カテゴリーアーカイブ:社会の見方

生活実態の変化と意識の変化のズレ

2022年12月3日   岡本全勝

11月21日の日経新聞「私見卓見」、石寺修三・博報堂生活総合研究所所長の「「見識」と思い込む前に考えよう」から。

「生活者の価値観や意識は今どこに向かいつつあるのか」。この問いに、人は誰しも自分なりの感覚値や仮説を持っていることだろう。そして、それは流行や世論調査などを通して確信となり、個人の見識になっていく。しかし、実は変化の多くは目に見えないから、潮目が変わったことに気づかないことも多い。私が所属する博報堂生活総合研究所が1992年から続けている「生活定点」調査をみると、そのことがよく分かる。

例えば、次に示す3つのデータから考えてみよう。
昨今は学び直しがブームだ。しかし、98年に53%いた「いくつになっても、学んでいきたいものがある」人は2022年には35%に低下し、生活者の学びへの関心は過去最低の水準にある。
キャンプなどアウトドアブームがメディアをにぎわして久しいが「家の中よりも野外で遊ぶ方が好きだ」という人は、92年の45%をピークに低下し、22年は24%。逆に「休日は家にいる方が好きだ」とするインドア派は33%で、アウトドア派を上回る。
SDGs(持続可能な開発目標)への関心は高まっているようにみえる。だが、22年に「環境を考えた生活をすることは自分にとって快適だと思う」人の比率は49%と過去最低を記録した。「面倒だと思う」(51%)人の比率を下回っている。

いかがだろう。いくつかは読者のイメージと異なる動きだったのではないか。逆に今まで、ふに落ちなかった現象に合点がいった方もおられるかもしれない。もちろん、世の中の空気感を予想通りに反映するデータも多く存在している。大事なのは、どちらの変化の可能性も自覚しておくことだと考える。コロナ禍に限らず「数十年に一度」の出来事が頻発するなか、人々の価値観は思いもよらない方向に変化している可能性があるからだ。自らの「見識」が「思い込み」になっていないかを常に疑う姿勢は持ち続けていたい。

韓国、ひとりご飯

2022年11月29日   岡本全勝

11月19日の朝日新聞夕刊に「「悪くないね」 韓国、ひとりご飯の風景 友達がいない人…変わるイメージ」が載っていました。

・・・韓国ではかつて、ひとりでご飯を食べる人は良くないイメージで見られがちだった。「友達がいない人」といった具合に。でも最近は、ずいぶんと様子が変わってきている。

「おひとりさま対応」を売りに店舗を増やしている外食チェーンを、ソウル南部に訪ねた。
韓国で親しまれる「ポッサム」という料理。ゆでた豚肉を、キムチや他の野菜などと食べる。通常は2人分以上からの料理だが、その店先にはこんな表示があった。「1人ポッサム その感動をめざして」
店内にはカウンター席が並ぶ。お昼時、大学生や会社員らが訪れ、定番の「1人ポッサム」を注文していた。スマホ画面に目をやるなどしながら黙々と食事を終え、ささっと出て行く。
就職活動中の金俊怜さん(25)は時々訪れる。「友達がいない人」などと思われないよう、ひとりでの食事は避ける友人らが少なくなかったが、最近はそういうイメージは薄れたと感じる。「他の人の意見に縛られず、食べたいものを食べて、食事に集中できる。友達や家族との食事もいいけれど、自分だけで食べる時間も悪くないですね」
会社員の男性(28)は「前は恥ずかしいイメージもあったけれど、最近はひとりで食べられる店が増えてきた」とうれしそうだ。

韓国では「食事はされましたか」があいさつの言葉になるほどで、一緒に食事をすることで人と人との距離がぐっと近づく。その一方で、ひとりで食事をする人には否定的なイメージがついてまわった。それが変わってきたのはなぜか。
韓国社会の構造的な変化が背景の一つとみられる。少子化が深刻で核家族化も進み、単身世帯が3割以上を占めるようにもなった。
「1人ポッサム」の朴さんは言う。「親の世代は大家族で『みんなで一緒に』という文化だったが、我々の世代は単身世帯が増えて変わった。『個人化』が非常に進んでいる」
「個人化」は、若い世代を象徴するキーワードだと言えそうだ。経済学者で韓国・中央大教授の李正熙さんは「若い世代が就職時に強く望むのは時間通りの退勤。それだけ、自分の時間を大事にしたいということです」と指摘し、ホンパプの一般化の背景に、特に若い世代の価値観の大きな変化を読み取る。

韓国では飲み会で、ビールに焼酎などを混ぜて飲む「爆弾酒」で盛り上がるのが定番だったが、最近はそうしたスタイルになじめない若者も少なくない。50代の公務員は「私が若いころは先輩に『今日はいくぞ』と言われたら、『はい』以外の返事はなかった。今の若い世代にそんな考えは通じません」・・・

最後の段落は、日本と同様ですね。

根津美術館、将軍家の襖絵展

2022年11月28日   岡本全勝

キョーコさんのお供をして、根津美術館の「将軍家の襖絵展」に、行ってきました。将軍家と言っても、室町幕府、足利将軍家です。
その屋敷のふすま絵は残っていませんが、文献から復元した姿を見せてくれます。各部屋に何が書かれていたかが記録されていて(これもすごいことです)、それに近いと思われる現存する絵を展示してあるのです。中国への憧れ、水墨画が主流だったことが分かります。安土桃山時代を経て、このような水墨画と、絢爛たるふすま絵とが描かれるようになったのですね。
もっとも、ロウソクや燭台の光では、私たちが見るようには明るくはなかったでしょう。
展覧会は12月4日までです。

根津美術館の庭は、紅葉の真っ盛りで、たくさんの人で賑わっていました。外国からと思われる人も多かったです。都会の真ん中とは思えない、すてきな場所です。
ただし、庭のあちこちに、日本と東洋の石造や金銅製の古美術品が点在しているのは、よいと思う人と、過剰だと思う人がいるでしょう。

タクシー運転手不足

2022年11月28日   岡本全勝

11月18日の日経新聞が「タクシー運転手、都内は32年ぶり最少 収入低迷響く」を伝えていました。
・・・新型コロナウイルスの影響でタクシードライバーの減少が深刻化している。全国では2021年度末にコロナ禍前の19年度に比べて2割近く減り、減少が続いている。東京都内では32年ぶりに過去最少を更新した。政府が水際対策を緩和し、インバウンド(訪日外国人)の旅行需要の回復が期待される。ドライバー不足が続けばこうした旅行需要などの回復に影を落としかねない・・・

11月20日の朝日新聞は「タクシー運転手、ソウル哀歌」を伝えていました。
・・・空車のタクシーがなかなか来ない。最近、韓国のソウルでよく聞く嘆き節だ。新型コロナ禍の規制がなくなり、街に出る人が増えたが、「市民の足」の担い手は苦境にあるようだ・・・
・・・「タクシー大乱」 韓国メディアには、こんな言葉がおどるようになった。
韓国のタクシーは運賃が割安だ。今のソウルでの初乗り2キロは3800ウォン(約380円)。これでもずいぶん上がったが、韓国国土交通省によると、20分ほど乗った時の料金は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均の「38%程度」の水準だという。
そんな中をコロナ禍が襲った。その後は、世界的な原材料価格の高騰などで物価高も加速している。「今は、なんとか夫婦で食べていけるぐらいの稼ぎがやっとだよ」。この道で40年のソウル近郊に住むタクシー運転手の男性(73)は言う。現在の月収は、150万〜200万ウォン(約15万〜20万円)程度。息子2人は独立し、教育費などがかからなくなったため生活はできているが、「重労働だし、若い世代はやりたがらないだろうね。昔は基本料金でジャージャー麺を食べ、コーヒーも1杯飲めた。物価が上がった今じゃ、そうもいかない」
ソウル市などによると、タクシー運転手の平均月収は220万〜250万ウォン(約22万〜25万円)程度。ソウル首都圏で家族の暮らしを支えるには十分とは言いがたい。そして、男性が「自分はもう年だから考えなかったけどよく聞くね」と言うのが、運転手たちの「離脱」だ・・・

かつて北欧に行ったときに、タクシー運転手がアジア系の人が多いことに驚きました。移民が就きやすい職業だと言うことでした。低賃金なので、移民の職業になるのでしょう。

介護福祉士養成、需要増なのに減少

2022年11月25日   岡本全勝

11月17日の朝日新聞に「ケアワーカーがいなくなる?:1」「介護福祉士育む場、相次ぐ閉鎖」が載っていました。

・・・今年の3月、介護福祉科を唯一の学科としていた浦和大学短期大学部(さいたま市)が閉学した。運営法人の久田有・理事長は「学生数の減少に歯止めがかからず、苦渋の決断だった」と振り返る。学生が減っても教員を減らすわけにはいかず、人件費が経営を圧迫していたという。
久田理事長は、学生減少の背景に、少子化で若者が減っていることに加え、「仕事に見合った給与水準になっておらず、社会的評価が低い」こともあると考えている。
介護保険制度では、事業所に支払われるサービスの対価も、必要な職員配置なども公的に定められ、事業所が給与を引き上げる余地は乏しいのが現実だ。厚生労働省の21年調査によると、医療・福祉施設などで働く介護職員の所定内給与は平均で月23万6千円ほど。訪問介護でも約25万8千円で、全産業平均(約30万7千円)を大幅に下回る。

公益社団法人・日本介護福祉士養成施設協会(東京都)によると、会員の専門学校や大学、短大などを対象とする調査では、今年度の入学者は310校あわせて6802人(前年度比381人減)で、調査を始めた14年度(377校、計1万392人)以降最少に。会員の学校数310は前年度より10少なくなった。
協会に記録が残る1988年度以降、入学定員の総数が最多だったのは2006年度(約2万7千人)。調査を始めた14年度から減少が続いた入学者数は、17年に「介護」の在留資格が創設されたことなどで一時は増加に転じたものの、新型コロナウイルスで留学生の数も落ち込んでいる。
介護福祉士の国家試験を受ける人も、ピークの14年(約15万4千人)と比べて近年は5~6割にとどまる。同協会事務局長の山田洋輔さんは「介護福祉士の養成は、介護の質を高めるためにも不可欠。経営維持のための財政的な支援を、国には考えてほしい。このままでは介護の人材不足はさらに深刻になりかねない」と訴える・・・

・・・2000年4月に介護保険制度が始まってから、介護職員は増え続けてきた。しかし、現場を支えてきたベテランが高齢化する一方で、有効求人倍率はホームヘルパーで約15倍(20年度)などと高止まりしており、将来の介護職を育てるはずの養成校にも学生が集まらない。
厚労省によると、40年度に必要な介護サービスをまかなうためには、約280万人の介護職員が必要になる。19年度(約211万人)と比べて約69万人足りない計算だ。
高齢者人口が最多となる40年ごろに向けて増え続ける高齢者に対し、すでに現役世代(20~64歳)の減少は加速している。それでも介護職員を増やさなければ、誰のケアも受けられない人が大量に生まれる事態すら起きかねない・・・