カテゴリーアーカイブ:社会の見方

「迷惑掛けさせていただきます」2

2023年11月5日   岡本全勝

迷惑掛けさせていただきます」の続きです。読者から、次のような指摘がありました。
・・・「させていただきます」ことばは、相手に毅然とした態度を示して反論させないために使うことがあります・・・

そうですね。時代劇で妻が夫に対し、「実家に帰らせていただきます」と発言する際は、「あなたとは一緒に暮らしていけません。離婚です」と宣告しているのですよね。
「お皿を下げさせていただきます」のように、相手に奉仕をする際に同意を求めるのとは全く違う使い方です。夫がなだめようとしても、「させてやらない」と言っても、妻の決心は固く初志を通すでしょう。
「させていただきます」は、状況によって意味合いが異なるようです。
では、「発売を中止させていただきます」は、相手に反論させない毅然とした態度でしょうか。すると、「殴らせていただきます」も、あり得ますね。

もっとも離婚宣告の場合も、夫が妻に対して「離婚させていただきます」とは発言しないでしょう。これは、かつての男女の役割や地位の違いを反映しているのだと思われます。

「迷惑掛けさせていただきます」

2023年11月1日   岡本全勝

私の嫌いな言葉「させていただきます」についてです。許可を求める場合は納得します。身の回りのことについて奉仕してくれる場合、例えば食事が終わった後、店員さんが「お盆を下げさせていただきます」と言うのは、おかしくないですよね。
でも、相手に迷惑を掛ける、不便を強いる場合に、「させていただきます」と表現されると、「ほんまに相手のことをおもんぱかっているのか」と疑問に思います。

スイカとパスモ(電子貨幣つき乗車券)の発売停止のお知らせに、次のような文章があります。
「世界的な半導体不足の影響を受け、6 月8 日(木)より、無記名の「Suica」及び「PASMO」カードの発売を一時中止させていただいております。」
何か、おかしいと思いませんか。相手に不利益を与える場合に、「させていただきます」はおかしいでしょ。英語の案内では、そんな表現ではありません。

「あんたを殴らせてもらいます」は、新喜劇や漫才の世界です。そのように言われれば「いやです」と答えますよね。「取りやめさせていただきます

日本語教師が足りない

2023年11月1日   岡本全勝

10月20日の日経新聞夕刊に「日本語教師が足りない 外国人留学生「6割増目標」に影」が載っていました。世界から日本に来てもらうためには、日本語教室は必須です。これまで、もっぱら欧米に行って文化を「輸入」をしてきて、外国から来てもらう文化の「輸出」には取り組んでこなかったからでしょう。

・・・新型コロナウイルス禍が収束し各所で人手が足りない状況が目立ってきた。外国人が日本語を学ぶ場に関しては教師不足が深刻さを増す。岸田文雄政権が掲げる「共生社会」の実現に向けて足かせとなる可能性がある・・・

・・・留学生らが日本語を学べる場は「日本語教育機関」と呼ばれる。文化庁によると、各地の大学やインターカルトのような日本語学校、地方自治体が独自に設けている教室などを含めて合計すれば全国に2700カ所超ある。
日本語を学ぶ人の数は直近2022年度の時点で21万9千人だった。あくまでコロナ禍からの回復途上の数字だ。19年度実績でみると27万人超いた。
教える人は慢性的に足りないといわれてきた。日本語教師の数はこの10年で3割増の4.4万人ほどに増えてきてはいる。
それでも生徒の数に比べれば伸び率は小さい。日本語学校や大学が東京や大阪など大都市部に集中しているため、地域間の偏りがあることが分かってきた・・・

・・・政府は教師の数や待遇を直接テコ入れするよりも「教育の質」を担保する施策に比重を置いてきた。
日本語教育機関認定法が5月に成立した。日本語教師を民間の資格から国家資格に格上げする方針を柱に据え「登録日本語教員」という資格の新設に動いた。
新たな制度は24年4月に始まる。基礎・応用の筆記試験の合格と実践研修(教育実習)の修了が付与の要件になる。国がお墨付きを与えた人と機関のみが原則教えることができる仕組みに変えた。
日本語教育の水準のばらつきを改善し、統一の基準を設けて質を底上げする。法整備の狙いに異論は少ない。
それでも現場からは人手不足を和らげる効果は見込みにくいとの声があがる。資格取得の負担の重さなどから現役教師の離職を招く懸念は残ったままだ。職種のハードルが上がったとの受け止めが広がり、なり手不足に拍車がかかる恐れもある。量と質の両面の模索はまだ続く・・・

富む前に高齢化するアジア

2023年10月29日   岡本全勝

10月17日の日経新聞オピニオン欄「富む前に高齢化するアジア」から。20年ほど前に、日本が、欧米各国に比べて高齢化社会から高齢社会への移行期間が短く、「早く高齢化する」と言われましたが、アジア各国はもっと早いのですね。経済成長だけでなく、年金制度の成熟化などの問題もあります。

・・・問題の深刻度を理解するため、タイの変化を高齢化の進行で知られる国々と比較してみたい。2002年から21年までの間に、タイの人口に占める65歳以上の割合は7%から14%に拡大した。一般的にこの割合が7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」と呼ばれる。
この移行期間が日本は24年、米国は72年、フランスは115年かかった。タイはこの3カ国と異なり、豊かになる前に老いを迎えている。タイでは21年の1人あたり国内総生産(GDP)が7000ドル(現在の為替レートで約105万円)だった。日本の高齢化率が同程度だった1994年、所得水準はドルの実質的な価値に換算して5倍近く高かった。

タイが抱える問題は、経済・社会面で非常に重要なアジア地域での傾向を浮き彫りにしている。ベトナム人の所得水準はタイ人の約半分だ。ベトナムが高齢化社会から高齢社会に移行するには17年程度しかかからないだろう。移行にそれより時間がかかっているインドネシア(26年)やフィリピン(37年)といった国でも、他国と比べてはるかに低い所得水準で高齢社会を迎えるとみられる。東南アジアは地域として2042年に高齢社会に突入する見通しだ。
南アジアはそこから10年近く持ちこたえるだろうが、地域格差は大きい。スリランカは、現在の経済危機以前から平均所得がタイの約3分の1にとどまり、28年には高齢社会になると予測されている。世界最多の人口を抱えるインドの一部はすでに老いに直面している。南部ケララ州では人口の17%が60歳以上だ。50年までに貧困国で予想される高齢者人口の増加のうち、70%はアジアが占める・・・

「先の大戦」、内容と名称2

2023年10月25日   岡本全勝

「先の大戦」、内容と名称」の続きです。
読者から、『決定版大東亜戦争』(下)、庄司潤一郎執筆第13章「戦争呼称に関する問題―先の大戦を何と呼ぶべきか」を教えてもらいました。別の著者からいただいていたのが本の山にあったので、早速、その章だけ読みました。

36ページにわたる、詳しい解説です。
当時の政府が大東亜戦争と名付け、占領軍がその名称を禁止したこと。それを避けるために、太平洋戦争という名称が使われ始めたこと。しかしそれでは、それ以前に始まっていた中国での戦争が含まれないこと。左翼系研究者から15年戦争との名称が提起され、その後、アジア・太平洋戦争という名称が生まれたことなどです。
地理的にどこを含むのか、時間的にどこまで含むのか。名称をつけるとして参戦国を入れるのか、戦争目的をどう理解するのか、そして歴史的にどのように位置づけるのか。論者によって意見が異なります。

とはいえ、政府がいつまでも「先の大戦」と呼び続けるのは問題でしょう。しかし、難しいですね。国民や識者に意見の違いがあり、それはそれとしつつ名称をつけるしかありません。それをどのような手順できめるのか。政治的、行政的に類例はありますかね。文科省が検定する教科書での記述が、一つの参考になります。

私はその点で、「新型コロナウイルス」という名称もおかしいと考えています。次に、新しい新型コロナウイルスが広まったときに、どのような名称をつけるのでしょうか。こちらの方は、学者に決めてもらったら良いと思いますが。