カテゴリーアーカイブ:社会の見方

中国、もう一つの変化

2012年11月11日   岡本全勝

11月7日の朝日新聞オピニオン欄、賀衛方・北京大学教授の発言から。
・・毛沢東時代は、権威ある祖父と孫のようなもので、毛がやるといえば、良いことでも悪いことでも何でもできた。ほかの政治家を圧倒する力があった。鄧小平の時代は父と息子。一部の長老に配慮しながら、完全に意見が一致しなくても、たいていのことはコントロールした。
しかし、胡錦濤の時代は、明らかに違う。トップリーダーたちは、胡を長男とした兄弟のように見えます。全国人民代表大会(国会に相当)、宣伝、治安、経済など、それぞれが自分の担当分野を持ち、強い権限を行使するシステムです。しかも、兄弟どうし率直に議論をするというより、他人の領域には口を出さないようです。毛時代の文化大革命のような大きな間違いも起こりにくい半面、関係する領域が幅広い決断は避けてきたのではないか。体制の核心であり、強い抵抗も予想される政治改革には手をつけなかった・・
(これは、後継者指名にも現れている)
毛が選べば完全に決まった。鄧も江沢民、胡錦濤まで決められた。いまは、誰が決めているのか分かりづらくなっている・・
組織が大きくなると、各部門間の調整が、課題になります。また、当初の単一の目標を達成した後は、次なる目標しばしば広く多様なものとなるので、それら目標間の優先順位付けも、課題になります。
大きな組織は、いわゆる官僚制の弊害に陥り、それらをどう統合するかという問題でもあります。より上位の権威あるものが裁くのか、ドングリ同士が調整するのか。霞ヶ関でも、内閣でも、総合家電企業でも、中国共産党でも同じですね。これは、私のライフワークの1つです。日々、実践と勉強を重ねています。悩みも(苦笑)。
(日中対立での民衆の動き、社会の管理について)
・・中国政府は、民衆の声が怖いのです。日本と交流することで誰かに責められるのではないか、と。人々から選ばれて統治を担っている正統性がないから、対立が怖い。
・・当局は、治安維持の予算も人手も増やし、強化することで封じ込めてきました。しかし、あまりに強大化した部隊の怖さは、民衆だけでなく、権力者たちも気づいているでしょう・・
・・治安・警察、軍隊が大規模となれば、それを管轄する長の権力も強大になります。社会を管理しようと作ったものが、いまの秩序に対抗しうる存在になり、いつか最高権力に向かってくるのではないか。その恐怖から脱するには、健全な批判勢力を抱えながら、人々の声を政治に反映するシステムを作るように本気で取り組むことではないでしょうか・・

品質向上努力と売り込み

2012年11月10日   岡本全勝

11月10日の朝日新聞夕刊に、「うまいコメ、列島激戦」が載っていました。業界団体の食味検定で、平成23年度産のコメについて、5段階評価で26銘柄が最高の「特A」でした。
ニュースはこれから先です。なんと、トップ3は、北海道産の「ゆめぴりか」、奈良県産の「ヒノヒカリ」、福岡県産の「元気つくし」でした。北海道産も九州産も、これまでは、おいしくないと言われていました。さらに、我が奈良県のコメも、おいしいとは聞いたことがありませんでした(失礼)。
大和(やまと)豊作、米食わず」と聞いて育ちました。奈良県(大和盆地)は水が少なく、ため池が発達しました。奈良盆地が豊作になるような年は、他の土地では雨が多く不作だという意味です。これは食味について語った言葉ではありませんが、推して知るべしでしょう。
他方で、新潟県産の「コシヒカリ」は特Aですが、宮城県産の「ササニシキ」、秋田県産の「あきたこまち」は特Aに入っていません。関係者の猛烈な努力があるのでしょうね。
また、同日の日本経済新聞夕刊には、国産ウイスキーの輸出が増えているとの記事が載っていました。2011年の輸出額は約20億円、5年間で倍増しました。しかもかつては、台湾向けが6割だったのですが、昨年は、フランスに25%、本場イギリスに14%だそうです。
日本がどれくらい洋酒を輸入しているかも、気がかりですが、うれしいことです。舶来洋物ばかりをありがたがらず、国産も同等に評価しましょう。
目隠し試験(銘柄を隠して飲み比べる)をすると、その人の舌と鼻と喉が試されます。若いときに、失敗しました。有名な海外のウイスキーを出してもらって、「やはり××はおいしいですね」と言ったら、ボトルだけが有名ブランドで、中は安酒だったとか。こちらも、仕返しをしましたが(苦笑)。

世界の金融決済を支える仕組み

2012年10月31日   岡本全勝

10月29日から大阪で、金融業界で世界最大規模の国際会議「Sibos(サイボス)」が開かれています。主催者は、国際銀行間通信協会(SWIFT、スイフト、Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)です。
世界各国の金融機関の決済を行う通信網を、運営している組織だそうです。200か国、1万を超える金融機関が使っていて、1日あたり1,500万件の送金をしているそうです。本部はベルギー、幹部はオランダ人のようです。利用者は、イギリスとアメリカがダントツです。もっとも、国内取引に利用している国もあり、日本のように国内取引は別のシステムを使っている国とは状況が違います。
ここで取り上げたのは、これが純粋に民間の仕組みということです。この決済システム(正確にはそれを運んでいる通信システム)がなければ、現在の国際金融は成り立ちません。あるいは、危険きわまりないでしょう。民間が提供する「国際公共財」「国際的共通資本」です。

反射的回答、実績を問わない内閣支持率調査

2012年10月28日   岡本全勝

講談社のPR誌『本』11月号に、薬師寺克行・東洋大学教授が、「世論調査政治の落とし穴」を書いておられます。
1946年8月5日付の朝日新聞の世論調査の記事と、2012年6月6日付の世論調査記事との比較です。1946年(昭和21年)の場合は、「吉田内閣を支持しますか」と「もし近く総選挙があるとすえばどの政党を支持しますか」という、内閣支持率調査と政党支持率調査です。全国で20万枚の調査票を配り約13万票を回収しています。
論点はここからです。
吉田内閣の発足は5月22日、世論調査は7月以降に実施され、記事になったのは8月5日です。内閣発足から世論調査実施までに、1か月以上をかけています(準備などに時間を要したのかもしれません)。回答者(有権者)は、吉田内閣の働きぶりを見て、答えているでしょう。
一方、2012年(今年)の場合は、6月4日に内閣改造が行われました。午後1時半ごろに記者会見があり、皇居での認証式は17時、初閣議は20時40分です。朝日新聞による「全国緊急世論調査(電話)」は、6月4日と5日に行われ、記事は6日の朝刊に載っています。調査は、4日午後から5日夕方までに行われたと推測されます。
すなわち、回答者は新内閣の仕事ぶりも見ないで、回答を迫られています。薬師寺さんは、次のように書いておられます。
・・内閣改造の瞬間から実施される今日の調査は、回答者の何を引き出すことができるだろうか。新閣僚らはまだ何も発信していない。さらに多少は回答者が考える余裕や持ちやすい面接調査ではなく、即答を求められる調査である。大半の回答者は、突然かかってきた電話に驚き、十分な判断材料のないまま直近に得た情報や目にした映像などに頼って、反射的に「支持する」「しない」を回答しているのだろう・・
薬師寺さんは、元朝日新聞政治部エディター(政治部長)です。この批判には、重みがあります。

意見が違う者の間の同調と理解

2012年10月25日   岡本全勝

平田オリザ著『わかり合えないことから―コミュニケーション能力とは何か』(2012年、講談社現代新書)を読みました。表題にあるように、最近コミュニケーション能力が求められるけれども、わかり合うとはそんなに簡単なことではないことが、書かれています。
私流に理解すると、次のような主張です。
100人いれば、100人それぞれ考え方に違いがあります。いえ、2人でも、考え方が違います。夫婦の間ですら、嗜好に違いがあるのですから。洋食が好きか、和食が好きかとか。
その違いを無視して、相手のことをすべて理解しようとするのは、無理です。すべて理解する、あるいは理解してもらうのは、相手またはその集団に「同一化」「同調」することです。かつての、日本のムラ社会や会社への同調です。自己主張を殺して、大勢に従います。あるいは、奥さんの言うことに異論を唱えず、「服従すること」です(笑い)。
中高年の管理職が若者に求めるコミュニケーション能力は、実は「俺が言わなくても察してくれよ」「場の空気を読んで、反対意見を言うなよ」という、組織への同調です。意見が異なるものの間での、コミュニケーションではありません。
平田さんの主張に関しては、このHPでも取り上げました。「会話と対話と論戦と」(2012年7月14日の記事)。

私が考えるコミュニケーション能力とは、まず、自分の考えや好き嫌いを発言することです。黙っていて、「察してくれ」は、永年一緒に暮らしている夫婦でも難しい場合があります。次に、相手の主張を聞くことです。それを聞かずに、先回りして準備しても、間違っている場合があります。そしてお互いの意見を言い合った後、ここは同意するが、そこは同意できないということを、お互いに認識することでしょう。その後に、どちらの主張に合わせるかは、力関係によって決まります。会社では、部下は上司の意見に従い(いやなら辞める)、夫婦の場合は、夫が妻に従います。通常は。