カテゴリーアーカイブ:社会の見方

5人に1人が「ひとり死」

2024年1月10日   岡本全勝

NHKニュースウェブには「「絶対に“無縁仏”にしてはいけない」その時、友人たちは…」(2023年12月21日)が載っています。
12月25日の日経新聞「1億人の未来図」に「5人に1人が「ひとり死」後顧の憂い、なくせる社会に」が載っていました。新しい社会の課題です。

・・・未婚率が上昇し、2050年には30万人を超す人が生涯結婚しないまま亡くなる見通しだ。ほぼ5人に1人が「ひとり死」を迎えることになる。後顧の憂いをなくそうと、血縁によらない埋葬や、第三者に遺品処理を委ねるケースが増える。誰しも同じ状況に置かれる可能性はあり、社会が向き合う必要がある・・・
・・・みずほリサーチ&テクノロジーズの試算では、未婚で亡くなる65歳以上の人は50年で約32万人となる。20年に比べ4.1倍に増える。高齢者の総死亡数に占める割合は18.1%と3倍弱の水準となる。
背景には未婚率の上昇がある。国立社会保障・人口問題研究所によると、50歳時点での男女の未婚率は1990年で4〜5%台。20年には男性で28.3%、女性で17.8%に高まった。経済力や子育てへの不安、女性の社会進出、生活の利便性向上など様々な要因から「結婚して当然」の意識が薄れた。
5人に1人が「ひとり死」に至れば、社会や慣習への影響は小さくない。
身寄りなく暮らす人の異変をどう察知するか。孤立は認知症や孤独死のリスクを高める。
同研究所の22年の調査では、一人暮らしの高齢男性の15%は2週間内の会話が1回以下にとどまった。女性の3倍、高齢夫婦世帯の5倍。みずほリサーチ&テクノロジーズの藤森克彦主席研究員は「男性は地域との接触が少ない」とみる・・・

技術革新、集団の同質性と多様性

2024年1月9日   岡本全勝

「日経ビジネス」2023年12月8日の「シリコンバレーはなぜ技術クラスターとして成功したのか」が興味深かったです。詳しくは、原文を読んでいただくとして。

米国のIT技術集積地といえば、西海岸のシリコンバレーが浮かびますが、戦後間もないころは東海岸マサチューセッツ州の128号線沿い地域の方がイノベーションでは注目されていました。なぜシリコンバレーはテクノロジークラスターとして成長したのに、東海岸は衰退したのか。その比較が表になって載っています。

東海岸の特徴は、各企業内部が強い絆で結ばれていることです。また、規模が大きい企業が多く、組織構造はヒエラルキーで官僚的なので、情報の流れは垂直になります。企業内では情報交換がありますが、企業間の情報交換は少ないのです。企業内では忠誠心が重んじられ、企業間の人の移動は少なく、労働市場の流動性は低い。服装も背広・フォーマルといった厳しいドレスコードが保たれています。

これに対し西海岸の特徴は、企業間の壁が薄くて開放的なネットワークであることです。企業内は強い絆で結ばれているが、企業間は弱い絆で結ばれていて、企業の壁を乗り越えて水平な情報交換ができます。シリコンバレーは起業家が新しいベンチャーを立ち上げやすい環境で、スタートアップ企業の生態系(エコシステム)として知られています。老舗企業もありますが、大企業を象徴するヒエラルキーや官僚主義を極端に嫌うカルチャーでもあります。服装はカジュアルで背広は敬遠されます。企業間の情報交換も盛んなことから、企業間の人の移動も激しく、労働市場の流動性は高いのです。

同質性の強みと弱みは、第二次世界大戦での日本軍とアメリカ軍との違いでも指摘されています。「社会学者が斬る「失敗の本質」日本はなぜ戦争に負けたのか」(日経ビジネス12月15日)

欧米の最低賃金は時給で約3000円

2024年1月8日   岡本全勝

12月20日の日経新聞「そこが知りたい 2024年を読む」、柳井正・ファーストリテイリング会長の「世界で賃上げ 企業の成長に直結」から。

――かねて日本企業の賃金水準の低さを指摘しています。ファストリは3月、国内従業員の給与を最大4割上げ、10月には中国でもユニクロの販売員を対象に賃上げしました。国際競争力向上に向けた待遇改善をどう進めますか。

「24年春以降も世界で賃上げを継続する。人材抜てきと高額報酬についてはバンバンやっていきたい。経営トップからパート・アルバイトに至るまで人材の質を高めることが一番の経営戦略。そのためには賃上げが不可欠だ」
「欧米の最低賃金は時給で約20ドル(約3000円)だが、それでも人が足りない。中間管理職や上級管理職は日本の3〜5倍の給料で、経営トップなら日本の10倍はもらっている。現状の日本の給料で、どうしていい人材が採用できるのか。2〜3%ほどの賃上げでは状況は変わらない。本当に優秀なら10億円の年俸を出してもいい。そうしないと国際競争に勝てない」

ロシアの禁書

2024年1月7日   岡本全勝

12月27日の日経新聞夕刊コラム、ロシア文学者・奈倉有里さんの「未来、ストルガツキー」に次のような話が載っています。
ソ連時代は書物の検閲が厳しく、体制を批判する書は読むことができませんでした。ペレストロイカが進み、読めるようになったのですが、ウクライナ侵攻後、2022年から再び検閲が厳しくなったとのことです。

図書館から撤去された図書を見て、驚きます。
ジョージ・オーウェル「1984」、フランツ・カフカ「城」、オルダス・ハクスリー「すばらしい新世界」、レイ・ブラッドベリ「華氏451度」などはまだ理解できますが。
サン=テグジュペリ「星の王子さま」、ドストエフスキー「罪と罰」、トルストイ「戦争と平和」、シェイクスピア「オセロー」となると、誰が何の基準で選んでいるのかと疑問になります。
ドストエフスキーとトルストイは、ロシアの誇りではないのですかね。

現代の技術は、米国が革新し、中国が模倣し、欧州が規制する

2024年1月7日   岡本全勝

12月20日の日経新聞ファイナンシャルタイムズからの転載、ジョン・ソーンヒル氏の「欧州のAI法、革新を阻害」から。

・・・現代の技術は大抵、米国が革新し、中国が模倣し、欧州が規制するという構図になっている。人工知能(AI)では間違いなく、そうなりつつあるようにみえる。

何カ月もの激しいロビー活動と40時間近い夜通しの交渉の末に、欧州連合(EU)の疲れ果てた政策立案者は8日夜、AIを包括的に規制する「AI法」について大筋合意に達した。そして、大きな変革をもたらすAI技術を規定する世界で最も包括的な法案だと賞賛した・・・だが、大西洋の向こう側からは、AI法をあざ笑う声が聞こえてきた・・・

情報通信技術が急速に進化し、便利になり経済を活性化する反面で、多くの災いも生んでいます。どのように規制するか。難しい問題です。しかし、遅れると被害が拡大します。
他方で、この記事が指摘するように、技術開発と規制は、各国の競争とも関係します。規制しすぎると、緩やかな国に負けてしまう恐れもあるのです。
この記事の冒頭には、日本は出てきませんが、どのように進めるのでしょうか。