メーカーの利益、小売店の利益、消費者の利益

日経新聞連載「経済史を歩く」8月11日は、「新宿カメラ戦争(1975年)、もう一つの流通革命」でした。
東京新宿を舞台に1970年代後半、カメラ専門店が、激烈な安売り競争を広げました。それは、現在の家電量販店の競争「新宿家電戦争」に続いています。
・・「ライバルとの競争もあったが、メーカーとの戦いが厳しかった」。ヨドバシ社長の藤沢昭和は振り返る。
ヨドバシの当初の仕入れ先は、各地の二次問屋やブローカー。手形決済が主流だったカメラの流通市場で、現金を早く手にしたい問屋や小売店が横流しした商品を「現金即日払い」でかき集めた。
メーカーが価格を統制し、利幅の厚い商売だった当時のカメラ業界で、ヨドバシの安売りは蛮行と映った。メーカーは一般小売店の抗議と価格維持を理由に、ヨドバシへの商品供給を拒む。「社員を順番にヨドバシに行かせて、店頭の自社製品を買い占めた。製造番号から仕入れ先を突き止め、圧力もかけた」。あるメーカーOBの証言だ。
結局は、大量販売と現金決済の前に、メーカーは屈した。夜中にこっそり搬入したり、ダミーの問屋を経由したりしながら、ヨドバシへの商品供給は膨らんでいく。1980年ごろまでには、主なメーカーとの直接取引が実現した。
オリンパスでカメラ事業を率いた小島佑介は「消費者の支持で食べているのだからメーカーの言うことを聞く必要はない、というのがヨドバシの主張。それは正論だった」と話す・・