日本のGDPが世界4位に

内閣府が、2023年の国内総生産の数値を公表しました。各紙が「ドイツに抜かれた」と伝えています。
・・・2023年の国内総生産(GDP)は、物価の影響をふくめた名目GDPが前年より5・7%増え、591・4兆円だった。米ドルに換算すると1・1%減の4・2兆ドルで、ドイツ(4・4兆ドル)に抜かれて世界4位に転落した。1968年に西ドイツ(当時)を追い越して以来、55年ぶりに日独が逆転した・・・「日本GDP、4位に転落 円安響きドイツ下回る」2月16日の朝日新聞。

報道では、第4位に転落したことを強調していますが、問題はそこではありません。ドイツの人口は8000万人余りで、1億2000万人の日本の3分の2です。すなわち、一人あたり国内総生産では、日本はドイツの3分の2なのです。それは、個人の豊かさと言い換えることができます。

2月17日の日経新聞5ページに、「物価を考える 名目GDP600兆円」という記事が載っていて、各国の名目GDPの伸びがグラフで出ていました。
このグラフでは、1993年を起点に100として、日本やアメリカ、ヨーロッパ先進国の名目GDP(自国通貨建て)の伸びを示しています。アメリカ、イギリスは3倍以上、フランス、イタリア、ドイツが2倍以上、日本は横ばいです。毎年2~3%程度の伸びがあると、30年間でこれだけの差が出るのです。日本だけが独自の道を歩んでいます。

30年間とは結構長い時間です。どこに問題があったのでしょうか。昭和後期に奇跡のような高度成長を遂げ、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われて自慢していたのに。
数字では見えない、悪いことがあります。企業はリストラという名の下に社員を解雇し、非正規や派遣社員に置き換えました。役所も行政改革の旗印の下、職員を非正規職員に置き換えました。そして、就職氷河期、年越し派遣村、子どもの貧困、結婚できない若者という言葉に象徴されるような、不安な社会を作ったのです。子どもの数が減るのも、これが大きな要因でしょう。
数字の上では横ばいですが、正規と非正規の間の格差、社会の分断を生んでいるのです。社会は悪くなっています。