家族と会社、自由な暮らしと必要な覚悟

日本はこの半世紀で経済発展を遂げ、豊かで自由な社会を手に入れました。しかし、社会の仕組みや国民の意識が、その変化に追いついていないことを指摘しています。
ムラや家族、会社は個人を束縛しますが、個人にとっては頼りになるものです。うまくいかないときも、その束縛を言い訳にすることもできます。しかし、自由な社会で自分が選択する場合は、その結果にも責任を持たなければなりません。その覚悟が必要になります。

例えば一人暮らしは、自由で快適な生活ができますが、困ったとき、悩んだときに助けてくれる人がいません。一人暮らしをするには、その覚悟が必要です。そのような孤独に陥らないため、つながりをつくる努力をするのか、一人の不安に耐えられるだけの精神力をつけるのか、いずれかが必要です。
孤独にならないためには、他人とのつきあいが必要ですが、じっとしていてもつきあいはできません。かつては、村での集まりや親類などさまざまな中間集団に否応なく組み込まれたのですが、それも少なくなりました。結婚もまた、かつては世話焼きの人が異性を紹介してくれたりしましたが、現在では自分で探さないと相手は見つかりません。

日本型雇用慣行は、新卒一括採用、年功序列、終身雇用が特徴です。従業員は特定の技能を持って特定の職に就く就職ではなく、白紙の状態で会社に採用され、社内で技能を身につけるという就社です。多くの学生は何になるかを考えず、技能を身につけずつけずに、大学生活を送ります。就社すると、その後の処遇は会社任せになります。希望する部署に就けないと不満をためますが、外部雇用市場がないので転職することは困難です。
日本型雇用慣行は、ムラでの暮らし方を職場に持ち込んだものです。会社任せにせず自分で技能を磨き仕事を見つけるには、前段で述べたと同様に自立の覚悟が必要になります。
一人暮らしの孤独が問題になっているように、今後ジョブ型雇用が広がると、この問題が顕在化するでしょう。