カテゴリーアーカイブ:社会の見方

『中華を生んだ遊牧民 鮮卑拓跋の歴史』2

2023年6月28日   岡本全勝

中華を生んだ遊牧民 鮮卑拓跋の歴史』の続きです。
紹介文には、「中国の歴史は、統一王朝時代と分裂時代の繰り返しである」とも書かれています。分裂した諸王国の中を勝ち抜いて、英雄が統一王朝を打ち立てます。ところが多くの王朝で、その安定は長くは続かず、また分裂が始まります。そこから次のようなことを考えました。それぞれ当たり前のことで、言い古されたことですが。

一つは、英雄が一人で安定した権力を作るわけではないことです。
大きな権力のためには、それを支える人、組織、そしてそれを養う資源が必要です。確かに英雄(王や皇帝)がいないとまとまりませんが、彼を支えるたくさんの人がいて、その人たちも権力(部下と組織と資源)を持っています。
別の見方をすると、それら有力部下たちに支えられているのが、王です。王にそれだけの能力とやる気がないと、部下が政治権力を握ります。さらに部下たちがその気になれば、王を廃止して取って代わります。
歴史書はしばしば英雄や王たちの歴史として書かれますが、実質はそのような権力関係から成り立っています。王や皇帝、将軍の系図が載っていますが、初代と中興の祖以外は、どのような功績があったか知らないことが多いです。権力が安定していたら、判断することもなかったのでしょう。

もう一つは、政権獲得、天下統一という目標があるうちは関係者は団結しますが、その目標を達成すると、分裂が始まることです。
権力を獲得する際の要素は、かつては多くの場合に武力です。ところが、政権を取ると、部下たちが武力に訴えては困るので、それを禁止し、秩序を守らせるために例えば儒教を奨励します。政権獲得期と政権維持期では、必要な力と思想が異なるのです。
しかし、政権獲得に参加した有力者や政権維持に参加している有力者は、「俺だって、王のようになれるはずだ」と考えます。隙あらば、自分の権力を大きくすることを考え実行します。ここに、分裂が始まります。

幸福度指標

2023年6月28日   岡本全勝

5月26日の読売新聞が「G7 政策立案の指標見直し 脱経済偏重「幸福を追求」」を載せていました。

・・・今月11〜13日に新潟市で開かれた先進7か国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で、「幸福の追求」が議論された。経済成長に限らず、様々な側面から幸福度を捉え、政策に生かそうとする動きが広がっている。
G7で話し合う議題は、議長国の日本が設定した。金融システムの安定やウクライナへの支援といった喫緊の課題に加え、幸せを実現するための政策をテーマにしたのは、国内総生産(GDP)の成長が重要であることに変わりはないものの、それだけでは限界があるとの問題意識からだ。
GDPは経済の大きさを測る指標として各国が重視しているが、無料のデジタルサービスや無償のボランティアなどは反映されない。経済規模が大きくなっても環境が悪化したり格差が拡大したりすれば、人々の幸せにはつながらない。
G7では、GDPでは表すことのできない、多様な価値を重視した政策のあり方を巡って意見が交わされた。13日に採択された共同声明では、「幸福をよりよく評価するための指標を、いかに実用的かつ効果的な方法で政策立案に組み込むか、検討する必要がある」との文言が盛り込まれた・・・

・・・他方、すでに多くの先進国や国際機関は、幸福度を表す指標を作っている。幸せの程度は主観的な感情であるため、「最近の生活にどの程度満足していますか」といったアンケート調査で測定。失業率や平均賃金など、幸福度と関係の深い統計データを組み合わせ、指標群(ダッシュボード)として示すのが一般的だ。
政策現場での動きは、2008年のリーマン・ショックの後に目立つようになった。過度な利益の追求が経済危機を招いたとの反省から、「豊かさ」を見直す機運が高まった。
経済協力開発機構(OECD)は11年、各国の生活の豊かさを示す「より良い暮らし指標」を作成した。国民生活に密接に関わる住居や仕事、健康など11項目で構成する。
また、国連の研究組織は12年以降、14年を除いて国ごとの幸福度を測定し、結果を「世界幸福度報告書」として公表している。
測定では、米ギャロップ社の世論調査をベースに「人生選択の自由さ」などを評価し、1人当たりGDPや健康寿命など六つの要素をもとに数値化する。
今年のランキングで、日本は137の国・地域のうち47位だった。これまでの順位を見ても40〜60位台で推移しており、先進国では下位にある。上位に北欧諸国が目立つのは、毎年の傾向だ。
もっとも、このランキングには批判が多い。日本をはじめアジア諸国では、人生に対する評価を聞かれて「普通」といった中間的な回答をすることが多く、個人主義的な傾向の強い欧米諸国に比べ、数値が高くなりにくいとされる。幸福度の捉え方は、社会や文化によって異なるのが実情だ・・・

「自分たちを規制してほしい」起業家

2023年6月25日   岡本全勝

6月6日の日経新聞オピニオン欄、村山恵一コメンテーターの「新種の起業家アルトマン氏 ルールの破壊よりも生成」から。

・・・「大企業や民間部門の代表者がやってきて『自分たちを規制してほしい』と懇願した例を思い出せない」。5月16日、米議会の公聴会に出席した議員は「歴史に残ることが起きている」と語った。
視線の先には、生成AI(人工知能)のChat(チャット)GPTを開発した米オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)がいた。
同氏はこの日、高度なAIの開発や提供にライセンス制を導入するよう政府に提案した。国際原子力機関(IAEA)を引き合いに出し、世界的な規制の必要性にも踏みこんだ。
自社の手足を縛りかねない主張を堂々とする。確かに、そこにはかつてない起業家の姿があった。

異端、独走、破壊……。スポットライトを浴び称賛される起業家は長らく、そんな単語で形容されてきた。規制についても「政府は引っ込んでいた方がいい」というのが基本姿勢だったろう。
「言論の自由の絶対主義者」を自称し、巨額で米ツイッターを買収すると、荒っぽいかじ取りをみせた米起業家イーロン・マスク氏がひとつの象徴といえる。

アルトマン氏はどうか。人より賢い汎用人工知能(AGI)がもたらす恩恵を説く一方、リスクも素通りしない。人類絶滅を危惧する共同声明にも署名した。
しかるべきルールの整備があってこそイノベーションは実現する。そう信じているはずだ。世界の政策担当者との対話に時間を割いている。4月に来日し、5月には欧州の各国を巡った。
「オープンAI株は持っていない。好きだから(この仕事を)やっている」。種類株で支配的な議決権を握る米グーグルや米メタの創業者とはこの点も異なる。
2015年に共同創業したオープンAIは当初、非営利だった。広く社会のためになるAIをつくるためだ。研究開発に費用がかさむと知ると、営利企業の性格もそなえたハイブリッド組織に改め、米マイクロソフトと手を組んだ・・・

「日本語の発音はどう変わってきたか」

2023年6月21日   岡本全勝

釘貫亨著『日本語の発音はどう変わってきたか 「てふてふ」から「ちょうちょう」へ、音声史の旅』が面白かったです。お勧めです。
題名の通り、奈良時代から現代までの、日本語の発音の変化を説明したものです。奈良時代には母音が今より多かったこと、漢字を輸入した時期によって読み方が異なることなどは知っていましたが、この本でよくわかりました。
どうして、奈良時代の発音がわかるか。レコードもなかったのに。江戸時代から始まったその謎解きは、推理小説でもあります。
室町末期に宣教師が来て、アルファベットで日本語を表記しています。これは、有力な手がかりになります。すると、羽柴秀吉は、ファシバフィデヨシと発音したのです。

私たちは、ひらがなを50音図で表記します。縦に母音を5つ並べ、横に「あかさたなはまやらわ」を並べて、すべての(濁音などを除く)ひらがな(日本語の発音)を表記するのです。これは、偉大な発明です。これを作ったのが、江戸時代の契沖です。それまでは「いろは歌」で音を覚えたようです。では、この「あいうえお」の順番はどのようにして決まったか。インドからの輸入だそうです。

学問の成果を新書程度の短さにまとめて、素人にわかるように解説することは、難しいことです。でも、私たちには、とても役に立ちます。

こども誰でも通園制度

2023年6月20日   岡本全勝

6月3日の朝日新聞東京版に「「誰でも通園」10分で100人超 文京区事業へ申し込み殺到、面談予約停止に」が載っていました。

・・・文京区で、幼稚園や保育園に通っていない子どもを週1〜2回、保育所で定期的に預かる事業が7月に始まる。区が今月1日に利用申し込みを開始したところ、初日だけで100人以上の申し込みがあり、事前に必要な面談の予約を一時停止する事態になっている。
区によると、国が「異次元の少子化対策」として挙げている「こども誰でも通園制度(仮称)」の実施に向けたモデル事業で、来年3月まで期間限定で実施される。認可保育園のように、保護者が就労しているかどうかなどといった状況にかかわらず定期的に利用できるのが特徴だ・・・

考えてみたら、そのような需要はありますよね。