カテゴリーアーカイブ:社会の見方

官民ファンド、新しい政府の役割

2014年2月24日   岡本全勝

2月19日の日経新聞に、「官製リスクマネー急増」という記事が載っていました。
・・政府が官民ファンドなどへの出資を通じたリスクマネーの供給を増やしている。政府出資に使う「産業投資」の残高は昨年末で4兆6069億円。前年末比13%増加し過去最大となった・・最近の財政投融資で、最も大きな変化が官民ファンドを通じた政府によるリスクマネー供給だ・・
そして、主な官民ファンドの例として、農林漁業成長産業化支援機構(2013年1月設立)、PFI推進機構(2013年10月)、クールジャパン推進機構(2013年11月)、インフラシステム海外展開支援のための機関(2014年度中を予定)が、上げられています。
「産業投資」は、記事では「政府がファンドなどへの出資金として使うお金。財政投融資の一種で、ファンドはこのお金を財源に企業に投資する。融資に比べ回収できる可能性が低くリスクマネーに分類される。財源は日本たばこ産業(JT)や国際協力銀行(JBIC)の配当金や納付金で、税金は原則使わない」と、解説されています。
財政投融資は、かつては第二の予算と呼ばれ、国が公庫や公団、地方自治体に低利な資金を融資することで、道路や住宅などのインフラ整備を進めました。郵便貯金などで集めた巨額の資金を、国策に沿った事業(法人)に低利融資します。税金では不足する予算(事業)を、融資で行うという知恵です。「国主導・追いつき型行政」の手法でした。使命を終えたということで、お金を集める側の郵政改革と使う側の財政投融資改革(資金運用部の廃止)が行われました。
この記事では、官民ファンドへの出資で、リスクマネーへの供給という、新しい時代の役割を担っているということでしょうか。こういうことを書いた財政学の教科書って、まだないのでしょうね。

仏典漢訳、2

2014年2月20日   岡本全勝

さて、その漢文経典を、古代日本人は朝鮮半島から学び、次には中国本土に学びに行き、輸入しました。そして、そのまま音読みしました。「如是我聞・・」を、「私はこう聞いた・・」とか「仏は次のようにおっしゃった・・」と翻訳せずに、「にょぜがもん」と読んだのです。「般若波羅蜜多」「羯諦羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦」も意訳することなく、「はんにゃはらみった」「ぎゃてい ぎゃてい はらぎゃてい はらそうぎゃてい」と声を上げます。別途、それを解説するために「説教」が行われたのでしょう。
キリスト教にあっても、ヘブライ語の聖書を、ギリシャ語やラテン語に翻訳しました。しかし、中世末期まで西欧の教会では聖書はラテン語でした。中世の西欧庶民も日本庶民も、それぞれラテン語聖書と漢文経典を、意味はわからず妙なる呪文として唱えていたのでしょうか。
また、単語を逐語訳することを見た日本人は、経典に返り点をつけることで、漢文を読む方法を編み出したのでしょう。訓読は、ここから来たと思われます。誠に省エネな翻訳でした。
仏典漢訳史には、鳩摩羅什や玄奘といった著名な翻訳家がいますが、日本語訳には、いないのでしょうね。

仏典漢訳

2014年2月18日   岡本全勝

船山徹著『仏典はどう漢訳されたのか』(2013年、岩波書店)が、勉強になりました。古代インドで成立した仏教の教え(経典)が、梵語(サンスクリット語)やパーリ語から、どのように中国語(漢文)に翻訳されたかです。
はるばるインドまで、仏典を求めて旅をした玄奘三蔵は有名です。鳩摩羅什の名前も、歴史で習いました。インドの仏典から漢文への翻訳は、後漢(西暦1世紀)から唐(9世紀)にかけてが、盛んだったようです。
全く言語が違う古代インド語を、中国語に移し替えます。単語の並びも違います、文法も違います。さらに、中国にはなかった概念を、持ち込まなければなりません。
翻訳が集団で行われたこと、みんなの前で解説しながら行われたことも多いこと、単語を逐語訳してそれから漢文に並び替えたことなど、「へ~っ」と思うことが、たくさん並んでいます。その過程は、原文(梵語)を読み上げる人、それを漢字で書き取る人、そして漢語に置き換える人、文字の順序を入れ替え通じるようにする人・・と、分業で成されます。
音訳したり、近い漢語を当てたり、新しい字を作ったり。仏、寺、塔、魔。精進や輪廻だけでなく、縁起や世界といった単語もだそうです。また、梵語にはRとLの違いがあり、漢語にはありません。
インドに旅することと、世界観というべき仏教を輸入することで、中国が世界の中心でないことも学びます。中華思想が、崩れるのです。
おもしろいです。お勧めします。

市場と国家、政策の設計と意図せざる効果

2014年2月15日   岡本全勝

最近話題になった、2つの政策を取り上げます。ある政策目的のために、民間の活動を誘導するべく制度を設計したのですが、意図とは違った結果も生んだ例です。
一つは、病床に関する診療報酬です。2月7日の朝日新聞は、「重症向け急性期病床4分の1削減へ 医療費抑制で転換」という見出しで、次のように伝えています。
・・症状が重く手厚い看護が必要な入院患者向けのベッド(急性期病床)について、厚生労働省は、全体の4分の1にあたる約9万床を2015年度末までに減らす方針を固めた。高い報酬が払われる急性期病床が増えすぎて医療費の膨張につながったため、抑制方針に転換する。4月の診療報酬改定で報酬の算定要件を厳しくする。
全国に約36万床ある急性期病床の削減は、診療報酬改定の目玉のひとつ。実際は急性期ではない患者が入院を続けるケースも目立ち、医療費の無駄遣いと指摘されてきた。急性期病床以外での看護師不足も招き、「診療報酬による政策誘導の失敗」といった批判も強まっていた・・
・・7対1病床は、高度医療を充実させるため2006年度に導入された。入院基本料は患者1人につき1日1万5660円。慢性期向け病床(患者15人あたり看護師1人)の1・6倍だ。全国の病院が収入増をねらって整備を進め、導入時の8倍の約36万床にまで増えた。一般的な病床の4割を占める。厚労省の想定を大きく上回る規模に膨らみ、この部分にかかる医療費は年間1兆数千億円とされる・・
これは、「7対1入院基本料」という制度です。入院患者7人当たり看護師1人という手厚い配置をすると、病院に高い報酬が支払われる算定方式です。急性期の高度医療を充実させるために、誘導策として導入されたのですが、当初の意図を超えて、必要以上に増えすぎたと批判されています。
2006年の4万床が、36万床にまで一気に増えたのですから、誘導策としては高い効果があったのでしょう。ありすぎたのかもしれません。しかし、軽症患者も入院するほか、看護師の争奪戦が起きて、看護師不足を招く一因になったという批判もあります(2月13日付読売新聞「医療費抑制へ、脱・大病院志向」)。

もう一つは、太陽光発電など再生可能エネルギーの普及策です。2月15日の日経新聞は「太陽光、発電しない672件の認定取り消しへ、経産省」という見出しで、次のように伝えています。
・・経済産業省は14日、再生エネでつくった電気を一定の価格で買い取る制度で、国の認定後も発電を始めようとしない672件の認定を取り消す検討に入った。発電に必要な太陽光パネルの値下がりを待って不当な利益を得ようとする事業者が多いためだ。
2012年に始まった買い取り制度は、太陽光や風力など5種類の再エネでつくった電気を一定価格で買い取ることを電力会社に義務づけている。太陽光は初年度に1キロワット時あたり40円(税抜き)という有利な価格が付き、参入が相次いだ。
この制度で電力会社に電気を買い取ってもらうには、事前に発電計画を提出して国の認定を受ける必要がある。認定さえ受けておけば、いつ発電を始めても20年間は40円で電気を買い取ってもらえる。太陽光パネルなどは急速に値下がりが進んでいるため、発電開始を遅らせればパネル価格の下落分だけ事業者の利益が膨らむ。
14日発表した調査結果によると、2012年度に認定を受けながら発電を始めていないなどの問題がある事業は738万キロワット分(1643件)。認定を受けた事業全体の発電容量の半分近くになった。
買い取り制度では、電力会社が電気料金に再生エネの買い取り費用を上乗せする。発電事業者の不当な利益を許せば、再生エネ普及という目的を達成できないまま、国民負担だけが膨らむ・・
これは、「認定後何年以内に事業を開始すること」とか「成果を事後評価し、一定基準を満たさない場合は、助成を取り消す」というような仕組みを組み込んでおけば、防げたのではないでしょうか。

経団連の法律改正働きかけ

2014年2月11日   岡本全勝

2月10日の日経新聞「企業とルール」、阿部泰久・経団連経済基盤本部長の発言から。
「商法、会社法関連を中心にロビー活動をしているそうですね」という問に対して。
・・この分野の政策提言に力を入れ出したのは、1990年代後半だ。特定の企業に限られていたストックオプションの一般化や、原則禁止だった金庫株の解禁など、企業活動に柔軟性を持たせる施策を推進してきた。国際化に対応する企業ニーズに合わせた立法を速やかに進めるため、当初は議員立法の形が多く、条文作りも手がけた。
政策への影響力を認めてくれたのか、法務省も審議会に声をかけてくれるようになり、この10年は議員立法を利用していない。直近の会社法改正案の審議でも、法務省と直接意見交換して主張をほぼ受け入れてもらえた・・