政治と行政の重要な課題ではなく、対応組織も法制度も十分ではなかった。しかし度重なる危機に直面し、組織や法制度を順次充実してきた。それはまた、各省が内閣の事務を分担する原則から、総理に情報を集約し総理が指揮を執るという総理主導への転換でもある・・・

目次も日本語で載せておきます。

1.日本政府の危機管理の特徴
1.1半世紀ぶりの転換 1.2平穏な半世紀とその後の急激な変化 1.3危機管理行政の再発見
2.政府の危機管理の仕組み
2.1危機の分類 2.2内閣官房の組織 2.3運用 2.4地方自治体 2.5民間組織
3.日本の特殊事情1―大規模自然災害
3.1大規模な風水害 3.2大規模地震
4.日本の特殊事情2―安全保障
4.1戦争放棄と環境の変化 4.2 国際的な平和協力活動 4.3北朝鮮と中国の挑発 4.4サイバー攻撃
5.新しい感染症の流行
6.日本の強みと課題
6.1国民の意識と行動 6.2想定内と想定外の危機
7.結び

その3」に続く。

『8がけ社会』に載りました。

朝日新聞取材班著『8がけ社会 消える労働者 朽ちるインフラ』(2024年、朝日新書)が出版されました。朝日新聞に連載された記事を、書籍にしたものです。
本の趣旨は、「2040年に1200万人の労働力が足りなくなる。迫り来る超人口減少社会とどう向き合うか」です。

第3部が能登半島地震で、その最後に、私のインタビューが載っています。「中心集落や市街地への移転、集約化を考えざるをえない」。
5月24日の朝日新聞オピニオン欄「交論 人口減時代の防災・復興」に載った発言の再録です。

連載「公共を創る」第199回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第199回「政府の役割の再定義ー国民の不安・不満と政治意識」が、発行されました。

公務員に人が集まらないこと、優秀な若者が官僚を目指さないことを議論しています。
この連載「公共を創る」の主題は、行政の課題が大きく変化していること。それに日本の官僚制が追いついていないと考えられること。これに対する実務経験者としての私なりの解決策を提唱していくことです。ところが、実態は私の想定をはるかに超えて変化しています。連載中に議論の前提としていた実態が変わり、政策や制度を変える議論では対応しきれなくなっているようなのです。

例えば地方自治制度です。戦後、憲法によって地方自治が制度化され、社会の変化に沿って、制度改正を重ねてきました。ところが、住民が減少して、地域社会が維持できない地域が出ています。自治体の存続自体が危ぶまれる地域も出てきました。そうなると、自治制度論どころではありません。
もう一つは、いま議論しているこの公務員制度、そしてその実態です。職員が集まらないようでは、仕事は処理できません。長期間続けてきた行政改革で、国も地方も職員を減らしてきました。その影響で、現場が疲弊しています。その上に、定数通りの職員数が集まらないと、さらに現場は人が足りなくなります。それが、現実に起きているのです。このようなことは、数年前までは、人事院も各省人事課も、地方自治体の人事課も予想しなかったのではないでしょうか。
公務員の定数を議論するのではなく、定数が埋まらないことがこれからの行政管理の問題になると予想されます。

今回で「官僚の役割」を終えて、「政治の役割」の議論に入ります。官僚との関係では、政治主導のあり方が大きな論点です。国民の不安・不満は、行政だけではなく、政治にも向けられています。