カテゴリー別アーカイブ: 連載「公共を創る」

連載「公共を創る」第145回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第145回「「新しい課題に対する新しい行政手法」とは?」が、発行されました。

行政改革の議論を終えて、行政の手法の議論に入ります。この連載では、社会の課題が「貧しさの解消」から「不安への対処」に変わったことと、従来の「サービスの提供」といった行政手法ではそれらを解決できないことを説明してきました。そして、いくつかの分野では、新しい手法が試みられていることを取り上げました。

まず、貧しさの解消のために取られた、モノとサービスの提供手法について説明します。かつては、公共サービスは政府が提供し、私的サービスは市場が提供すると説明されました。しかし、このような公私二元論は、もはや成り立ちません。

 

連載「公共を創る」第144回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第144回「政策を体系的に示す─内閣・府省・自治体」が、発行されました。

各内閣が次々と新しい政策に取り組んでいるのに、それらが体系的でなく、官僚や国民にとって分かりにくいことを議論しています。このような議論をしているのは、私が首相秘書官を務めた麻生太郎内閣(2008年~09年)では、首相が特に力を入れる主な政策を体系的に示していたからです。
内政と外交について、それぞれ「安心と活力」「安全と繁栄」に分け、「これまでの実績」「これからの見取り図」を示しました。あわせて、首相としての責任を「政治のかたち」として示しました。その図は、官邸のホームページに載せていました。現在では国立国会図書館のアーカイブで見ることができます。

もちろん、内閣、首相が取り組む政策はこれだけではありません。しかしそれらは、各大臣と各省に任せておけばよく、必要に応じて首相と相談すればよいのです。また、各大臣と各省にとっても、首相が何に力を入れているかが分かります。
この図は首相と議論して骨格をつくり、各秘書官がそれに沿って仕事をするとともに、図を充実していきました。

地方自治体にあっては、多くの団体が総合計画をつくっています。ところが、国にあっては、内閣にも各省にもそれに当たるものがないのです。

連載「公共を創る」第143回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第143回「「新しい課題」への対処法」が、発行されました。
社会に新しい課題が次々と生まれているのに、行政の対応が必ずしも積極的でないことを議論しています。かつては縄張り争いをするくらい、積極的に新しい分野に取り組んだのに、なぜ消極的になったように見えるのか。

一つは、官僚主導から政治主導への転換がまだ安定しておらず、政治家と官僚との役割分担がうまく機能していないようです。官僚たちが、上司である政治家の指示待ちになったのです。
また、新しい政策が官邸から発信されるのですが、各省大臣からの発信が少なくなったように見えます。
政策には、大きなものから小さなものまで、さまざまなものがあります。すべてを官邸が抱えると、首相だけでなく内閣官房も機能不全になるでしょう。

日本の行政、官僚に求められているのは、国内で生まれている課題を拾い上げ、政策にすることです。かつての「追いつき型・制度輸入」手法ではなく、「国内の問題を拾い上げ、対策を考える」手法への転換です。
アメリカの社会学者C・ライト・ミルズの「社会学的想像力」という考え方を紹介しておきました。

連載「公共を創る」第142回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第142回「行政改革から社会改革へ」が、発行されました。前回まで、1990年代と2000年代に行われた行政改革の成果と問題について説明しました。

さらに視野を広げてみると、これら行政改革が求められた要因には、日本独自のものと、先進国共通のものがありました。
日本にあっては、経済発展の終了と成熟社会の到来に対して、社会と行政が対応できていないことです。
先進国にあっては、日本より先に経済成長が鈍化し、小さな政府と効率化、顧客重視の改革に取り組まれました。新自由主義的改革と新公共経営(NPM)です。

では、日本の行政改革は、目的を達したか。行政改革は成果を上げたのですが、社会はそれ以上に変化していて、行政改革だけではそれに応えることができていないのです。必要なのは、行政改革以上に、社会の変革です。今回は、それを説明しました。

連載「公共を創る」執筆状況

恒例の連載「公共を創る」の執筆状況報告です。
相変わらず、締め切りに追われる、自転車操業が続いています。本業やら講演活動やらで、なかなかまとまった時間が取れません。いつも同じことを言っています。かつては、書きためて余裕があったときもあったのですが、最近はどうもいけません。
それでも、締め切りに遅れたことがないのは、健康であることと、雑な原稿に急いで手を入れてくれる右筆のおかげです。

月に3回の連載となると、同時に4本の原稿が走っています。1月26日に第141回が掲載されたばかりですが、現時点では、第142回(2月2日号)が完成し、掲載を待っています。第143回(2月9日号)は、編集長の了解を経て、校閲を待っています。第144回(2月16日号)を、編集長に送りました。私は、次の第145回(3月2日号)を書いています。こんな状態ですから、気をつけないと頭の中が混乱するのです。
その合間を縫って、コメントライナー(9回)の原稿も書いています。我ながら、よくやっています。

全体の構成では、第4章 政府の役割再考 2 社会と政府(3)社会をよくする手法、を書き進めています。その中で、「大きな政府と小さな政府」「市場への新しい介入手法」「行政改革」を終えて、次回からは「行政の手法」に入ります。
この部分は、執筆に入る前に、まだ骨格が整理できていません。関連情報を知人の教授らに教えてもらうなど、勉強中です。どうなることやら。