カテゴリーアーカイブ:社会の見方

マイケル・サンデル教授「働く尊厳、取り戻すために」

2025年2月25日   岡本全勝

1月24日の朝日新聞、マイケル・サンデル教授の「働く尊厳、取り戻すために」から。

トランプ米政権がとうとう再始動した。米政治哲学者マイケル・サンデルさんは、富の偏在にとどまらない尊敬や名誉、承認をめぐる不平等が、異形の政権を再来させたとみる。長く見過ごされてきた「暗黙の侮辱」とは何か。どうすれば働くことの尊厳を人々の手に取り戻し、民主主義を立て直せるのか。

――トランプ大統領の復権が示す、米社会の病根をどこに見いだしますか。
「この40~50年間にわたる新自由主義的なグローバル化は、トップ層に大きな報酬をもたらした一方、平均的な労働者には賃金の停滞と雇用の喪失をもたらしました。そうしたなか、エリートが自分たちを見下し、日々の仕事に敬意を払っていないという労働者の憤りが、トランプの成功の根本にあります。彼の復帰は、バイデン政権の4年間でもその問題が解決されずにきたことを示しています」

―あなたはかねて、民主党のクリントン、オバマ両政権が新自由主義に十分対抗しなかった、と批判してきましたね。
「彼らのメッセージはこうです。競争に勝ちたければ大学に行け。どれだけ稼げるかは、何を学ぶかにかかっている。努力さえすればなんとかなる、と。しかし、解決策を大学の学位に求めることは、その不平等をもたらした構造的な原因、つまり新自由主義的なグローバル化の欠陥に目をつむるものでした」
「彼らは、このアドバイスに暗黙のうちに含まれる侮辱を見落としていました。新たな経済で苦しんでいるのなら、また大学を出ていないならば、失敗は自分のせいだという侮辱です」

―仏経済学者トマ・ピケティ氏はあなたとの共著で、中道左派の失敗は、貿易や雇用という経済問題と格闘しなかったことにあると主張しました。
「民主党が苦しんでいるのは、金融規制緩和や自由貿易など新自由主義的な経済政策を受け入れた結果だ、という点でトマと一致します。ただ、強調点の違いはあるかもしれません。私は、経済の問題は文化の問題と切り離すことができないし、すべきでもないと考えます」
「不平等の拡大に伴い、能力主義的な個人主義が行き過ぎ、成功に対する態度が変質しました。頂点に立った人々は傲慢にも、成功は自身の能力と努力によるもので、苦しんでいる人はその運命に値する道を選んできたはずだと考えるようになりました。取り残された人々は経済的に苦しいだけでなく、高学歴のエリートに見下されているという屈辱感を募らせています」
「つまりは、社会的名誉や尊敬、承認、尊厳の欠如です。これらは経済の問題か、文化の問題かと問われれば、その両方です。人々は疎外感と、政治に声が届いていないという無力感にさいなまれました。トランプはその憤怒につけ込みました。だからこそ、労働の尊厳の回復が極めて重要なのです」
この項続く

30年という時間、体感と社会の変化

2025年2月24日   岡本全勝

2%成長が10年続くと」の続きにもなります。
30年は、私にとって、ついこの間のことのように感じられます。10年でも長いのに、なぜ30年間を短く感じるのでしょうか。「歳を取ると時間がたつのが早くなる」といいます。確かに、子どもから30歳までの時間の感覚と、40歳から70歳までの30年間の感覚は、後者が短く感じられます。しかし、それだけではないように思います。

バブル経済が崩壊した1991年は、36歳でした。その後の30年間、現時点だと34年間を、官僚として働いてきました。ずっと仕事をしていたので、その間の変化を感じないようなのです。
しかし、当時7歳だった娘は40歳で、その子どもが二人。2歳だった息子は35歳でその子どもが一人。彼ら彼女らにとっては、変化の大きい30年だったでしょうね。もちろん、10年をとっても、変化に富んだ10年ずつだったでしょう。

私が生まれたのは昭和30年、1955年。その30年前は大正14年、1925年です。それから大恐慌があり、日本は戦争への道を突っ走り、そして敗戦。それから立ち直った期間です。日本社会にとって、それは大きな変化でした。
1955年を起点に取ると、1985年までの30年間です。一人あたり国内総生産がアメリカの10分の1という「貧しさ」から、驚異の発展を遂げて、アメリカに追いついたのです。「経済成長外国比較2024

私がこの30年間を長いと感じないのは、個人として安定した職業生活と私生活を続けたこと。それとともに、日本社会の変化が小さかった(小さく感じた)からかもしれません。

航空燃料不足の原因

2025年2月24日   岡本全勝

1月30日の日経新聞に「晴れぬ航空燃料不足リスク 成田の「直接輸入」阻む旧習」が載っていました。原因は、原料の不足でも、国の規制でもないようです。お米も、生産量は減っていないのに、流通量が減っているとのこと。

・・・2024年のインバウンド(訪日外国人)が過去最多を更新した。国はさらなる伸長を目指すが、楽観はできない。昨夏に突如顕在化した航空燃料不足の再発リスクをいまも解消できていないからだ。何が壁になっているのか。背景を追っていくと、機動的な燃料調達を阻む石油業界の独特な旧習が見えてきた・・・

・・・国内空港に新規就航や増便できなかった海外エアラインは24年7月に週140便あったがいったん週12便まで減少した。ただ訪日需要の高まりで24年9月下旬は週63便まで再び増加。複数の関係者によると、現在は訪日客の受け入れが多い新千歳空港や台湾積体電路製造(TSMC)の進出に沸く熊本空港など一部空港では今後の増便に見合うだけの燃料調達の懸念が残っているという。資源エネルギー庁幹部は「局所的な問題になっているが、燃料不足リスクは解決していない」と指摘する・・・

・・・この動きと並行して、NAAと伊藤忠は石油元売り、全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)など成田空港の燃料施設利用者で構成する協議会のメンバーとの緊急オンライン会議に臨んだ。
このとき、一部の石油元売りが「安全第一」を盾にして緊急直接輸入にあらがった。
航空燃料の取引における品質管理は、英国にある非営利組織「ジョイント・インスペクション・グループ(JIG)」の定めが世界の標準となっている。最近の改定で、出荷地点で燃料を燃やして引火点を調べるなど「全項目試験」を実施すれば、受け入れる地での検査は外観、水分、密度、導電率の4項目をチェックする「簡易検査」ですませられるようになった。
業界団体の石油連盟もこの新規定を23年3月から採用していた。国交省とともに官民タスクフォースを仕切ったエネ庁の燃料供給基盤整備課長、永井岳彦は「このルールに従えばいい」との立場だったが、一部の元売りは日本でも厳重に検査するよう求めた。

航空燃料の輸入経路には2次基地と呼ばれる元売り各社の中間受け入れ施設でチェックを経て内航船で空港まで運ぶ。元売りはこうした取引に介在することで、収益が稼げる構図になっている。NAAと伊藤忠が外航船で直接空港に運ぶ前例をつくれば、大手元売りの独占的な商流が崩れるのではないか、との警戒感が募ったとしても不思議ではない・・・

国際郵便事情

2025年2月23日   岡本全勝

先日、数枚の文書を封筒に入れ、国際郵便でアメリカのワシントンまで送りました。念のために、書留にしました。便利ですね、配送状況をインターネットで追跡できるのです。

新高円寺駅前郵便局に出したのが1月15日。東京国際郵便局からアメリカに向けて発送されたのが1月16日。アメリカについたのが22日。USJFKAとあるのは、ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港のことでしょうか。直ちに税関検査のため税関へ提示され、23日に通関手続きに入りました。
ところが数日経っても、そこから進みません。ようやく、2月18日に配達されました。一月近くかかっています。
この郵便物だけが時間を要したとは思えず、大量の郵便物が滞っていたのでしょうね。

ヨーロッパ、校内スマホ禁止

2025年2月23日   岡本全勝

1月29日の朝日新聞に「欧州、苦肉の校内スマホ禁止 中高で広がる、法制化も議論」が載っていました。
私も、最後に引用した「たばこが特定の年齢や特定の場所でしか喫煙ができないように、スマホについても検討すべき時が来た」との意見に賛成です。お酒、賭博、有害図書などと同様に、未成年の発育を妨げるものは規制すべきです。

・・・ベルギーでは、日本の中学・高校にあたる多くの学校で、スマートフォンを禁止する動きが出ている。欧州各国にも広がり、それに反対するデモまで起きる事態になった。

11~18歳が在籍する、首都ブリュッセルから南西へ約30キロにあるこの学校では、約10年前から先駆的な取り組みとして、学校にいる間のスマホの使用を禁止している。ニコラ・スピルスティンズ校長(48)は「生徒同士の会話の時間が増え、SNSによるトラブルも起きにくい」と説明する。
スピルスティンズ校長ら教師の悩みの種になっているのがSNSだ。
利用者の好みに合わせて投稿が表示される「おすすめ」を見続けることで依存的になったり、同級生らの顔写真を使った「なりすまし画像」の投稿がいじめにつながったりするのだという。「スマホに依存すると、子どもは『孤立』する。校内だけでも使わせないのが一番の解決策だ」とスピルスティンズ校長は指摘する。
校内でのスマホ使用を禁止するとともに、SNSの危険性や影響、なぜ他人の写真を勝手に投稿してはいけないのか、といったことを教える授業も始めた。

一方、スマホの校内での使用を禁止する動きは、各国にも広がっている。ユネスコが2023年に発表した報告書によると、世界の4カ国に1カ国が、学校でのスマホの禁止を法律やガイドラインで定めている。
フランスもその一つで、18年に幼稚園から中学校までを対象に、校内でのスマホの使用を全面的に禁止する法律を定めた。オランダでは「勉強の邪魔になる」として昨年から、小学校から高校を対象に、スマホだけでなく、タブレット端末やスマートウォッチも禁止に。イタリアは昨秋から中学校までを対象に、デジタル教育などの教育目的も含めてスマホを全面的に禁止した。

世界保健機関(WHO)は、若年層のSNS依存を防ぐために、学校でのスマホ禁止は有効との見方を示している。
昨年9月に発表した欧州、中央アジア、カナダの11歳から15歳の約28万人を対象にした調査の報告書によると、全体の11%がSNSの使用を自ら止められない「依存状態」であることがわかった。男子の9%に比べて女子は13%と割合が高かった。
WHO欧州地域事務局のナターシャ・アゾパルディ・ムスカット国別保健政策・システム部長は、「たばこが特定の年齢や特定の場所でしか喫煙ができないように、スマホについても検討すべき時が来た」と指摘し、規制が必要との考えを示した・・・