カテゴリーアーカイブ:社会の見方

再利用市場2

2026年7月10日   岡本全勝

再利用市場」の続きです。日経新聞6月9日は、川端基夫・関西学院大学名誉教授の「中古品に海外で新たな価値も」でした。
・・・日本のリユース市場(販売額)は、図1のように24年時点で3兆円を超える巨大市場に成長し、40年には5兆円に達すると予測される。筆者も今後の拡大余地は大きいとみている。その理由を4つ挙げたい。
1つ目は、中古品購入への抵抗感の低下である。20〜30歳代の若い世代は、7割以上が過去1年間に中古品を購入した経験をもつ(メルカリ総合研究所の24年調査)。世代交代で一層の市場拡大が予想される。
2つ目は、不用品売却が容易になったことである。各家庭に眠る不用品は、25年時点で90兆円を超えるという推計もある。今後はそれらがリユース市場で流通する可能性が高い。
3つ目は、リユース店の海外進出の増加である。国の内外が連動したグローバルな市場拡大が見込める。
4つ目は、訪日客による中古ブランド品への需要増加である。日本の真贋判定レベルの高さや商品のきれいさ、円安などが主な要因だ。訪日客の増加が続けば、さらなる需要拡大が見込める。
このうち1つ目と2つ目の背景には、フリマアプリの普及があるとみてよい。図2のように、リユース市場はネット上での販売が6割強、店頭販売が4割弱である。とくにフリマアプリを介した個人間売買が全体の4割を占め最大になっている。ネット取引は広域から買い手を探し出せるし、売り手の利益も多くなる。
とはいえ店舗の数も増えてきている。リユースの店舗には2種類がある。一つは近年店舗を急増させている買い取り専門店で、消費者から買い取った商品を一括して国内のオークションで同業者などに売却する。ブランド品や宝飾・貴金属の売買が主であるが、今や世界中から入札がある。
もう一つは店頭で消費者から買い取り、店頭で消費者に再販売する店である。衣料品・書籍・玩具・家電・家具・雑貨などあらゆるものが店頭で売買されている。この業態を注意深く見ると、リユース店の経営上の特徴がよく理解できる・・・

・・・先述のように、日本のリユース企業は海外市場の開拓にも力を入れる。海外店舗数は、筆者の調査ではすでに500店に迫るが、まだ成長の余地が大きいと考えられる。日本のリユース企業には、海外市場での競争優位性があるからだ。
海外店舗には(1)ブランド品などの買い取り専門店(2)幅広い商品の買い取りと再販売を行う店(3)日本の中古品を現地で販売する店――の3種がある。
(1)と(2)は現金での買い取りを行っており、それ自体が海外での競争優位性になっている。海外ではアンティーク品などを別として、中古品を現金で買い取る店が少ないからだ。

特に欧米では伝統的に寄付文化が根付いてきた。中古品は店に寄付され、販売収益は教会や慈善団体に寄付される。米国では中古品を寄付すると、寄付した中古品の金額に相当する税の控除証明が店側から発行される。消費者は、換金狙いではなく税の控除狙いで中古品を処分しているのだ。したがって、日本式の現金買い取り自体が海外では人気を呼んでいる。
また、販売面でも地元リユース店にはない優位性がある。日系リユース店は店舗が明るく清潔で、クリーニングや修理が施されたきれいな中古品が整然と並ぶ。ブランド品は、真贋判定が確かで偽物が無いことも優位性となっている。

一般に中古品は、新品よりも安いという理由だけではなく、買い手が新品と異なる新たな使用価値(効用)を見いだすことで売れる側面がある。壊れたパソコンでも修理の部品取り用として使えるし、古く汚い洗濯機も工事現場で泥汚れを洗うために売れている。
海外では、国内とはさらに異なる使用価値が見いだされることも多い。国内では、中古のひな人形や五月人形はまず売れない。縁起物には中古品はそぐわないからだ。日本人形やこけし、古びた子供用玩具も新たな価値を見いだしにくい。だが、海外ではそれらも結構売れている。ひな人形や五月人形・日本人形などには急増する現地の日本料理店のインテリアとして、日本の子供用玩具には子供がけがをしない安全な玩具としての使用価値が見いだされているからだ。
つまり、国境を越えると商品に対する意味づけや使用価値が変わり、新たな市場が生まれるのである・・・

再利用市場

2026年7月9日   岡本全勝

日経新聞経済教室は、6月8日、9日と「拡大するリユース市場」を連載していました。8日は山本晶・慶応義塾大学教授の「販価値の可視化が変える消費」でした。
・・・リユース(再利用)市場とは、中古品や未使用品が再び売買される市場を指す。中古品市場の専門紙であるリユース経済新聞によると国内のリユース市場規模は2024年で約3.3兆円と推計され、15年で約3倍に拡大した。物価高やインバウンド(訪日外国人)需要の増加など複数の要因が絡み合い、市場は活況を呈している。リユース市場では、消費者が売り手としても買い手としても参加する。

市場拡大の理由のひとつは、中古品の売り手としての消費者行動の変化である。フリマアプリの普及や中古品買い取り店の店舗拡大により、消費者の家庭にある不用品を売却するハードルが劇的に下がった。
フリマアプリは、スマートフォン一つで家庭内の余剰資源の売却を可能にする。匿名配送や人工知能(AI)による出品サポートなどの機能拡張で、利便性はさらに高まっている。
また、中古品買い取り・販売店の店舗数が増大し、消費者の生活圏内にリユースとの物理的な接点が増加していることも、市場の成長をけん引している。こうした実店舗では梱包や発送の手間をかけず、外出のついでに不用品を持ち込んで簡単に現金化できる手軽さがあり、幅広い消費者の売却行動を後押ししている。
消費者が家庭内の余剰資源を売却するようになった背景には、それまで不明瞭だった衣類やバッグなどの中古価格が、自動車や不動産のように可視化されたことも大きい。

次に、リユース品の買い手としての消費者を考える。中古品は「生活防衛のための節約」と「お得に楽しむための探索」という2つの軸で消費者から選ばれている。前述のようなリユース品との接点拡大に加え、長引く物価高による家計の圧迫も相まって、新品よりも価格が安い中古品は生活防衛の手段として広く受け入れられている。
かつては中古品に対して汚れや不具合などの悪いイメージがあったかもしれないが、日本の中古品は品質が高い。実際、日本の中古品は「Used in Japan(ユーズド・イン・ジャパン)」と呼ばれ、海外の消費者から高い評価を受けている。中古でありながら傷などが少なく、新品に近い品質を保っているためである・・・

ハンガリー公共テレビ局「うそをおわび」

2026年7月8日   岡本全勝

NHKウェッブニュースに「ハンガリー公共テレビ局「うそをおわび」放送が黒画面に」が載っていました(7月8日朝)。潔いと言うべきでしょうか。

・・・ハンガリーの公共テレビ局は7日、黒い画面と文章を放送し、長年にわたりうそをついてきたとして謝罪したうえでニュース放送を一時的に休止すると明らかにしました。政権交代に伴い、メディアの刷新を掲げるマジャル首相の改革の一環とみられています。

ハンガリーの公共テレビ局は7日、放送が黒い画面に切り替わり、文章で「公共メディアはうそをついてはならない。長年にわたり、そのようなことを行ってきたことをおわびする」と告知しました。そのうえで「独立性と信頼性を確保するための改革の途上にある」として、ニュース放送を一時的に休止すると明らかにしました。

ことし5月に就任したマジャル首相は前のオルバン政権の意向に沿った報道をしていたメディアのニュース放送を停止する考えを示していたことから、今回の対応は改革の一環とみられています。
オルバン前首相のもとでは、政権に批判的な報道を行うメディアに対する圧力が指摘されてきました。
マジャル首相はSNSに「歴史的な日だ。公共メディアでのプロパガンダの放送はきょう終わった」と投稿し、公共ラジオ局の放送も停止したとしています・・・

日本の保守、体系的思想より国家の威信

2026年7月7日   岡本全勝

6月16日の朝日新聞オピニオン欄「そもそも保守とは」、小熊英二・慶応大学教授の発言から。原文をお読みいただくこととして。
政治的対立を「保守対革新」として分析することはよく行われます。それが当てはまる場合もあるのですが、国や時代によってその内容は異なります。日本の戦後でも、変化してきました。安易に55年体制を基礎に考えることは、もはや避けなければなりません。アメリカでは、保守党はありません。イギリスでは、長い間、保守党の対立相手は労働党でした。国際政治では、保守対革新という構図は用いられません。政治的対立を思想の対立として捉えることもできますが、多くの場合はその下部に利害の対立があります。

―高市早苗政権は「保守強硬派」とも言われます。日本で「保守」とはどう定義できるのでしょう。
「保守とは相対的なもので、地域や時代によって変わります。共通の定義はできません。例えば、アメリカやヨーロッパ、日本といった地域でそれぞれ、保守の中身や結びつく争点は異なっています」
「国際プロジェクトの『世界価値観調査』からの分析では、ヨーロッパや北米では経済的争点が左右と結びつく傾向が強かったのですが、ほかの地域は必ずしもそうでなかった。東アジアでは家族に関する争点、国家の威信に関する争点と結びつく傾向があった。そして国家の威信では、冷戦との結びつきが大きな軸だったと思います」

―どういうことでしょうか。
「韓国や台湾の政党は、『アメリカとどういう関係をもつか』『自国は(北朝鮮や中国と対比して)どういう国なのか』で二大陣営に分かれます。日本も『アメリカとどういう関係をもつか』『日本は平和国家なのか』が争点で、それが日米安保や自衛隊、憲法9条に結びついていた」
「また1950年代の保守派の改憲論は戦前志向でしたから、家族や男女平等に関わる憲法24条も関係していた。『軍隊がないと一人前の国家ではない』という発言が男性の政治家からなされることも多かった。当時の護憲論は、こうした『国家の威信』や『家族の秩序』をめぐる争いで、それが結果的に『外交・安全保障』に分類されていた」
「第2次大戦後に形成されたこの争点が60年代以降も政党間の分岐を作っていて、経済は右・左を議論する基準になっていません。どの政党も減税と財政出動をセットで唱える傾向は明治期からあり、そこは今でも変わっていない」
「そもそも自民党や社会党という戦後の主要政党は、特定の明確なイデオロギーはなかった。はっきりしたイデオロギーや組織基盤を持っていたのは共産党と公明党だけでしょう」

―「革新」「リベラル」はどうみたらいいのでしょうか。
「日本の政党政治における『リベラル』とは『非共産党・非自民党』ということであって、体系的思想はなかったと思います。ただし10~20年ほど前までは、そこに『日本は平和国家であるべきだ』という要素もあり、日本の民衆の支持を得ていた。しかし世代交代が進み、この『平和主義』への支持は減少した」
「ただし日本政治における『保守』は、それ以上に体系的思想はなかった」

出生数が減っても出生率上昇?

2026年7月6日   岡本全勝

6月16日の日経新聞に「13県で出生率上昇の喜べぬ現実 「女性流出」の地方、縮む分母」が載っていました。
・・・厚生労働省が発表した2025年の人口動態統計で13県の合計特殊出生率が前年から上昇した。10県以上の上昇は7年ぶりだ。地方の少子化は改善したのか。専門家に話を聞くと、現実には計算上の分母となる女性の流出が影響している可能性がある。

合計特殊出生率は1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す。全国的には10年連続で低下し、過去最低の1.14となった。一方、岩手県や宮崎県など13県で出生率が上昇した。出生率が上がる都道府県が生じること自体が3年ぶりだ。
ただこの3県(香川、富山、石川)を除く10県の出生数は25年も減少したままだ。

ニッセイ基礎研究所の人口動態シニアリサーチャー、天野馨南子氏は地方の現状として「20代の未婚女性が就職期に地元からいなくなり、見せかけの出生率が上がっている」と分析する。
合計特殊出生率は15〜49歳の各年齢ごとに分母をすべての女性の数、分子をその年に生まれた子どもの数として出生率を計算し、それを合計する。分母にあたる女性の数が「転出」などで減ると、出生数が増えていなくても出生率が上がる構図にある。
天野氏が人口推計と住民基本台帳人口移動報告をもとに作成した20代女性の流出率ランキングによると、出生率が上昇した13県のうち、岩手と秋田は全国ワースト5位に入る。徳島、長崎、高知、宮崎各県は20位以内で、それ以外の7県も香川などを含めすべて流出の状況だ。
出生率が上昇したとしても、地域の女性が減れば将来的な出生数の減少要因となる。岩手、秋田はこの10年間で出生数が45%以上減少した。全国平均(33.3%減)を上回るペースだ。この傾向に拍車をかけかねない。

婚姻数も出生数に影響する。全国の婚姻数は2年連続で増加した。13県で増えたのは石川、富山、静岡、滋賀の4県のみだった。
天野氏は女性の流出に連動する出生率ではなく「出生数の実数が減少している現実を直視すべきだ」と話す。地方では「結婚支援と女性の多様な雇用の創出」に力を入れるべきだと主張する・・・