「寄稿や記事」カテゴリーアーカイブ

雑誌への寄稿や取り上げられた記事、講演録など

日経新聞「花火頼みの政治の行方」に出ました

5月11日付けの日経新聞「風見鶏」、山内菜穂子記者の「花火頼みの政治の行方」(紙面の見出し)、ウエッブ版では「政治は「花火」頼みか 子育てケアマネ論争が映す支援のあり方」に、私の発言が引用されました。文脈がわからないと、私の発言の位置づけが理解できないので、その前後を少々長めに引用します。記事は結構長いものです。ご関心ある方は、原文をお読みください。

・・・4月中旬、子育て支援団体などが国会内である会合を開いた。「子育てケアマネ」導入や保育の拡充を求める集会だ。多くの与野党の議員が駆けつけた。
子育てケアマネはフィンランドなどの事例を参考にした取り組みで、専門家が妊娠期から母親と信頼関係を築き、相談にのるという。虐待や産後うつを防ぐ役割も期待される。子育て世代に直接届く「経済的支援」ではない。
元議員が「3年以内に全家庭に実現する」などとX(旧ツイッター)に書き込むと、思わぬ反応があった。
「むしろ障害児支援や病児保育を充実して」「保護者が休める環境づくりが最優先では」――。賛成を上回る勢いの反対論が出た。
集会に参加した日本維新の会の金村龍那衆院議員は「最適な支援につなぐのが子育てケアマネだ」と導入を唱えていただけに、ネットの声に驚いたという。
子育てのニーズは多様だからこそつかみにくい。政治の訴えは誰にでもわかりやすい経済的支援に偏りがちだ・・・

・・・少子化や持続可能な社会づくりに詳しい日本総研の村上芽チーフスペシャリストは「子育てしにくいと感じる根本的な原因は一つではない」と語る。「雇用・労働環境など経済的支援では解決できない課題も含め、長期的な議論が必要だ」と強調する。
たとえば、経済的支援では改善しない男性を中心とした長時間労働の問題。育児の負担が偏り、孤独な子育てに悩む女性は多い。
休息や気分転換に子どもを一時預けたいとの要望は強い。自治体によっては保育園などで生後6カ月程度から一時保育する制度があるが、都市部では予約枠がすぐに埋まりがちだ。
枠を増やすのに壁になるのは保育士不足だ。政府は処遇改善策に取り組むが、24年の平均月給は全産業平均に比べてなお8万円ほど低い。処遇改善は必要性が高い割に、子育て世帯が実感しやすい経済的支援に比べて目立たない。

麻生太郎政権で首相秘書官を務めた岡本全勝元復興次官は給付金などの経済的支援を念頭に「選挙を意識し、分かりやすい『花火』を打ち上げ過ぎだ。その手前にある問題や中長期の課題に目を向けなければ、政治と民意の間にずれが生じる」と話す。
翻って子育てケアマネを巡る反対論。そこには新たな政策よりも、目の前の問題の解決を優先してほしいとの思いがうかがえる・・・

コメントライナー寄稿第22回

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第22回「選挙投開票にも「働き方改革」を」が4月10日に配信され、15日にはiJAMPにも転載されました。
今年も夏に、参議院議員選挙が予定されています。現行制度では、投票時間は午後8時までと公職選挙法で定められています。これを午後5時までに繰り上げてはどうかと提案しました。

かつて投票時間は午後6時までだったのですが、投票率向上のため、1997年に午後8時までに延長されました。しかし、2003年に期日前投票制度が導入され、投票に行く自由度は広がりました。昨年の衆議院選挙では、投票者数のうち約4割が期日前投票でした。
現行制度でも、投票時間の繰り上げは、各選挙管理委員会の判断で可能です。昨年の衆議院選挙では、全投票所のうち繰り上げを行った投票所数は約4割にも上っています。投票日はたいてい日曜日です。わざわざ日曜の夜に投票に行かずとも、昼か期日前投票に行けばよいのです。

「個々の市町村の判断で投票時間を繰り上げればよい」との意見もあるでしょうが、難しいのが開票作業の繰り上げです。他の市町村で続いている投票に影響を与える恐れがあるので、法定の午後8時以前の開票作業の前倒しはしにくいのです。法改正をして、投票時間を一律に午後5時までとすると、夕方6時に開票作業を開始できます。

全国の投票所には約30万人、開票作業には約20万人が参加しているとのことです。これだけもの人を、日曜日夜に長く残業させることはやめましょう。働き方改革は、ここでも必要です。

復興庁オーラルヒストリー

復興庁が、東日本大震災の教訓継承の一つとして、当時の関係者に聞いて「東日本大震災に関するオーラルヒストリー」を記録しています。
私も、2024年11月11日に受けました。それが文字になって、復興庁のホームページに載りました。ほかにも聞き取りを受けた人もいて、順次このホームページに載るとのことです。

復興庁は、すでに「東日本大震災 復興政策10年間の振り返り」をまとめました。これは立派な記録です。このときも取材を受けて、当時のことを話しました。
それに対し今回の聞き取りは、それぞれの人がその立場で、どのように見ていたか、どのように行動したかがわかります。偏っている恐れはありますが、「血が通っている」といったら良いのでしょうか。実感がわきます。

他の人の分を読むと、私の知らないことや、間違って覚えていたこと、忘れていたことがいくつもあります。このような記録を残すことは、価値があるとわかります。
私は、他人を傷つける恐れのある内容は削除したのですが、良いことばかりでは後世の参考にならないと思い、辛口のことも残しておきました。
ところで、原発事故対応や新型コロナ感染対応などは、このような記録は残っているのでしょうか。

朝日新聞オピニオン欄に載りました

今朝2月21日の朝日新聞オピニオン欄「複合災害、防災庁の役割は」に、私の発言「一元的窓口と司令塔機能、重要」が載りました。中林一樹教授と並んでです。
・・・能登半島地震の被災地は、復旧の途上で豪雨災害に見舞われた。複合化・激甚化する災害に対して、石破茂首相は防災庁を2026年度中に設置する方針を示し、議論が本格化している。今後起こりうる災害に備えるため、国や自治体に求められるものとは・・・

かなり詳しく取り上げてもらいましたので、記事をお読みください。私の主張の主な点は、次のようなものです。
・防災庁は内閣府防災部局の充実と復興支援を(政府に復興を支援する組織がない)
・防災庁は窓口の一本化と司令塔機能を(実働部隊はそれぞれに任せる)
・官邸に置く「本部」より「館」を構える長所がある(復興庁の経験)
・生え抜き養成は非効率、各省庁の専門家を生かせ(出戻り組の活用を)
・能登地震が人口減時代の復興の試金石(過疎地では元の街に戻すことは不可能)

朝日新聞ウェッブ版では、より詳しく述べています。「「ミスター復興」の反省と防災庁への注文 選択と集中で生活の再建を」(2月20日配信)
・・・石破政権肝いりの「防災庁」新設へ向け、検討が本格化している。複合化・激甚化する災害に平時から備え、緊急対応と復興支援の要となる新組織には、どのような体制が求められるのか。東日本大震災の復興に長年携わり「ミスター復興」の異名を持つ岡本全勝・元復興事務次官に、課題を聞いた・・・

例えば次のような文章。
「現在の内閣府防災と復興庁、そして東京電力福島第一原発事故の被災者支援部門を統合し、各統括官の下で役割を分担するのが、組織統制上もよいと思います」

コメントライナー寄稿第21回

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第21回「現代日本特殊論」が1月30日に配信され、2月4日にはiJAMPにも転載されました。

私が大学生だった1970年代に、日本文化論が流行りました。私も、わくわくしながら読みました。中根千枝著「縦社会の人間関係」、土居健郎著「甘えの構造」、イザヤ・ベンダサン(山本七平さんとのことです)著「日本人とユダヤ人」、ポール・ボネ(仮名で、日本人らしい)著「不思議の国ニッポン」。もっといろいろありました。京都大学人文研の日本文化論や文化人類学も。角田忠信著「日本人の脳: 脳の働きと東西の文化」も入れておきましょう。
これらは、明治以来続く日本文化特殊論ですが、その後に、日本経済・日本型経営特殊論が流行りました。どちらも、日本は世界の中で優れているのだと、うれしくなりました。

ところが、平成時代になって、本屋から日本人論が消えてしまいました。日本人は変わっていないの。それは、日本特殊論は、日本が西欧に追いつく際の心の支えとして読まれていたからではないでしょうか。
「西欧に追いつけ」と努力する際に、「和魂洋才」を信じたかったのです。ところが、西欧に追いついたことで、日本特殊論を掲げる必要がなくなりました。他方でアジア各国が経済成長に成功し、西欧化の成功は日本独自のものではなくなりました。ここに日本特殊論は終わってしましました。

近年は、違った日本特殊論があるように思えます。
日本人の勉強熱心、長時間労働は大きく変わっていません。しかし、経済は一流から三流に転落しました。日本はやはり特殊な国です。ところが現代の日本特殊論は、本屋に並びません。新しい特殊論は元気が出ないからでしょう。

日本人論が日本人向けの消費財であり、時代によって変化してきたことは、指摘されています。青木保著「日本文化論の変容」(1990年、中央公論社)、船曳建夫著「「日本人論」再考」(2003年、NHK出版)。
しかしこれらは、日本人論が流行した時代を取り上げていて、その後に廃れたことは書かれていません。そこを指摘したかったのです。